《複垢調査 飛騨亜禮》AP《アンドロイドポリス》

翌日、<APアンドロイドポリス>の擔當者が現れた。

ハネケ・ブロンソンという素晴らしい金髪で碧眼、モデルのような型のAP警備部隊員には當然ながら好を持った。

の上司だというメガネを掛けた黒髪の頼りなさげな背の低い男にはし不安を覚えた。

AP警備部隊長シンザブロウ・ハットリという名刺をベスに差し出した。

こんな男が隊長?と思ったものだ。

彼の背後には、黒いボサボサ頭でのように目つきの鋭い隊員が影のように付き従っていた。

名前も名乗らず、人を何人か殺してそうな男である。

「なるほど。大、事は分かりました。アンドロイドのエリィちゃんでしたか。護衛は任せて下さい」

ベスの話をひと通り聞き終わると、そのハットリ隊長とやらは親指を立てて安請け合いをした。

しかも、その頼りなさそうな隊長はエリィをちゃん付けで呼んだ。

馴れ馴れしいのも程があるが、まあ、エリィの年齢からすると仕方ない面もあった。

「ライト君、彼の護衛は我々に任せてくれ。すまないが、遠隔監視で犯人をあぶりだすので彼に発信機をつけさせてもらうよ」

ハットリ隊長はそう言うと、無造作にエリィのブラウスののボタンを開けて、の谷間に発信機をすべり込ませた。仕事だとはいえ、何という破廉恥はれんちな奴なんだ。

そんな僕の気持ちを知りはしないと思うが、ハットリ隊長はし頭を下げて持ち場に戻っていった。

ハネケさんと黒いボサボサ頭のも後に続いた。

「ご主人様、では、行ってきますね」

エリィはにっこりと健気に笑う。

「いってらっしゃい!」

僕は不安な顔は見せまいと、いつもより元気に見送った。

エリィは白いスカートを揺らしながら自運転のバス亭までトコトコと歩きだした。

「母さん、エリィを工場で働かせるのをやめさせられないの? 母さんの収なら働く必要はないし、家で僕の世話だけしたらいいのに」

ライトは真剣な表である。

「政府の決まりでアンドロイドは工場で働く決まりなのよ。障害者家庭の収援助が目的だし、確かにうちは例外かもしれないけど、それはできない決まりなの」

駄々っ子をあやすような口調でべスは嗜たしなめた。

「でも、エリィは襲われてるんだよ! それにあのハットリ隊長とかいうのも頼りないし」

ライトは執拗しつように食い下がる。

「ライト、お願いだから私の言うことを聞いてちょうだい。ハットリ隊長たち、<APアンドロイドポリス>に任せるしかないのよ」

エリィはこの子はどうしてアンドロイドなんかにれあげてしまったのかという心配そうな表でライトを諭した。

「でも……」

ライトは不満そうに言ったが、仕方なく車椅子をって二階の自室に戻っていった。

自室に戻ると、ライトはしばらくベットに仰向けになって思いに耽っていた。

そして、突然、彼は飛び起きて車椅子専用リフトで階段を降りて飛び出していった。

車椅子でも運転できる専用ビークルは卵型の明カプセルに覆われていた。

カラーはダークブルーで、ちょうどライトの腰の辺りまで鋼鉄のボディに守られている。

には吸引用の浮力電磁石が埋め込まれていて道路のガイドレールを利用する電磁吸引支持方式E M S(ElectroMagnetic Suspension System)で移している。ドイツなどで実用化されてる技である。

2027年に開通した日本のリニア新幹線などは、電磁導浮上支持方式E D S(ElectroDynamic Suspension System)で車の電磁石とレールの推進用コイルとの反発力により浮上する方式である。

この方式は高速時にはいいのだが、100キロ以下の低速時には浮力が得られずタイヤ走行になる。低速走行する都市型パーソナルビーグルには不向きであり、一般的にEMSが採用されている。

EMSはガイドレールに推進用コイルを埋め込まず、鉄製のレールを利用できるのでコスト的にも安価で普及が進んでいた。

ライトは工場の近くまでエリィを迎えに行くことにした。

二人乗りのパーソナルビークルは自運転でガイドレールを走行する路面電車のような方式で運営されていた。

AI制なので衝突事故も滅多に起こらないし、駅の地下駐車場からリニアトレインに簡単に接続できるので利便も良かった。

工場の側まで來たライトはそこに數機の<ニンジャハインド>を目撃した。

漆黒の機に迷彩裝甲ステルスをもち、隠を得意とする<ボトムストライカー>の機種である。

その名の通り、忍者が黒裝束に覆面をしたようなシャープな機でお腹の辺りに人が乗れるコクピットがあり、ライトのパーソナルビークルを軽く見下ろすような位置に頭があった。

學カメラの搭載された赤い雙眸がキラリとる。

まるで黒いカラスが獲を狙うようにこちらを見ている。

その前に立ちはだかってるのは、<APアンドロイドポリス>のハネケ、のような男、隊長のハットリの三人らしかった。

は白銀に輝く騎士のような機で、式鬼<銀鋼シロガネ 零ゼロ>と呼ばれる<APアンドロイドポリス>の制式機である。

その後ろでエリィが立ちすくんで震えていた。

「エリィ!」

ライトは急いでエリィのそばにパーソナルビーグルを寄せて乗せた。

エリィの金髪の頭をでて両手で抱きしめる。

まるで兄妹のようなライトの金髪がエリィの頬にふれた。

中央のハットリ隊長らしき機がゆっくりとひとり前に進みでた。

腰の剣に手をかける。

しかし、そのままかず、靜かに腰を落とす。

「抜刀?」

視線の先の景にライトは見覚えがあった。

あれはネットゲーム<刀撃ロボパラ>の中の抜刀の構えに似ていた。

5機の<ニンジャハインド>がハットリ隊長に向けて一斉に襲いかかる。

一気に跳躍してくる。

ハットリ機は微だにしない、ように見えた。

次の瞬間、<ニンジャハインド>のが次々と両斷されて空中から墜落した。

鈍い音が道路に反響する。

さらに迷彩裝甲ステルスで姿を消して左右から忍び寄った8機の<ニンジャハインド>も、ハネケとの抜刀で両斷され、同じく道路の上で行不能に陥っていた。

完全に見えなくなっている<ニンジャハインド>の位置をどうやって割り出して倒したのか?

ライトには全く見當がつかなかったが、何か特殊裝備があるのかもしれない。

安心したライトが背後の警戒を怠っていたのがいけなかったのだが、パーソナルビーグルに凄い衝撃があり、気づいたときには數十メートル飛ばされていた。

強化プラスチックの卵型の明カプセルにひびがり車はへこんで橫転していた。

がついた頭をようやく上げたライトは強大な恐竜のようなものが彼を見下ろしてることに気づいた。

その巨大な右足がパーソナルビーグルを踏み潰そうとした時、彼はエリィを抱きしめて悲鳴を上げるしかなかった。

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