《錬七剣神(セブンスソード)》エピローグ1

咄嗟のことにどういうことか分からない。

「ふふふ」

う聖治を見て香織かおりさんが笑っている。聖治は困ってしまい、目の前では此方こなたと日向ひなたが言い爭いをしていた。

そんなやり取りをしていると扉がガラガラと音を立てて開いた。

「よう聖治、悪いな待たせちまって。力也りきやがノロいせいでよぉ~」

「ごめんね聖治君、待たせちゃって」

同じクラスメイトの、星都せいとと力也りきやだった。

「そんなことないさ。ちょうどみんな帰ったところだ」

生き返ったのは星都せいとも力也りきやも同じ。その事実に自然と笑みが零れる。

良かった。そう思う。全員こうして普通に暮らしている。それが今でも時々信じられなくなる。

聖治は安心するが、ただ、それも二人の荷の量を見るまでだった。

「……なあ、なんだその量は?」

「え、お菓子」

「多過ぎだろぉおおお!?」

星都せいとの両手にはお菓子がぱんぱんにったビニール袋がぶら下がっていた。力也りきやに至ってはいくつも持っててビニール袋のブドウみたいになっている。

「ごめんね聖治君、僕も多過ぎるって注意したんだけどぉ……」

「いや、力也りきやはいい。どうするつもりなんだ星都せいと、こんなに食べきれないぞ?」

聖治はとりあえず力也から一部ビニール袋をけ取ると機に置いていく。

「くそ、重い……」

二リットルジュースが何本もっている。

「おい星都せいと、これ、ほんとにシャレにならない量だぞ」

聖治はなんとか力也りきやの分を全部機に並べ終えるが、それだけでかなり疲れた気がする。それで星都せいとだが聖治の指摘が不満なのかご機嫌斜めだ。

「なんだよ!? せっかくの記念だから盛り上げようとたくさん買ってきたんだぜ!? それに、『今回は前よりも人數が多いじゃねえか』」

星都せいとの言い分は尤もだ。星都せいとも星都せいとなりに考えた結果なのだろう。だけど。

「そう言ってくれるのは嬉しいが…………。だが、本當か?」

「本當だ!」

「噓だ」

「噓なんだなぁ~」

「私も噓だと思う」

「あんた、信用ないわね」

「星都せいとさん、なんだかかわいそうです……」

「みんな友達だと思っていたのにぃいいいい!」

全員から否定され、悔しそうにんでいた。

「ふ、ふふ、はははは!」

そんな景に、聖治は笑っていた。なんだかおかしくて。もしくは幸せだろうか。

あの時と同じ。これはそう、錬七剣神セブンスソードが始まる前。聖治の歓迎會の続きなんだと、そうじていたから。

新しい生活がここから始まる。それが嬉しくて。そして見渡せば笑っているのは聖治だけではなかった。みんな笑っていたんだ。

「じゃあ、みんなで準備しようか。俺たちの新生活のお祝いを」

聖治からの聲かけに一同頷いて作業に取り掛かる。機を合わせ、紙皿や紙コップを並べ、お菓子とジュースをセットして。各自適當に席に座って。

「それじゃいいか?」

聖治はジュースのった紙コップを持ち上げる。機の真ん中には三年分の景品でも當たったかのようなお菓子の山。そして周りには聖治と同じように紙コップを持ち上げるみんながいる。

「なあ、みんな」

聖治はそんな皆を見渡して、乾杯の前に口にしていた。「ん?」とみんなからの視線が集まる。

「俺たちの出會いは、決していいものじゃなかった。敵として出會って、時には戦って。あの殘酷な狀況で俺たちは出會った。もしかしたら、俺たちは出會わない方が幸せだったのかもしれない。だけど、思うんだ」

振り返る過去。そこにあるのは恐怖と罪悪、戦慄。いいことなんて一つない。苦しみ、悲しみ、聖治たちは、あの地獄で出會ったのだ。

だが、

しかし、

だとしても。

聖治は、笑顔でこう言える。

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