《複垢調査 飛騨亜禮》空中要塞

「メガネ君、生きてるか?」

《飛鳥》同盟、飛鳥隊長から通信がきて、メガネは一瞬、失っていた意識を取り戻した。

飛鳥のダークブルーの<ボトムストライカー>が、白銀のメガネ機を支えてくれてるのが視界にってきた。

通信を接匿回線に切り替える。

「飛鳥隊長、狀況は?」

「20機ほど振り落とされた。地上に置き去りだな」

ようやく訊きかえしたメガネに飛鳥が答えた。

そこは空中要塞と化して飛行中の《YUKI no JYOU》同盟の本拠地<立花城>の上であった。

全長10キロにも及ぶ空中要塞<立花城>には、5キロ後方の≪メガロポリスの虎≫同盟の鬼虎先遣隊と≪YUKI no JYOU≫同盟の<龍騎兵>隊の戦場も含まれていた。

《飛鳥》、《飛禮》同盟殘存の89機の<立花城>天守閣攻略部隊は、突然、舞い上がった空中要塞の天守閣付近で何とか勢を立て直したところだった。

<立花城>を守備している龍騎兵隊も、城門の前で100機が臨戦態勢になっている。

「朗報としては、夜桜が<黒龍隊>、ねじまき姫が<天龍隊>を撃破したらしい」

「ねじまき姫さんは、例の<聖弓>を使ったんですか?」

「同行してる風丸かぜまるの話では、<ニンジャハインド>のサブウェポン<ソードブーメラン>を投げて殘存の15機を殲滅したらしい。ねじまき姫らしいよ。ハネケさんもこちらに向かってる」

「ハネケさん、無事で良かった。ねじまき姫さんはあいかわらず、デタラメですね」

「まったく」

飛鳥のあきれたような聲が返ってくる。

「しかし、ハネケさんの到著を待って仕掛けたいですが、相手が待ってくれそうもないですね」

メガネは自分の作戦ミスを嘆いた。

<立花城>が空中要塞となることは流石に想定外だった。

「まあ、いつものように、俺が斬り込むよ」

「隊長の十八番ですからね」

飛鳥の隣で深紫の<ボトムストライカー>を駆る《飛鳥》同盟の副隊長のガゼルがいう。

「え? 斬り込むって、どういう?」

「まあ、見てな」

副隊長のガゼルは笑いながらいう。

飛鳥はゆるやかな摺り足で、ダークブルーの<ボトムストライカー>を無造作に進ませる。

<龍騎兵>隊100機は鶴翼の陣で展開していたが、虛を突かれてとっさに反応できない。

200メートルぐらいに接近されて、ようやく、翼龍に騎乗した<龍騎兵>隊が舞い上がったと思うと、上空から必殺の《龍槍》で飛鳥に襲いかかってきた。

飛鳥は風が舞う様に、ふわりとそれを避ける。

ゆっくりと抜刀すると、突きだされる《龍槍》を次々と両斷してさらに進む。

「あれ、何なんですか?」

メガネは流石に狀況が飲み込めない。

「無拍子むびょうしというらしい。飛鳥隊長のきには予備作がない。予測不可能で、結果、相手の虛をつく」

次々と襲いかかる<龍騎兵>隊であったが、その攻撃はことごとくけ流されるか、微妙にタイミングと間合いを外されてるようだった。

止まったかと思うと、突然、き出すような飛鳥のきに翻弄されている。

飛鳥は舞う様な足取りで獨特のリズムで大手門に近づいていく。

あまりにも無造作にいてるようにみえて、絶妙のタイミングで敵に対応する。

風に舞う花びらのような変幻自在なきである。

そして、一度、聖刀を鞘に納め、一瞬、制止した。

それは、ほんの瞬きするような瞬間の出來事であった。

次の剎那、城門を守っていた<龍騎兵>隊20機が一斉に倒れた。

何が起こったのか、誰にも分からない。

だが、飛鳥の黒い聖刀は鞘にまだ納まっていた。

「抜刀か?」

メガネはようやく、事の真相に思い當たった。

相変わらず、何が起こってるのか、目で捉えることはできないが、それ以外、考えられなかった。

「十二聖刀使いの<夜桜>も得意だときくが、どうなのかな?」

ガゼル副隊長が問いかけてきたが、

「―――次元が違う。まるで魔法だ」

と、聲を絞り出すのが一杯だった。

飛鳥は無造作に城門に近づいていく。

殺到する<龍騎兵>、さすがの飛鳥も容易には近づけない。

攻撃を巧みによけて、前線に留まる。

その時、メガネがブレードローラーを全開にして突進、<龍騎兵>隊の前に躍り出た。

そして、ゆっくりと抜刀する。

は<水龍剣>である。

聖武天皇の剣で正倉院に伝えられているが、明治5年の寶修理の際、明治天皇が魅了され、お手元に取り置いたと言われる。宮用、明治金工界の巨匠、加納夏雄によって水龍文の拵えがつくられて<水龍剣>と呼ばれるようになった。

<刀剣ロボットバトルパラダイス>においても、超レアアイテムであるが、≪殲滅刀技≫が使用可能な聖刀でもある。

「飛鳥さん、援護します」

「頼む」

「では、殲滅刀技、≪水龍水波斬≫!」

至近距離から、大手門に向かって、巨大な水龍が現れて打撃を與える。

攻撃力70萬の<水龍剣>の威力で數十機の<龍騎兵>を巻き込んで城門は破壊され、飛鳥の前に道が開けた。

「いきなり、殲滅刀技かい?」

「はい、回復に3分かかるので」

メガネが答える。

飛鳥はまたも不思議なステップで前進する。

大手門を突破し、三の丸へと侵するが、敵の姿はない。

メガネ機もそれに続く。

《飛鳥》、《飛禮》同盟殘存機は全機、突撃して、追跡しようとする<龍騎兵>隊を足止めする。

凄まじい戦になった。

一方、三の丸から二の丸に上がった所で、いきなり斬撃が飛鳥を襲う。

すんでのところで躱かわしたが、大地が大きく裂けていた。

飛鳥の眼前に、真紅の<ボトムストライカー>が十字槍を構えて立ち塞がっていた。

「ここから先には行かせられないわ!」

「マリアさん!」

懐かしい聲にメガネがぶ。

「………」

「飛鳥さん、ここは僕に任せて下さい!」

「分かった」

「突破できると思ってるの?」

真紅の<ボトムストライカー>が十字槍を振るって、飛鳥を襲う。

が、飛鳥はふわりと鳥の羽のようにかわして、本丸に向かう。

なおも追いすがるマリアの十字槍を、メガネは<水龍剣>でけた。

「勝負してもらいますよ、マリアさん!」

「仕方ないわね。あの方なら心配ないし」

マリアは苦笑しながら間合いを取った。

メガネも後ろに跳んで、<水龍剣>を鞘にもどす。

「抜刀かしら?」

「そんなところです」

剎那、メガネの<水龍剣>が風となった。

(あとがき)

何かあっさりすぎますが、こんなもんでしょうか。

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