《スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜》十一章 ─ 化 ─
指定された場所はそう遠くなかった。
イカルガにはこういう場所もあるのか、と心していると、この場を設けた本人に聲をかけられた。
「ちっと遅かったか?」
「まぁ、はい。準備に々時間を」
「……そういえば得が増えたな」
「はい。即席なんで業じゃないですけど」
「…ふむ」
どうやら得が被ったらしい。カグラも大剣が主武裝みたいだ。まぁ、俺は細剣レイピアも使う臨機応変型の二刀流だが。それよりも、短時間でここまでのを作った事に多驚きを隠せていないようだ。
「ならいい。早速やろうか、リツカちゃん」
「えぇ。手加減する必要は無いですから」
「俺はを傷つける趣味はねぇよ」
の"フリ"も大分慣れてきた。これもフィオが居るおかげなのかは分からない。兎に角一試合する事にした。目的がなんなのかはその時分かるだろう。大剣を手にし、臨戦態勢をとる。カグラも同じように臨戦態勢にった。
「…じゃあ、行きます」
「よしこい!」
一瞬のに刃がわる。何度か鍔迫り合いをし、距離をとったと見せかせて突進。流石に読まれたのか、カウンターの蹴りが飛んできた。すぐさま大剣の腹でけ止め、逆手に持った細剣で切りつける。それを防がれ、今度は拳。それを右腕で防ぐ。痺れたが折れてはいない。左でアッパーを繰り出し、距離を取らせる。その隙に思考をフィオに譲り、後は好きにやらせる事にした。フィオの戦いぶりは俺がよく知っている。無駄や隙があったらサポートに回り、隙のない展開を見せた。
「(だと思って見くびってたな…紛れもなく場慣れしている奴のきだ、こりゃ)」
リツカのきを完全に把握した訳では無いが、ものの數分戦っただけで手馴れてると分かった。まるで先読みしているかの如く攻撃は防がれ、死角から追撃が來る。とても隻眼とは思えない。
「へっ…燃えてきた!!」
柄にも無いと我ながら思う。普通はこんな事無い為、が昂るのは久しく忘れていた。だが、リツカと戦ってからはどうだ。忘れていた熱が再発するかのようにが熱を持っている。俺もまだまだ捨てたもんじゃ無いのが改めて分かった。それだけでも収穫だろう。だが…
「(これだけ暴れているのにも関わらず"奴"は出てこない、か。次はどーすっか…)」
実を言えば今回リツカと戦っているのは奴を引きずり出す為だ。奴は戦いの匂い(あるかどうか分からないが奴は嗅ぎとる事が出來るらしい)を知したらすぐに來る。例え小規模でもだ。戦いある所奴ありと考えていいだろう。
「よーしリツカちゃん。『アレ』、使えるか?」
「アレ、と言えば…アレですね?」
「そそ。理解が早くて助かるわ。なら、ここからは"本気"って事で…行くぞっ!!」
「……っ!!」
急加速した俺を見てリツカが怯んだ隙をつき、怒濤のラッシュを加える。このまま押し切れるかと思った矢先、リツカの様子が一変した。綺麗な金髪は白髪に変わり、さっきまで隻眼だったが今は両目が開いている。は、鮮を思い出させる深紅。どうやらこれがリツカの"本気"らしい。
「……出來れば使いたくないんだよ、コレ。まだ制出來た試しがねぇ」
「……なんか口調変わったな?リツカちゃん」
「気の所為だ。元々男口調だし、何も変わらないだろ?」
「いや、さっきまで違かったが…」
気にしてもキリがない。とりあえず本気のリツカと戦えば奴が來ると信じる他ない。そのために回りくどい頼み事をしたんだから、果ゼロだと笑えない。
「んじゃ、やるか」
そう言ったリツカの表は、笑っていた。
「(ちょっと、私に男口調させないでください)」
「(しゃあないだろ、アレ蒼を使うとどうしても俺が出ちゃうんだよ)」
「(まぁ、このは元々貴方のですし。そこは大目に見ましょうか)」
「(上から目線腹立つわ…)」
脳會話を済ませ、 自的に俺に切り替わった所で再開。『ソウルイーター』をガンガン使い、逃げ場を無くしていく。れたら最後、力を奪う。それは幾度もなく確認してきたから間違いない。あまり頼りたくはないが、本気で來いと言ったのはカグラだ。
「第五式拘束機関開放…」
死神の蒼の魔道書ブレイブルーの劣化版なのかどうかは分からない。だが、このコードは自然と口にしていた。の底から蒼の力が溢れて來る。解き放つ時、一部を二つの武に集約した。
「「藍の魔道書ブレイブルー起!!」」
ぶ時、フィオも一緒だった。二人を一つにし、完全な狀態にする。それが俺の蒼らしい。実際、は軽くて素早くける。髪も澄んだ空に変わった。重い枷を解き放った覚が気持ちいい。
「おぉう…なんか凄いな」
「さぁ…行くぞ」
呟き、構えた時だ。壁が破壊され、誰かが転がり込む。白髪に赤いコート、なんか貓っぽい。白髪の方はラグナと分かったが、貓っぽいは何者なんだろう。と、そんな事を考えている暇はなく、二人を吹っ飛ばした張本人がやってきた。
「…やっとおいでなすったか」
カグラがボソリと呟く。そいつを見るなり、目を疑った。第七機関が厳重に封印していた人。イカルガ大戦に投されたが敵味方関係なく襲い、死者大多數を出した、殺戮者ジェノサイダー。アズラエル本人だった。
「……ノエル!!」
「…ふぇ?」
素っ頓狂な聲を出すノエル。アズラエルの拳がノエルを襲う。當たったらひとたまりもない。牽制も兼ねて即席の大剣を投げる。一瞬だが俺に注目した隙をつき、ノエルを庇う。その瞬間に俺が吹っ飛ばされる。どうやら標的にしたらしく、アズラエルが來る。
「リツカ!?」
「早く逃げろ…不味い、此奴は!!」
「ほう…カグツチはおろか、世界を救った英雄様じゃないか。これはいい獲に出會った…!」
「ちっ、既にバレてるのかよ?!」
その後も奴の注意を引きつつノエルから遠ざける。此奴は戦闘狂、戦いを自分の狩場と思っている奴だ。そんな奴にノエルを殺させる訳にはいかないし、やらせはしない。だから、俺がやる。
「(又。又守られた…)」
私だって戦えるのに。確かにあの人は危険だけど、それよりも悠人が過保護過ぎる。まるで私の手を汚さないかのように戦いから遠ざけてる。その代わり、私が背負うべきだった傷を悠人が背負っている。このまま何も出來ないのか。そう思った時、がチクリと痛んだ。なんだろうと思ったけど気にしないでおく。どうせ気の所為だろうと踏んでいたからだ。
「(私にだって、あるのに…"蒼"が…)」
そう思った時、『魔銃・ベルヴェルグ』が呼応し始めた。何事かと思った矢先、一種の固有結界を私を中心に張ってしまう。勿論出れなくなった訳だが、ベルヴェルグにはなにかあるんだろうと考え、そのまま待機する。悠人が戦いを終えたら…
「フハハハ!!楽しいではないか!」
「俺はちっとも楽しくねぇよ!!」
カグラやラグナ達そっちのけで俺と殺り合うアズラエル。此奴の怖い所は式を使わなくても強い、という所だ。武は無く、己ののみ。式を使わない為、障壁は役に立たない。張ってもすぐ破壊される。ダイヤよりい式障壁を素手で破壊する辺り、化と実させられる。
「の野郎っ!!」
ラグナが加勢にった。が、それでも依然として劣勢のままだ。一対二でも駄目なのか。
「ならコレだ!!」
『ソウルイーター』を纏わせた大剣の一撃。それは巨大な獣になり、アズラエルを喰らう。やったと思った矢先、すぐ打ち破られた。コレでも駄目か。
どうしようか悩んだ時、一陣の風が吹いた。
起こした発端は…ノエル。何が起きてるのか分からずにいたらそのスピードで撹し始めた。
「何が起きてる…?」
その答えを見つけるのは、今後になりそうだ。
はい。十一章をお送りしました。
ではまた次も宜しくお願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
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