《フェンリル》き出す鋭部隊
時雨「どうしたの!!その目!!」
志禮は包帯をぐるぐる巻きにされていた。
脇腹と目をがらないほど隙間もなく巻かれていた。
志禮「フラッシュで目をやられた。」
時雨「大丈夫なの?」
志禮「そのうち治るから気にするな。」
時雨「でも目が見えないんじゃ…」
志禮「すぐに治るっつってるだろ!!治るったら治るんだよ!!」
時雨「目が見えなかったらトイレとか行けないでしょ!!」
志禮「んなもん尿瓶だけで十分だ!!」
時雨「汚いこと言わないでよ!!」
2人が喚いていると部屋に火虎がノックをしてからってきた。
火虎「志禮、賑やかなところしいいか?」
志禮「隊長!」
志禮はすぐさま立ち上がり、聲のする方向に敬禮した。
火虎「敬禮はいい、それよりも済まなかったな。まさかあんなに早く奴が行するとは。」
志禮「今回は自分のミスで裏切り者を処斷し損ねました。申し訳ありません!!」
これまで以上に改まった様子で志禮は火虎に頭を下げた。
火虎「いや、謝るべきは俺だ。済まなかった。それと、しだけ話いいか?」
志禮「はい、丁度この田舎者との會話に飽きたところです。」
時雨「何言ってんのよ!!あんた!!」
志禮の一言に時雨は顔を赤くして怒った。
火虎「許してやってくれないかお嬢ちゃん、軽い口調はこいつが仲間と認めた証拠なんだよ。」
火虎の一言に時雨は頬を膨らませて黙った。
火虎「悪いけどし人を借りてくぜ?」
志禮「な、何言ってるんです。いつ死ぬかわからない人間に…」
時雨「人じゃないのでどうぞどうぞ。」
時雨は口調の割に満更でもないような表だったが、志禮はその表を見ることは無かった。
志禮と火虎は部屋を出て基地の中にある自販機の前へとやってきた。
火虎「さて、し聞きたいんだが、時津風は何か言っていたか?」
志禮「いえ、これといって特別なことは無かったです。」
火虎「使われた武は?」
志禮「全て本人の備品です。九十九が武庫の時津風専用の棚を調べましたが、やつの裝備が全て持ち出されていたとの事でした。」
これを聞いて火虎はため息をついた。
火虎「はぁ、今回は完全に俺のミスだな。隊長失格だぜ俺。」
火虎は頭を抱え込んでぶつくさと言い始めた。
火虎「元々俺は戦車隊の一兵卒じゃねえか、指揮能力が高いわけでもなく、責任も強くない、そんな俺がなんの問題もなく戦鎮圧まで攻撃部隊の隊長をやりきれるはずがなかったんだよ。全くあのカラス野郎の姿は見えず、敵かたきを殺せずに今もブツブツ言いながら…」
志禮「昨日は隊長は非番でした、責任は問われません。」
火虎「最悪だな、酒飲みに行ってる間に部下が逃げ、挙句俺に忠実に従ってくれる部下に傷をおわせたんだ。辭任するか。でも辭任すると俺の目標が……」
志禮(こりゃ當分立ち直らないな、しれっと帰ろ。)
そっと立ち上がり、志禮はゆっくりと壁を伝って事実まで帰っていった。
ガチャッ
やっと部屋についた志禮は部屋の中をふらつき、手探りでベッドの位置を探していた。
目が見えず、むやみにけないのでいっその事寢ていようと考えたのだ。
手を前に出して探していると何かを摑んだ。
ワシャッ
志禮「??」
時雨「だーれだ。」
志禮「はぁ、なんでここに居るんだ?」
志禮が摑んだのは時雨の髪のだった。
さっきまで病室にいた時雨はいつの間にか志禮の部屋に來ていた。
時雨「私の傷はもう癒えたから志禮の部屋にでも泊めてもらいなさいって九十九さんが…」
志禮(あのアラサーめが。)
志禮「そういうことなら仕方が無いな、お前はベッドで寢ろ。」
そう言うと志禮は壁をベタベタとりながらタンスを開け、布団を出してそれに寢転がった。
時雨「こういう時は『お前が下で寢ろ』って言うものじゃないの?」
志禮「下で寢たいなら下で寢ろよ。」
そう言うと志禮は布団を被っていびきをかき始めた。
時津風「はぁはぁ、あれから何時間走り続けたか。」
走した時津風は何時間も無休で走り続け、北海道から出していた。
そしてよく分からない森の中にいた。
時津風(スマホは充電切れでGPSが使えない。救難信號を出せば確実に居場所がバレて処斷される。どうすれば。)
悩む時津風の橫を風がなびいてゆく。
時津風(それにしても不気味な森だ、まるで何かいるようだ。)
???「私がいるではないか。」
時津風「!?」
軍の癖で聲のする方向に咄嗟に銃を向けた。
???「焦ることはない、私は君を助けに來た。」
時津風「何者だ。」
ギャザー「世界を導く者の1人、トゥエル・ギャザーだ。君は今から我々の仲間だ。」
時津風は何を言っているかさっぱり分からなかった。
ギャザー「我々は己の意志を貫き通した君を尊敬している。」
時津風「なんのことだ?」
ギャザー「君はフェンリルフォースの方針が気に食わなかった。無駄に人を死なせるやり方に不快を覚えた君は己の意思でフェンリルフォースをやめた。実に素晴らしい。」
時津風「……」
ギャザー「我々には君のような人材が必要だ。ぜひ我々に力を貸してほしい。『世界平和』の為に。」
この言葉に時津風は反応した。
かつて自分が目指したを同じく目指す者がいる。
時津風はそれが嬉しかった。
時津風「わかった、俺もお前達の傘下にろう。」
ギャザー「よく言ってくれた。」
パチンッ
ギャザーが指パッチンをすると時津風の目の前にり輝く何かが現れた。
あまりに激しくるそれは形を把握することも出來なかった。
ギャザー「そのトンネルをくぐりたまえ。」
時津風「トンネル?」
ギャザー「君の目の前にあるトンネル、それこそが君の目指すへの近道だ。」
時津風は黙りながらそのり輝くトンネルを通過した。
ギャザー「ようこそ。」
【厚木基地、走路】
厚木基地で自衛隊が出撃の準備をしていた。
その準備をしている自衛隊員の肩には翼にパラシュートを模したワッペンがい付けられていた。
それは自衛隊最強と呼ばれるほどの実力を持つ第一空師団だった。
その中心に1人の若者がいた。
その若者は聲を張り上げて隊員を鼓舞しているようだった。
彼は若くして第一空師団選抜対國防軍殲滅作戦郡の隊長となった男、吉良大亜三等陸尉。
高卒で自衛隊に隊し、國防軍との戦闘で恐るべき戦果を上げたため特例で第一空師団へ転屬された奇跡のエリートだった。
大亜「作戦開始まで45分、それまでに輸送機と護衛用戦闘ヘリへの補給を済ませろ!!我々がこの戦爭を終わらせるぞ!!」
隊員「輸送機等のエンジンチェック完了です。隊員の弾薬の補給なども完了しています。」
大亜「何度でも裝備のチェックをさせろ。今回は落下傘で敵陣に突する。向こうにつけば弾薬補給は出來ないんだ、規定重量で最大限の弾薬を持たせろ。」
【北海道基地】
志禮と時雨は黙って寢転がっていた。
まだ晝なのに。
時雨「ねえ…」
志禮「ああ?」
時雨「もしも私が死んだらどうする?」
突然訳の分からない質問をされて志禮は黙っていた。
時雨「私が突然死んだら悲しい?」
志禮「悲くはないが…これまでと違った覚に襲われることは確かだろう。」
時雨「それってどんな?」
志禮「自分が守るべき國民を守れなかったとか、目の前で自分の知る人間が死んだとか、なんというか、複雑なだ。」
志禮は一概に悲しいという言葉を使おうとしなかった。
志禮「俺は悲しいなんて表現を使っちゃいけない人間なんだ。」
時雨「なんで?」
志禮「俺は高校の頃から人を殺してきたんだ。」
時雨「……」
志禮「そんな奴が悲しいなんてほざくもんじゃない。そんなこと言ったら地獄で閻魔様に余計に裁かれる。」
時雨「志禮ってちょこちょこ何言ってるか分からないよね。」
志禮「廚二病はこじらせると永遠に治らないんだぞ。」
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