――其は萬の救世主。あらゆる者よ、聖天の玉座に集うべし。束ねる願いはここに一つとなりて、闇を貫く號砲となる。主に勝利をもたらすため、不滅のを纏い招來せよ！

「聖王剣せいおうけん、ミリオットォオオ！」

聖治の両手に白銀のスパーダが握られる。誰よりも平和を願ったの祈りが現化したような、聖なる輝きを放ちながら地上を照らす。

聖治は構える。ミリオットの能力発、そのための準備に掛かる。

聖王剣せいおうけん・ミリオット。屬は収束。初期段階では所持者の魔力を熱エネルギーに変換して放するだけだが、三本で周囲に漂う魔力を使用可能。

さらに五本になると平行世界からもマナを取り込むことが出來る。しかし、それらの能力も六本に比べればまるで話にならない。

高位次元宇宙との接続。

聖治は聖王剣せいおうけんミリオットを掲げた。夜空に切れ目が走り、そこからミリオットに向かい七のが吸い込まれていく。

存在しないはずの幻の第五元素、エーテル。七のは萬を構する萬能元素であればこそ。

突如この場を襲う異変に魔來名まきなは戸いそうになるが、すぐに平靜さを取り戻す。聖治は技を行なうための準備に取り掛かりエネルギーを充填している。

その隙を突くべきとも考えが過るが、

「フン」

魔來名まきなは天黒魔あくまを納刀し同じく魔力を注ぎ始めた。仮にここで半端な攻めをしたところであれは常軌を逸している。

返り討ちにあうのがオチだろう。ならばこちらも全力で立ち向かい、相手の全力を凌駕するのみ。

「面白い」

対するは高位次元宇宙の超存在。されどおびえることなく。笑みすら浮かべ。己の魔刀で神魔すら斬り伏せんと刀に手をばす。

互いに力を込める。目の前の敵を倒さんと思いを込める。そして、技を発した。

「ミリオットォ！」

「絶技絶閃――」

ミリオットの刀に七のが帯びる。全人類の年間消費電力を上回るエネルギーが、この剣に凝されている。

その脅威に対して、魔來名まきなも全力で立ち向かう。

「――極地！」

これが、魔來名まきなが行う、最速にて最多の魔技！

「――虛空連斬！」

同時に聖治の攻撃も放たれた。ミリオットを振るうことにより魔來名まきなを目がけ七に輝くが放される。

エーテル放の反で聖治が立つアスファルトが陥沒する。速を遙かに超える速度で飛來する脅威。

表面溫度は太すら上回り、地面が余波で溶解し空気は水蒸気発さながらに破裂した。

だが、その脅威を迎え撃つは魔堂まどう魔來名まきなが極めた殺害の理。死を目前にしてもなお挑む至高の攻撃だ。

虛空の速度で行われる、空間斷層、そして多元同時攻撃、その連続斬撃。空間が細切れに分斷されていく。

その景はまるで空間の萬華鏡。聖治と魔來名まきな、二人の間合い全てが空間斷層で埋め盡くされる。

その數は膨大だ。なぜなら虛空とは大數で表すとその數なんと一垓がい。百兆の百萬倍である。

一秒間に一垓回の斬撃。速など話にならない。

重なりあった空間斷層の切れ目がエーテル放に接する。しかし、向かい來る七のを『しだけ削っただけだった』。

だが、目前に控えるのは無數の切斷現象。たとえ鱗の一枚だろうが數で削り殺す。

エーテルが削り取られ散っていく。総を削りながら進行し、みるみると小さくなっていく。

七の欠片が空間を四散する様はまるで紙吹雪のようだった。幾億幾兆という輝きが視界を埋め盡くし、幻想的な軌跡を殘しながら魔來名まきなへ迫る。

両者の全力と全力が衝突する激烈な超速戦、勝負は一瞬で付いた――

「ぐああ！」

魔來名まきなが吹き飛ばされる。後方に立つビルの壁面にを開けて突っ込んだ。

ミリオットは能力を停止している。そのため高位次元宇宙との繋がりはなくなり夜空は元通りとなっていた。

「はあ、はあ！」

ミリオットを振り下ろした勢のまま聖治は息を整える。これまでの戦闘でかなり力を使った。

しかし価値はあった。魔來名まきなを吹き飛ばした。無事なはずがない。この一撃をければなんであれ蒸発だ、影も殘らない。

「勝った……」

靜かな勝利に、聖治は疲れをわにつぶやいた。