「それがどうした。今の俺たちには関係ないことだ」

それを魔來名まきなは無意味と斷ずる。

「俺の仲間が、言っていたんだ……」

聖治は魔來名まきなの言葉には返事をせず、自分の話を進めた。噴火するほどの怒気どきは収まり、聲は懐かしむように悲しさで濡れていた。

「家族は、大切な存在なんだって」

聖治は語る。ここにはいない大切な仲間が言い殘してくれた言葉を。妹のために一生懸命で、守るために必死に生きた、一人のの言葉を。

「家族っていうのは、お互いを助け合って、思い合って、困難も、一緒に乗り切るものだと！　彼は、死ぬ間際にそう言っていたんだ」

仲間の喪失は今経験したばかり。にはまだその悲しみが渦巻いている。

「あんたは気にらない！　許せない！　だけど」

聖治は睨み上げる。目の前に立つ、強敵でありかつての兄を。

「俺はあんたを斬らない。俺は仲間を大切に思っている。絆を信じている！　その仲間が俺に言ってくれた。家族は大切なものと、死ぬ時でさえそう言ったんだ。なら――」

聖治は片手をに當てる。瞳には確固たる意思を宿し、力強い眼差しがった。

「俺がそれを信じないでどうするんだ！　魔來名まきな、俺たちが兄弟なら、俺たちは分かり合えたはずじゃなかったのか！？　こんな殺し合いになんの意味がある。俺も香織かおりさんも、他の仲間たちだって、絆を合わせれば錬七剣神セブンスソードを切り抜けられた。みんなと一緒に、あんたと一緒ならそれが出來たんだ！」

「くだらん」

聖治のびを魔來名まきなは再び弾き返す。

「俺の考えは変わらん。もっと力を得ること、それだけだ」

冷酷に。冷徹に。魔來名まきなの目は手に持つ刀と同じようにするどい。

「協力？　仲間？　虛しいものだな。誰よりもそれを信じてきたお前が今ではたった一人だ。絆など弱い。あるのは力、それだけだ」

魔來名まきなは言う。聖治の語る絆を否定し力こそがすべてだと。そう斷言する彼の意志は鉄のように固く氷のように冷たい。

「そんなことはない！　力だけで作り出す未來にあるのは、己のしか満たせない空虛な世界だけだ。絆で切り開く未來には人の笑顔と幸せがあると、俺はそう信じている！」

「いらん。世界の形など強者の足跡に過ぎん。　絆などなんの意味もなさない」

聖治は反論するが魔來名まきなには屆かない。この男の意思を曲げることは不可能だ。力に憑りつかれた魔來名まきなは誰にも止められない。

魔來名まきなは聖治へと向かい、現実を突きつけた。

「今のお前のようにな」

かつていた仲間はすべて消えてしまった。そこには掛け替えのない絆があったはずなのに。守ると誓ったはずななのに。

なのに、みんなはいなくなった。

絆は無力なのか？

仲間に意味はないのか？

魔來名まきなが突きつける現実が聖治のに押し掛かる。

けれど。

言うのだ。

の中、今もじる想いにれながら。

「俺は、一人じゃない」

聖治は片手をに當て、魔來名まきなに告げる。

「みんなならここにいる、俺の中に生きているッ」

噛み締めるように。思いを込めて。聖治は魔來名まきなに言う。

「魔來名まきな、お前が分からないというのなら教えてやる。仲間の絆は消えたりしない」

聖治からの言葉に魔來名まきなは構えた。手が柄に添えられる。

「ならば見せてみろ、貴様では相手にならん」

「やってみなければ分からない」

そして聖治も構えた。片手を前にばす。

「魔來名まきな！　証明してみせる。これが、俺たち絆の力だ！」

闇夜に聖治のスパーダが黃金に輝く。

「フッ」

それを見て魔來名まきなが笑った。