現化する六本のスパーダ。ゼウシスを合わせて七本全てが展開される。空間に浮遊するは五つの剣と一つの鞘。顕現する究極の武威が前方に並ぶ。

一人じゃない。聖治にはこれだけの仲間がいる。

そのすべてが、聖治の力だ。

「はあああああ！」

聖治は帝こうてい剣と撃鉄げきてつで駆け出した。速度はを超え、瞬間的にグレゴリウスに到達する。

帝こうてい剣の突撃、このを一つの武威として、の矢となって対象を撃滅する！

「遅い」

「なっ！」

だが、グレゴリウスが振るった赤の剣が帝こうてい剣を弾いた。突撃前までは確かになにも持っていなかったはずなのに。

聖治はすぐに次の攻撃を出す。鉄塊の王。理的な攻撃力ならば最強の打撃を振るう。

「軽い」

しかし剣が弾かれる音が響く。撃鉄げきてつの攻撃すらグレゴリウスは軽々と返した。聖治は押し返され床をりながら後退する。

「くそ！」

舌打ちが出る。まさか帝こうてい剣の速度と撃鉄げきてつの攻撃が返されたことに驚きを隠せない。

だが、いつまでも驚いていられない。

速度と質量が駄目でも、聖治にはまだ仲間スパーダがある！

聖王剣せいおうけんと魔皇まこう剣に持ち替える。両手に持ち、すかさず能力を発した。

「カリギュラ！」

この空間に死滅のオーラが充満する。暗黒に閉ざし、暴の風は森羅萬象を無に帰す。

カリギュラの漆黒の霧がグレゴリウスに切迫する。その時、グレゴリウスは剣を地面に打ち付けた。すると衝撃波が周囲に広がり、カリギュラを押し退けた。

「なに！？」

しかも、退いた位置から進まない。グレゴリウスを中心に円形の結界でも張られているように、カリギュラはグレゴリウスに近づかない。

「まさか」

本來ならばあり得ない。カリギュラは結界だろうが壽命を削る。だがグレゴリウスは間違いなくカリギュラを封殺していた。

聖治は魔皇まこう剣を手から離し聖王剣せいおうけんを両手で握る。刀に無限の平行世界から力を取り込み、白銀に輝くエネルギーを撃ち放つ！

「くらええええ！」

聖王剣せいおうけんから放たれる破壊線。轟風と音をまき散らしながら突き進み、グレゴリウスまで遮るものは何もない！

だが、しかし、

「フン」

眼前に迫る聖王剣せいおうけんの一撃を、グレゴリウスは赤の斬撃で打ち消した。何もなかったかのようにミリオットのが消滅する。

「これは、異能の無効化……！」

圧倒的だった。まだ戦闘が始まってから僅かな時間しか経っていない。けれど、スパーダの四本が無力だと思い知らされた。

「やはりか。お前では完形の力を扱えない」

グレゴリウスは冷淡な態度で言う。

「終わりだ、剣島聖治。第一回、錬七剣神セブンスソードはここで潰える」

終わらせる気だ、次の一撃で。

「まずい！」

危機が一気に膨らむ。

グレゴリウスは赤の剣を消すと石臺に突き刺さっていた剣がき出した。それがグレゴリウスの手元まで飛んできたのだ。

その剣に聖治の目が釘付けになる。

それは、ただの剣だった。聖治の持つスパーダとは違う普通の剣。西洋の両手剣で逆十字架の形ように柄と刀のある、変哲ない、異能もない、ただの剣だった。

だけど、目で見て分かる、じてしまうのだ。

ただ真摯で、真っ直ぐで、純粋で、この剣が持つ輝きは騎士の譽れそのもの。幾多の年月を経ても褪せない、それは頂點に立つ最高の剣。剣の理想形。

剣聖けんせい、グレゴリウス・レウス・ギルバードの剣だと。