《仏舎利塔と青い手毬花》第三話 タクミの能力?
「ちょっと待て!ユウキ!」
タクミの靜止も虛しく、肝試しの順番が最後に決定してしまった。
それには理由もあった。班のリーダーはユウキなので、ユウキが言ったのなら決定事項になる。
先生方もわざと意地悪をしたわけではない。
これが、最初をんだりしているようなら、タクミの靜止を聞いて、”班で話し合ってからもう一度申告しなさい”と言ってくれだろう。しかし、ユウキが言ったのが”最後”だったので、先生はこれ幸いと諾してしまったのだ。
先生方の考えもわかる。理由も簡単だ。肝試しの順番では、最後を選ぶ班はほとんど居ない。皆無と言ってもいい。
當然だ。最後は、怖い話が終わってから、自分たちの順番まで待機しなければならない。
そして、待機している最中は悲鳴が聞こえたりして恐怖心を掻き立てられる。
順番は、毎年最初の方が人気なのだ。最初から順番に埋まっていくと言ってもいい。
しかし、ユウキと同じように最後を選んだ者が他に居なかった・・・。ことはない、ユウキの父親である。森下桜も最後を選んだ1人だ。
「ユウキ!」
「ユウキ!お前、勝手に!それに、なんで最後を選んだ?」
タクミが代表してユウキを問いただす。
最初に聲を上げたのは、晴海だが晴海ではユウキに勝てない事はわかっている。
「え?だって、最後の方がいいでしょ?」
「だから!なんで、だよ」
「だって、最後の方が、皆が歩いた後だし、おばけの位置もわかるよ?それに、仏舎利塔の手紙も自分たちの分だけだから探すのが簡単だよ?」
「え?」「は?」
「なんで皆最初に行きたがるかわからないよね。だって、先生たちも・・・あっおばけもまだ疲れていないから頑張っちゃうし、足跡もないから罠とか見分けられないし、大変なのにね。それに、手紙を探している間は1人だよ?その方が怖いのにね」
ユウキが言った事は間違っていない。一點を除いては・・・。
手紙を探すのは間違っていないが、最初から全員分の手紙がっているわけではない。手紙が置いてある箱があってその中に毎回先生がれているのだ。そのために、箱を見つける手間だけが”探す”という行為に該當している。
「ユウキ・・・。お前、サクラさんか、和さんに聞いたな?」
「え?あっ・・。なんのこと?」
タクミはすぐに理解した。
ユウキが考えつく事じゃない。多分、ユウキの父親である森下桜が教えたのだろう。もしかしたら、和かもしれないとも考えていた。
「ユウキ?」
「ママじゃないよ!」
周りからため息が聞こえてくる。
ユウキが自分から暴したからだ。別に悪い事では無いのだが、皆の思いは同じで”だったら最初に相談しろ”だ。
タクミたちは、時間が來るまで部屋で待機する事になっている。次は夕飯作りだが、もうし時間が必要なのだ。
肝試しの時に、手紙をけ渡す順番は事前に決めているので、もうする事が無いからなのだが、タクミたちはユウキに説教をするという新しくできたミッションをこなしている。夕飯作りが開始されるまでの時間を有意義に使う事ができた。
涙目になりながら、タクミに助けを求めるユウキ。
「タクミ・・・」
「わかった。わかった。唯も鳴海も晴海も、もういいだろう?」
ユウキが、タクミのシャツの裾を握って離さない狀況を見てやりすぎたと思った3人はユウキに謝罪して、ユウキも3人に謝罪して順番に関しての話は終わった。
外が騒がしい。
いくつかの班が寶箱を見つけてきたようだ。一番だと思っていたら、すでに一番が居た事が解って騒いでいるのだ。その聲を聞いて、なんとなく解ってしまったタクミたちは部屋から出ない事を決めた。
”ずる”した、”先生が教えた”と騒いでいるが、順番を聞いて、最初が空いている事が解って納得したようだ。
夕飯は、班ごとで作って食べる事になっている。
それもあって、皆なるべく早く寶箱を見つけたかったのだ。
「うちの班には、タクミと晴海が居るから大丈夫!」
「ユウキ・・・。それ言っていて恥ずかしくないか?」
「え?なんで、できる奴に任せるのが一番って、パパも克己パパも言っていたよ?」
「あのダメ大人は・・・。しょうがない。晴海。手伝ってもらうぞ」
「うん。それはいいけど何を作るの?」
「そうだな、カレーは昨日食べたからな。材料を見てからだな」
これが、皆が先を急いだ理由の一つだ。
確かに、肝試しの順番は重要だけど、米と決められた野菜や以外は、早いもの勝ちになっている。
先生が調整はするが、それほど多くの食材が有るわけではないし、小學生が使えるようなは多くは殘されない。
「先生。食材はこれだけですか?」
「あっそうだよ。タクミくんたちの班は何を作るの?」
こうして、先生方は來た生徒と話をしながら、食材を渡していくのだ。
分配される食材を晴海がけ取ってきて中をタクミが確認した。
(うーん。2日連続でカレーを作らせるつもりなのだろう。間違いは無いし、失敗もないだろう)
タクミは渡された野菜やから判斷した。
先生たちの狙いは間違いなくカレーだったのだが、味の変化はできるように工夫はしてある。
市販のカレーの素も用意されている。
「先生。ですが、豚の細切れはありませんか?」
「ありますよ」
「それをください。そのかわり、この牛はいりません」
「え?」
「ですので、豚とあとできれば鶏と卵をください」
「あっわかったわ」
「そうですね。あと、鰹節はありますか?」
「えぇぇ・・・ちょっとまってね(何を作るつもりなの?先輩が言っていたとおりに、タクミくんは要注意人?)」
食材の所にいた先生は、別の先生にヘルプを求める為に一度その場を離れる。
本來なら、のいい子は材料を見て、カレーに行き著く。そこで、カレールーを選ぶ事になる。ちょっといい高級品から一般的なまで用意されている。
普通の生徒は、材料を渡されてもピンとこなくて、先生からヒントをもらってカレーに導される。
タクミは、その斜め上の事をいいだした。
用意した問答集には無い事を言われたので、先生が慌ててヘルプを呼びに行ったのだ。
「タクミ。何を作るつもりだ」
「うーん。2日連続でカレーはイヤだろう?」
「あぁ」
「多分、先生方は違うを作る為の食材や調味料を持ってきているはずだ。他にも、酒のツマミとか有ると思うぞ?それを奪う!」
「お前な・・・。でも、楽しそうだな」
「あぁ見ていろよ」
先生が戻ってきた。
タクミたちの擔任を連れて戻ってきた。
「あっ先生!」
「先生じゃ無いわよ。タクミくん。無茶は言わないでよ」
「無茶ですか?」
「無茶です」
「ふぅー。わかりました。それでは、要求を一度に言います」
「え?まだあるの?」
「えぇ先生方が隠しているを全部と思いましたが止めておきます」
「・・・」
「ケチャップと酢と砂糖と塩と胡椒。あと、牛をください」
「・・・。はぁ・・・。どのくらい?」
タクミは分量を先生に頼んだ。
先生が用意してくれたをけ取って戻ろうとした。
「何を作るの?」
「です。さすがに2日連続でカレーでは飽きます」
タクミと晴海はもらった食材を持って、ユウキたちが待っている場所に向った。
調理場所も早い者勝ちになっているので、ユウキがタクミから頼まれた場所をしっかりとキープしていた。狹いけど冷蔵庫が有る場所を確保している。
タクミは、晴海に料理の指示を出しながら単純な作業を子たちに頼むことにした。
 
「タクミ。まだ?」
「まだ。もうし攪拌していてくれ」
 
「タクミくん。こんなじでいい?」
「十分だ」
 
「タクミくん。味噌の味付けはこんなじ?」
「ユウキに見てもらってくれ」
「わかった」
 
「タクミ。米が炊けたぞ」
「ありがとう。ボウルにれて冷ましておいてくれ」
「わかった」
「あっ。あら熱が取れたら、冷蔵庫で冷やしておいてくれ」
「了解」
 
タクミたちが作っていたのは簡単な料理だが、他の者たちから見たら未知のに見えたかもしれない。
途中までは、カレーを作るのと変わらないが、なぜか最初にと野菜を炒める時に使ったのはシーチキンの油だったりする。
 
味噌で味付けされた豚が一品目。
処理された鶏を甘辛く仕立てたが二品目。
ソテーに使った鶏の油部分や細かいをと冷えたご飯を手際よく炒めてケチャップで味付けしたケチャップライスを作った。それを薄焼き卵で包んだを作ったのが3品目。
卵と牛で作ったプリンが四品目。カラメルまでは作れなかったが十分デザートになりえる。
シーチキンと鰹節で簡単なふりかけもどきも作ってある。
他に、りんごとみかんを潰したを牛に加えて、凍らせたデザートも作った。
タクミの異常さだけが目立った食事となってしまった。
ユウキたちは周りからの羨と嫉妬の視線をじながら一風変わった夕飯を楽しんだ。
デザートを食べる頃には、周りからブーイングまで上がっていた。
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