《錬七剣神(セブンスソード)》決戦8

その時、ガラと音を立て、壊れた壁面の欠片が地面に落ちた。

「まさか」

聖治に電流が走る。さきほどの一撃をけて無事なものなどこの宇宙には存在しない。

そこで気付いた。エーテルの熱で焦げた道路の跡が途中で終わっていたのだ。さきほどまで魔來名まきなが立っていた位置のちょうど手前でなくなっている。

「惜しかったな」

聲が響く。夜の靜けさを切り裂くかのように。

舞い上がる煙から一人の男が現れ地面に著地する。に傷を負っているものの戦意は衰えず、不屈の魂で魔堂まどう魔來名(まきな)は登場した。

聖治は驚愕するがすぐに引き締める。魔來名まきなはすぐに疾走して斬りかかってきた。聖治はミリオットでけ止め斬り返す。その際に周囲のマナを取り込み、近距離で放した。

聖治がミリオットを振るう度連続して閃の斬撃が飛ぶ。魔來名まきなは天黒魔あくまで斬り裂きながら後退し空間転移で空中に避難した。

本社ビルを背後に、上空に姿を現した魔來名まきなを見つけ、聖治はさらに力を込めた線を魔來名まきなにぶつける。

空間を穿ち貫くは命中し、魔來名まきなは天黒魔あくまでけるも威力に押されビルの壁面に足を付いた。接する瞬間に膝を屈折させて勢いを殺す。

そこへ、追撃するため聖治は剣を持ち替える。ミリオットを仕舞い、両手に構えるのは鉄塊王てっかいおう撃鉄げきてつ。大剣を軽々と橫に振り被り、力の源、質量を増大させる。

が急速にびていく。剣先は天を目指して巨大化し、ついには一キロメートルを突破した!

「うおおおおお!」

聖治は魔來名まきながいる地點を目がけ橫薙ぎする。剛剣が大気を唸らせる。

そして、膨大な質量がビルを直撃した。コンクリートを砕しながら突き進み、真橫に一刀両斷したのだ。

二つに分かれたことにより本社ビルが倒壊し始める。高層ビルの巨がゆっくりと傾き、頭上から落ちてくる。

魔來名まきなは一撃を空間転移で回避しており、天黒魔あくまを壁に突き刺してを支える。

そこへ聖治は跳んだ。元に戻した撃鉄げきてつを肩に擔ぎながら百メートル以上も跳躍し、魔來名まきなに攻撃する。

撃鉄げきてつの一撃を防ぐも衝撃によって壁面が砕かれ、二人はビルの中に侵する。オフィスには業務用の機が並び書類が散らかっている。

聖治は帝こうてい剣を、魔來名まきなは加速魔を用いて剣戟けんげきを繰り出す。數十回の剣撃の風圧に書類は竜巻のように舞い床や天井に裂創が刻まれる。

そうしているうちにもビルの傾倒は進み、ついに角度は七十度に達した。あまりの足場の悪さに聖治の勢がもたれ、攻撃の手が止まる。

その隙を見逃さず、魔來名まきなは地面を蹴って外へと飛び出した。窓を突き破り空中へと躍り出ると、反転して倒壊していくビルを正面に捉える。

高度數百メートルから落下しながらも、魔來名まきなは敵を定め剣閃を連続する。

分かたれたビルの本を上回る空間斷層。それにより高層ビルの巨大は八分割に切り裂かれ、発したように四散する。

その中で、さらなる切斷が部からビルを襲った。聖治はミリオットを振るいながら放し、ビルを破斷する。

大小様々な瓦礫となってビルは倒壊し、破片は地上に落下していた。聖治も落下する瓦礫の上に立ちながら落ちていく。

が重力に引かれていくのをじながら魔來名まきなの姿を探した。辺りには同じく落下を続けるビルの破片が目にる。

すると頭上の瓦礫に魔來名まきなが現れた。聖治をじっと見下ろし、聖治も睨み上げる。

ここではろくに戦えない。魔來名まきなは頭上に視線を移し瓦礫を飛び跳ねながら移していき、隣のビルへと飛び移った。聖治は後を追いかけ隣接するビルの屋上へと移る。

崩壊していく本社ビル。落下の衝撃は轟音を地上から響かせ、栄華を誇った建造は形を失った。

そして、新たな時代を築くべく作られた二人のスパーダが立つ。十數階建ての高層ビルの屋上には柵はなく、殺風景な景が広がる。

そこに立つ二人は無言で対峙している。これまでの激闘を経て両者疲労を覚えながらも、盡きぬ闘志でを支え続けていた。

目の前に立つ魔來名まきなを見つめ、聖治は魔來名まきなの強さを実していた。これほどまでスパーダを駆使してもなお、立ち続ける男の姿。勇姿とすら表現出來る孤高の刀士。

そんな男の存在に、聖治はふと思ってしまった。

それは、あってもおかしくなかった、もしのことだった。

「……何故泣く?」

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