《錬七剣神(セブンスソード)》決戦10
予想外の攻撃に魔來名まきなは聖治の攻撃をけ止めることしか出來ず、踏ん張りの利かない空中で弾かれる。
その隙を突くべく、聖治は他のスパーダを周囲に配置、足場にして魔來名まきなを攻め立てる。空中を跳び回り、あらゆる角度から魔來名まきなを急襲した。
(舐めるな!)
だが、きが取れない空中とて魔來名まきなは諦めない。聖治の攻撃を全てけ流しながら目できを捉え、背後に通り過ぎて行った聖治を迎撃するためを捻って反転する。
それと同時に天黒魔あくまを一閃した。
それは見事に一致する。スパーダを足場に猛進する聖治がそこにはおり、天黒魔あくまの刀は聖治に直撃せんとする。だが!
聖治の右手にはゼウシスが。そして、左手にはの粒子が集まっていた。聖治は左手を翳し、天黒魔あくまにぶつけたのだ。
聖治が手にする粒子の正、それを魔來名まきなは直的に理解する。
(しまっ――)
「力を貸してくれ、香織かおりさん!」
後悔は遅い。聖治が持つ粒子は瞬く間に天黒魔あくまの刀を包み込み、鞘となって顕現する。それは他でもない治神ちしん・織姫おりひめ。
天黒魔あくまの鞘となり、刃を封印する!
これで攻撃は封殺された。聖治は別の足場に到著すると再び魔來名まきな目がけ剣撃を繰り出す。
天黒魔あくまを封印された魔來名まきなには反撃の手はなく、防戦一方に追い込まれる。
そして、聖治が振るう斬撃に、ついに魔來名まきなの勢が崩れた。
「終わりだぁあああ!」
魔來名まきなの正面に浮かぶ撃鉄げきてつに足を掛け、聖治は最後の一撃を放つ。これにて終結を。この激闘に終止符を!
迫る聖治を前に、魔來名まきなは張する。まずい。これではまずいと、最大の警告が脳から響き渡る。
辺りは暴の風に覆われ、目前には迫する神剣しんけん。頼みの天黒魔あくまは封印された。
(負ける、のか? 俺が敗北する?)
魔來名まきなの思考を駆け巡る敗北の二文字。今まで過ることもなかった不安が全を襲い、敗北が現実になろうとしている。
形振なりふり構っていられる場合ではなかった。
魔來名まきなはここにきて、初めて彼に頼った。
「幸子ぉおおおおお!」
魔來名まきなが咆哮を上げる。それと同時に柄に手をばす。左手で鞘を持ち、右手で柄を握る。そして――
魔來名まきなは抜刀した!
「!?」
聖治に訪れた驚愕は、許容量を振り切って聲にならない。封印していたはずの天黒魔あくまが、鞘から抜かれ攻撃してきたのだ。
(馬鹿な! まさか、香織かおりさんが抜刀を許可したのか!?)
(もらった!)
魔來名まきなの一閃は不意打ちもあって完全に一致。大きく振り被った聖治では防ぐことが出來ない。
外れることはない。絶対に命中する。
魔來名まきなの勝利は約束された。
だが、ここにきて魔來名まきなに聲が聞こえてきた。
『私は、あなたを信じてる』
の言葉が魔來名に再度呼び掛ける。願いを込めて。時を超えて。魔堂まどう魔來名まきなに訴え続ける。
(黙れ、俺はこいつを斬る!)
それでも魔來名まきなの意思は変わらなかった。不屈の闘志に不滅の意思を以て、目の前の敵を斬り殺さんと、天黒魔あくまを握る手に力を込める。
そこへ、さらなる聲が響いた。しかも、それはさきほどとは別の聲だった。
『なあ、正一まさかず』
「!?」
頭の中から聞こえてきた、初めて聞く男の聲。突如現れた謎の聲に魔來名まきなは揺する。
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