《錬七剣神(セブンスソード)》出発1
翌日、早朝に聖治たちは學生寮の門の前にいた。
昨日はあれから解散し明日の用意をしていたが、そう多くの荷は持てずみんな大きなバッグを一つだけ手にしていた。
服裝は皆學生服で、力也りきやだけは加えてリュックサックも背負っていた。
「それで行先なんだが、香織かおりさんは場所を知っているんですか? 水門みなと孤児院がどこにあるのか」
「うん。離れているけど、ここからでも歩いて行ける距離だよ。たどり著く頃にはきっと會えるんじゃないかな」
香織さんの話に聖治は頷いた。
「それじゃあ、行こう」
香織かおりさんを先頭にして聖治たちは歩き出した。散歩とは違い張が漂う。これから命がけの戦いが始まるのだから。
しかし聖治のに不安はない。必ずみなで生き殘れると信じていた。
それから歩き続け空にはすっかり日が昇った頃、聖治たちは閑散かんさんとした田舎道を歩いていた。
畑が多く見けられ人気はない。聞けば山岳地帯寄りの外縁部らしく、畑の先には木々が生い茂っている。
「あれか?」
視線の先、聖治は歩いている道の右側に建が見え始めた。灰の外見は古臭いものの造りはしっかりしており、二階建ての建の周りを塀が囲っている。
正面には門が設けてあり、そこから孤児院にるようだ。
「著いたな……」
星都せいとの呟きが聞こえる。覚悟を促すような聲に聖治は無言で頷いた。
「それで、これからどうするかだが。あいにく俺には誰が誰だか分からない。香織かおりさん」
聖治は香織かおりさんの背中に聲を掛ける。それで香織かおりさんは立ち止まり振り返ってくれた。
「うん。ここにいる二人は安神やすかみ此方こなたと安神やすかみ日向ひなたていう姉妹で、お姉さんが赤い髪のをしていて、妹さんは白い髪をしているの。年齢は私たちよりもし下くらいかな」
「ならその二人に會おう。話をすれば分かってくれるはずだ」
「そうなんだけど……」
聖治はそのまま會いに行くつもりだったが香織かおりさんは心配そうに目を伏せた。
「たぶん、私たちに賛同さんどうしてくれるとは思う。けれど、もしかしたら違うかもしれない。まずは様子を見ましょう。それに、いきなりこれだけの大人數で押しかけたら相手にとっては威圧をけるだろうし」
「なるほど、それは気づかなかったな」
聖治はすぐにでも會って話をしたかったがそれならば仕方がない。まずは門から中の様子を窺うかがうことにして聖治たちは再び歩いた。
その際、ふと浮かんだ疑問を聞いてみる。
「香織かおりさんは、なんだか詳しいですよね。孤児院の場所とか安神やすかみっていう姉妹のこと」
「うん、きっとこうなるって思ってたから。ううん、期待してたから、かな。それでいろいろ調べてたんだ。でも、いざ一緒に戦おうって、なかなか言えなくて」
「え?」
香織かおりさんは恥ずかしそうに苦笑を浮かべながら言っている。けれど、明かされた事実に驚いた。
「本當を言うとね、うれしかったんだ。君が一緒に戦おうって言ってくれて。わたしには勇気がなかったから」
「香織かおりさん……」
彼の本當の考えを知れた。それだけで聖治はの奧が溫かくなった。
「一緒に、頑張りましょう」
「はい」
聖治の言葉に、香織かおりさんは笑顔で頷いた。
門の目の前にまで來ると孤児院の中から子供たちの遊んでいる聲が聞こえてきた。
聖治は門からそっと顔を出し中の様子を窺う。
門から孤児院の口までは広場になっており、小さい子供たち數人が元気にはしゃいでいた。
敷地の端には砂場もあり稚園のようだ。
「なあ剣島、いるか?」
「し待ってくれ、今探してる」
星都せいとが急かしてくるが小さい子供ばかりで見つからない。もしかしたら外ではなく孤児院の中にいるのかもしれない。もしそうならお手上げだ。
「なんだよ空振りか? 俺にも覗かせろよ」
「おい、おま」
すると強引に星都せいとが前に出てきた。。小柄なもあってすんなりと下に潛り込んでくる。
「おい、あれじゃねえのかよ」
「え、どこだ?」
「右じゃねえ、左だ左」
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