《錬七剣神(セブンスソード)》エピローグ

キーンコーンカーンコーン。

夕日に染まった教室にチャイムが鳴り響く。教室には生徒の姿は自分以外おらず、聖治は機に座り靜かな雰囲気が漂っていた。

七剣神セブンスソード。あれから、三か月が経っていた。

「もう誰もいないかな」

聖治は周囲を見渡し誰もいないことを確認する。席を立ち隣のクラスも確認する。誰もいない。

それで教室に戻ると、聖治は中央に立ち無人の教室へ呼びかけた。

「みんな、もう出てきていいぞ」

それは傍から見ればおかしなやつだと思われるだろう。みんなもなにもここには聖治以外だれもいないのだから。

だが。

どんな時でも聖治は一人じゃない。だから聖治の呼びかけにいくつもの聲が応えてくれた。

「本當に大丈夫? 抜けてないでしょうね?」

「大丈夫だよお姉ちゃん、聲しないよ?」

「へえ、ここが聖治君の教室かぁ」

聖治の目の前。そこに現れたのは此方こなたと日向ひなた、そして香織かおりさんだった。

此方こなたや日向ひなたは同じ中學校の制服で、香織かおりさんは聖治たと同じ高校の制服をしている。三人は亡くなったはずだがこうして生きていた。

七剣神セブンスソード。あの最悪な儀式で聖治は多くの仲間を失った。それは此方こなたや日向ひなた、香織かおりさんも同じ。

だけど、それは永遠の別れを意味するものではなかった。

その魂は聖治の中で生きており、剣霊の騎士団レギオン・オブ・スパーダの能力で一緒にいられることが出來たのだ。

にわかには信じられない話だが、聖治を含めて、今では普通に學校に通う生活もしている。

それというのも、グレゴリウスを倒してから聖治たちは水門みなと市を出て行った。あそこは魔卿まきょう騎士団の管理區だ。

自由を手にれるためにも聖治たちはあの町にはいられなかったのだ。行く宛もなく逃げ続け、遠くへと行けるところまで行ってみた。

しかし、そこは世界最大級の魔組織、魔卿まきょう騎士団。聖治たちの逃走など三日で終わってしまった。

逃走をする聖治たちの前に一人の男が現れた。魔卿まきょう騎士団と名乗られた瞬間警戒したが、その男はなんでも穏健派らしく、爭いを避けたいと言ってきたのだ。

男の話を聞けば、今、魔卿まきょう騎士団は危うい狀況に立たされているらしい。

それも當然であり団長は不在、新たな団長として錬七剣神セブンスソードを行ったものの反対派も多く、部分裂寸前だそうだ。

そこに『不完全な錬七剣神セブンスソードの生き殘り』など現れたら反対派が暗殺をしかけるのは目に見えている。

それを阻止しようと賛派と抗爭にでもなれば本末転倒だ。そんな事態を避けるため、その男はしばらくを隠してほしいと提案してきたのだ。

それが、今聖治たちが通う學校だった。學手続きなどは魔卿まきょう騎士団のコネで全員が今やここの生徒。

此方こなたや日向ひなたは付屬の中學校で香織かおりさんは一つ上の先輩として、聖治たちは一緒にいられることになったのだ。

そして今日を迎える。いろいろバタバタしてしまったが、今日はみんなの転校初日目だった。

「此方こなたや日向ひなたはどうだった、教室は。友達は作れそうか?」

「はい! 聖治さん!」

聖治からの質問に日向ひなたが小走りで近寄って來る。長い髪のツインテールをルンルンと揺らし、向けてくれるひまわりのような笑顔がとても可らしい。

そんならしい笑顔に聖治も小さな笑みを浮かべてしまう。

「ちょっと日向ひなた、近づき過ぎよ」

そこへ聖治と日向ひなたの間に此方こなたが割ってってきた。手を摑み日向ひなたを遠ざける。

「もう、なにするのよお姉ちゃん」

「ベタベタし過ぎ」

「そんなことないよ~」

此方こなたからの指摘に日向ひなたの丸い頬が膨らんでいる。そんな日向ひなたをお姉さんの此方こなたはムスッとした顔で注意していた。

此方こなたは過保護な気もするけれど、その景はなんとも仲睦まじい姉妹で見ていて和やかな気持ちになる。

と、聖治がそんな風に思っている時だった。

「そんな風に馴れ馴れしいに近寄られても迷がられるだけよ。ね、聖治?」

そう言って、此方こなたはそっと聖治の手を握ってきたのだ。

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