「俺だけじゃなく、他の皆も真剣に探していると思うが」

「ううん、君は特別なの。聖治君が魔堂まどう魔來名まきなを探すことに、意味があるんだよ」

「え？」

香織かおりさんは聖治ではなく、どこか遠くを見つめるような目で道の先を見ていた。もしくは、ここにはいない誰かを思って。

「早く、君と魔來名まきなが出會ってしいな……」

そう言う香織かおりさんは靜かに笑っていた。待ちむ未來が楽しみで、それでいて嬉しそうな。それは自分の幸せを願う顔というより、誰かの幸せを願っているような表に見えた。

「……香織かおりさん」

その顔が気になって、聖治は聞いてみた。

「その魔堂まどう魔來名まきなって、どんな人です？　もしかして、俺と何か関係があるとか？」

最初は香織かおりさんの知り合いだと思い躊躇ったが、自分にも関係があるなら躊躇ってもいられない。聖治は魔堂まどう魔來名まきなという男に興味を持って香織かおりさんに聞いてみた。

すると香織かおりさんは聖治に向き直り、ニコっと笑った。

「『會ったら、きっと分かるよ』」

「…………」

（そんな風に言われたら、追及出來ないな……）

そして聖治たちは晝食を挾みながら魔堂まどう魔來名まきな探しに奔走ほんそうしたが、結局見つけることは出來なかった。

そのまま時間は過ぎて一九時になったため水門みなと駅にまで戻ることにした。

空は薄暗く、外燈のが等間隔を置いて淡く燈っている。しかし地上の景観は晝とはあまり変わりなく人気は多い。

その中に見知った四人がいた。

「よう聖治、そっちはどうだった？　て、聞くまでもなさそうだな」

「ああ。そう言うあたり俺も聞く必要はないみたいだな」

「まったく。本當に真剣に探したんだろうなあ～？　もし遊んでいたなら殺してやる」

「大丈夫だ、問題ない。きっとな」

聖治は星都せいとと馴染みつつある挨拶を終え他の皆にも目をやる。

他の三人もすでに到著しており、それ以外の人はいない。どうやら安神やすかみ姉妹も魔堂まどう魔來名まきなは見つけられなかったようだ。

「それで、これからどうするんですか？」

日向ひなたが近寄り今後のことを聞いてくる。丸っこい瞳が聖治を見上げていた。

「そうだな。とりあえずもう遅い、今日の探索はこれでお終いにしよう。ここにいると決まった報もないし、場所を変えるのも手だが」

「なあ聖治。そもそもなんだがよ、その魔堂まどう魔來名まきな、仲間になってくれると思うか？」

「どういうことだ？」

そこへ星都せいとが聞いてきた。星都せいとは言いにくそうに表を歪めるが、それでも強気に話した。

「魔堂まどう魔來名まきなは元々団長となるべく作られた男だ。そんな男が不戦の話に乗るか？　奴はいわば優勝候補みたいなもんだろ？

もし勝ち殘るなら魔來名まきなが一番確率としては高いはずだ。

なのに、わざわざ俺たちの話に乗る、奴のメリットがない。もしかしたら、斷るかもしれないぜ……？」

「……なるほど……」

星都せいとは最後のセリフだけ語調を弱め、聖治も表を苦くした。

確かに、魔堂まどう魔來名まきなという男が団長として作られたなら能は高いはず。そんな男がセブンスソードを辭退する理由は薄い。

星都せいとが言ったように斷る可能の方が高いはずだ。

「ううん、彼なら大丈夫」

しかし、聖治たちの不安をかき消すように香織かおりさんが言った。その自信のある話し方はなにか確証があるようだ。

「なぜ、そう思うんです？」

「それは……」

聖治が尋ねると香織かおりさんは言い淀む。考え込むように顔を顰め、その様子は言いにくいのではなく言葉を選んでいるみたいだ。

なんだか逡巡しゅんじゅんしているようだが、意を決めたのか聖治を見つめてきた。

「その、実はね――」

「なあ、おい」

だが、ついに香織かおりさんが口を開いたと同時に星都せいとが口を挾んできた。せっかくの香織かおりさんの言葉が遮られてしまう。

「なあ星都せいと、今は香織かおりさんが話しているから――」

「そりゃそうだがよ！　見ろよ、おかしいぜ？　駅前だってのに……」

星都せいとは話しながら張をわにし、辺りを見渡し始めた。それで聖治もつられて周りを見るが、そこで異変に気付いた。

「誰も、いないぜ……？」

「まさか……」