聖治は防ぐのではなく帝こうてい剣の移スピードでこれを回避する。なんとか攻撃を躱したものの、魔來名まきなはまたも姿を消してしまう。

「なんだと！？」

「死ぬがいい」

聖治は帝こうてい剣で周囲を走り回る。その後を追うのは空間転移で追撃してくる魔堂まどう魔來名まきな。

攻撃を躱される度、真橫、正面から突然現れては居合斬りを放ってくる。空間転移で移しているため次の攻撃が予想出來ず、不意打ちの連続だった。

聖治は地上を疾走し魔來名まきなは空間を縦橫無盡に駆け抜ける。

聖治は路地裏を通って表通りへと場所を移した。

それは魔卿まきょう騎士団が母の水門みなと市を代表する複合企業本社ビルの正面だった。

本社ビル正面はちょうど巨大なスクランブル差點となっており、屹立きつりつするビルに囲まれた平地のようだった。

そこには誰一人おらず、無人の街が二人を迎える。

錬七剣神セブンスソード。それだけを行なうためだけに設けられた水門みなと市、その中心であり二人専用のバトルフィールド。

まるで本社ビルが決闘の場であったかのように、ここには二人を邪魔するものは何もない。

聖治は差點の中央に立つと上空から迫る魔來名まきなの攻撃を転がって回避する。差點の空気を震撼させるほどの音が響き渡り、アスファルトが四散する。

聖治は起き上がり目の前に立つ魔來名を睨んだ。魔來名も直立すると睨み返し、差點で二人は対峙した。

「フッ、しはやるようだな」

「當たり前だ。俺は、一人じゃない！」

余裕の態度で魔來名まきなは立ち、魔來名まきなの言葉に聖治は必死に答えた。

「俺には、仲間との絆がある！」

魔來名まきなは未だ聖治を見下しているが、スパーダを六本所持している剣島聖治はすでに幹部を超えている。世界的にも倒せる者は滅多にいないだろう。

そしてその全力、未だ見せてはいない。

「來い、姉妹スパーダ」

聖治は両手のスパーダを消すと片手を天にばした。虛空に手を広げ、全スパーダ中最兇の剣(つるぎ)を呼び出す。

――其は生者を敷く絶対者。食連鎖の必要悪が意思を持つ時、神の法則が書き変わる。摂理を棄卻し暴の王よ、其を法則と化し世界を殺戮で染めよ！

「魔皇まこう剣、カリギュラ！」

スパーダ招來しょうらい時に発する粒子が聖治の片手に集中する。しかし今回に限り、粒子のが漆黒だった。

それは天黒魔あくまを除けば最も兇悪な武威。所持者以外を殺すことしか出來ない破滅のスパーダ。

聖治の右手が魔皇まこう剣を握り締める。漆黒の剣を構える聖治だが、手に収まる魔皇まこう剣の形狀が以前とは変わっていた。

長している。まるで生きているように。カリギュラの刀には管のような管が浮かんでおり、その線が赤くっていた。

本當の管のように管が脈している。そのおぞましさ。これは剣ではなく天黒魔あくまと同じく呪の類だ。

人にとっては忌でしかなく、事実、これを視認したのが並みの者ならば発狂するだろう。

それが産聲を上げる。冥界から聞こえる歌聲のように。地獄に引き摺り下ろす亡者の手のように。

これをけるもの、全て死ねと斷じて謳う！

「発、カリギュラァアア！」

暴の風。刀から発する破滅のオーラ。それは安神やすかみ此方こなたが使用していた時とは異なり、無からどす黒い波となって周囲に広がった。

また、変わったのは見た目だけではなくその能力。