《錬七剣神(セブンスソード)》第六章 絆が作る未來、その先へ

(俺は、何がしたいんだ)

魔來名まきなは夜の街を歩きながら苦悩していた。自分は力を求め、それだけの理由で戦い、それ以外してはいなかったはず。

だがその心が僅かに揺れている。かつて真っ直ぐだった行には矛盾と無駄が生まれ、思考は鈍り淀んでいる。今も迷っているのがその証拠。

何故こんなことになったのか。その原因を探ればすぐに思いつく。

『あの子を、守ってあげて……』

「…………」

佐城さじょう香織かおりが言い殘した願い。彼はその思いのために命を賭けた。彼は自の思いを通し殉じたのだ。

間違いなく、魔來名まきなの心を揺らしているのは彼だ。

斬るべきか、願いを守るべきか。魔來名まきなは迷っていた。

そして、二人は出會った。魔來名まきなは道を知らないまま歩いていたが、治神ちしん・織姫おりひめの導きか、意図せず選んだ道が二人を引き合わせた。

剣島聖治。錬七剣神セブンスソードの生き殘りであり、彼の願いそのもの。佐城さじょう香織かおりは彼を守ることをんだ。しかし、

「魔來名まきなァアアアア!」

聖治は、増悪の眼差しで魔來名まきなを睨み付けていた。

「何故だ、何故香織かおりさんを殺した!?」

「…………」

激しい怒気どきと共に、聖治は魔來名まきなを問い質す。

「香織かおりさんは、あんたと分かり合いたいと願っていた! 誰よりもあんたを信じ、希を抱いていたんだ。それなのに、なぜこんなことをするッ?」

「…………」

「何故だ魔來名まきなぁあ!?」

聖治の瞳から涙が零れる。充しそうなほど両目には力がり、怒りと悲しみが中で渦を巻いているのが分かる。

自分に向けられる聖治からの復讐の念。烈火の如く敵意を立ち上がらせ、彼の願った人は魔來名まきなを責め立てる。

それを見て、魔來名まきなの迷いは消えた。

「クッ、ハハッ!」

心を塞いでいた雲が晴れていくかのような解放に笑いすられてくる。

斬るか守るか? 馬鹿馬鹿しい。そんなことは初めから決まっている。何故なら互いにスパーダ。食らい合う蠱毒の蟲同士。そこに、守るなどという余地はない。

「言いたいことはそれだけか?」

聖治のびを魔來名まきなは振り払った。

「この世界は力がすべてだ。力がなければ何もせん。それを求めることに何の疑問がある。力がなければ、価値などない!」

魔來名まきなは堂々と告白する。を張り、真っ直ぐに言い放つ。佐城さじょうを殺害したのは誤解であるが、力を求める魔來名まきなにしてみれば意味のないことだ。

「魔來名まきな……!」 

聖治は悔しさに拳を握り締め、涙は止まらない。

「俺は、お前を許せない……!」

絞り出す怨嗟の言葉。が高まり聖治は睨む。

彼の言葉を、しかし魔來名まきなは涼しい表け流した。最早敵同士、今更何を言われても揺れることはない。

「だがッ!」

しかし、ここで異変が起こる。あれほどまでに敵意を飛ばしていた聖治の口から、予想外の言葉が飛び出した。

「俺は、あんたを斬らない!」

「……何故だ?」

まさかの事態に魔來名まきなの眉が曲がる。目の前の男が何を考えているのか、まるで見當が付かない。

「香織かおりさんが言っていたんだ。俺たちは、……かつて兄弟だったと」

それは前世での関係。佐城さじょう香織かおりが明かす、二人の過去であり真実だった。

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