「知らない……？」

「うん。それに、聖治君は悪い人じゃないよぉ。きっと大丈夫ぅ。僕を信じて」

「…………？」

二人の會話に聖治だけがついていけていない。

力也りきやが聖治に歩いてくる。展開についていけていない聖治は唖然と力也りきやを見つめた。

「ごめんね聖治君。でも心配ない。僕たち、友達ぃ。仲間！　ね？」

「あ、ああ……。そう言ってくれるなら嬉しいんだが」

（けっきょく、どういうことだ？）

一向に話が見えない。 

聖治は俯いている星都せいとに目を向けた。まずは話をしないことには始まらない。意を決めて質問してみた。

「なあ、星都せいと……？」

「……ふ、ふふふ」

「ん？」

聲を掛けると星都せいとは何やら不気味な笑い聲をらしている。そして、突如聖治の首に片腕を回してきた。

「なーんてな！　驚いたか？　悪い悪い、お前が結構イケメンだったもんでよ、俺のしの末川すえかわちゃんを橫取りされると早とちりしちまってさ！」

「え……？　なに！？」

わざわざここまで呼び出したのはそんな理由だった。

「どうだ、驚いたか？」

「まったく、當然だよ。ていうか、これからは勘弁してくれ。本當に驚いたよ」

肩の力が抜ける。いきなり睨まれて驚くなと言う方が無理というものだ。

「ごめんねぇ聖治君～、星都せいとは悪戯好きだからさ～」

「いや、それにしてもだな」

「こういうのは初めの一発が肝心なんだよ」

見ると聖治から離れた星都せいとがシャドウボクシングをしていた。その例えはよく分からない。

「でもあれだろ。これで一気に心の距離がまったろ？　これだけのことしたんだ、これからは遠慮なく言い合えるさ」

「それはまあ、そうかもしれないが」

かなり強引な気もするが聖治は星都せいとの気持ちをけ取った。

「ま、そういうことさ。これが俺流の、転校生に対するよろしくお願いします、ていうわけさ。でもいきなり仕掛けて悪かったのは事実だし、不快に思ってるなら謝るよ」

「いいさ。意図は分かったんだ。そういうことなら。俺からも。これからよろしくな」

聖治は星都せいとと力也りきやと一緒に教室まで戻るために廊下を歩いて行く。すっかり打ち解けた聖治たちは仲良く並んでいた。

「それで、末川ちゃんには手を出すなよ？」

「そもそも誰だよ、末川ちゃんって」

星都せいとからのからかいに聖治は苦笑した。