《バミューダ・トリガー》三十八幕 攻防の末
「キヒヒヒ!次から次へト結構なことだガ・・・防いでいルだけデ、私に勝てるとでモ?」
自己紹介の際にエイプリルは、自らを「蕓者」擔當であると語っていた。
そして今エイプリルは、その名に恥じぬ軽やかな連撃をもって鈴に攻撃を仕掛けている。
「はぁ、はぁ、うるさいわね!必殺の一撃をうつには、それなりの準備が必要なのよ!」
売り言葉に買い言葉、息をつく間もない攻防の最中、鈴とエイプリルは同時並行で口論を続けていた。
一見、その攻防は互角に押し進められているかのようにもみえる。しかし、攻撃の手だてを持たない鈴がしずつ押されてきていた。
「くそっ、このままじゃ鈴が押しきられる・・・なんとかこいつを解かねぇと・・・!」
徐々に疲労を見せ始める鈴を橫目に、人はガッチリと摑まれた四肢に力をれる。だが、平均程度の筋力しか持ち合わせていない人がいくらもがいたところで、エイプリルの能力を解くことができるはずもない。
それどころか、力をれる度に拘束は強まっているかのように思えた。
(たちが悪過ぎるだろこんなの・・・!!)
連撃に次ぐ連撃。
視界を遮るほどの砂埃が立ち込め、奇跡的にも正確にエイプリルの攻撃を捌いていた鈴の能力制に綻びが生まれる。
「そこだネ!」
「うぐっ」
一歩間違えると鈴が展開した瓦礫の塊に己の手を打ち付けかねない危険な賭けに出たエイプリルに、しかし戦いの神は微笑んだ。
威力重視の攻撃の中にえた、隙をつくための速度重視の一撃。
その、手刀による正確な刺突が、鈴の肩口を捉える。
「キッヒヒッ!」
「っ?!鈴!!」
その一撃を皮切りに、形勢が一気に傾いた。
痛みからか、恐怖からか、エイプリルの攻撃を華麗に捌いていた鈴の手元が狂い始めたからだ。
「キッヒヒヒヒヒヒッ!!」
「ぐっ、この・・・痛つっ!くっ・・・うあっ!?」
打撃の雨で瓦礫を砕き、生まれた綻びに素早い一撃をり込ませる。
ここに來て積み重ねられた戦闘経験がものを言い、エイプリルの連撃に鈴は対応できていない。
初めに淺く刻まれた傷は徐々に削られ、次第に深くなりはじめる。
攻防の最中に、が、散り始めた。
「削れロ、削れロ!!そして、散レ!!」
指先に鈴のを滲ませながら、エイプリルは嬉々として嗤う。
殘酷に、殘忍に。
自分はただ、これまで通りに仕事をしているだけだとでも言いたげに。
「耐えてくれ!鈴ーっ!!!」
何も出來ないまま、なんの助け船も出せないままに無力に嘆く人の聲は、一切の打開策になり得ない。
「もウ、ダメみたいだネ??」
エイプリルが鈴を挑発して―
完全に破砕した瓦礫のなかで、幾度もに傷を刻まれた続けた鈴が膝を屈した。
両手を正面に構え、エイプリルの青い髪留めが輝いた。
―「呪衝撃インパクト」の構えである。
膝をついた鈴は、顔を伏せたまましもかない。
「やめろ!狙いは俺だったんじゃねぇのか!!」
「そんな事ハ関係ないネ!邪魔をした罰ダ!・・・いや、遊んでくれタ、ご褒かナ?キヒヒヒヒヒィッ!」
人が発した、すがり付く子供の悪あがきのような一言を、エイプリルは殘な言葉の刃で絶ちきる。
「ねぇ、神河・・・・・・ホントごめん、負けたわ」
鈴が、震えながらゆっくりと顔を上げた。
涙で濡れた、くしゃくしゃの顔で謝った。
そして、ここまでの戦を繰り広げたにも関わらず、自分の無力さを自嘲するように、笑った。
「鈴ぅううっっ!!!!」
馬鹿な。こんなことは間違っている。
鈴は、俺を助けるために力を貸してくれる約束だったはずだ。
それがどうして、俺は安全圏で捕まってるだけで、鈴が一方的に殺されなくてはならない。
どうしてこんなときに、俺は何もできない。
何が「武消去能力」だ。
異能力が産み出した「腕」は、「武」ではないとでもいうのか。
いや、そんなはずはない。
だってあのとき、明日香の家で―――――
「キヒヒヒ!」
人の思考が、心底楽しんでいるエイプリルの笑い聲に止められた。
「消えロ。呪衝撃インパクト!!」
今や鈴を殺す事しか考えていないエイプリルが、殘忍な笑みを顔に張り付けたまま両腕をつきだして―
―――「風読かざよみ」―――
剎那。
鈴のを吹き飛ばすはずであったエイプリルの両腕が、突然背後から拘束された。
エイプリルの笑い聲に引かれて食いるように場を見つめていた人でさえも気づかない程、流れるように、るような駿足で現れた人の親友・・が、靜かにそのに宿した能力の名を呟く。
「オマエ、ハ・・・?」
「っ、翔斗!!」
「わりぃ人、待たせたな。・・・よう、。友を傷つけるヤツに、俺は一切手加減しねぇぞ?」
「ッ?!」
底冷えするように冷たく、鋭い視線をエイプリルに突きつけた翔斗が、エイプリルの右腕を両手で摑み、素早い捌きで投げの姿勢にる。
「黒絹流、一本背負い!!」
(・・・こいつハ、怪校生なのカ!?クッ、攻撃系ノ能力、だネ・・・!強化ヲ、全の防ニ・・・)
この狀況でさえ、場數を踏んでいるエイプリルの判斷は早く、正しい。
地力の強い翔斗の素早い一撃から強引に逃れることよりも、來る衝撃で戦闘不能に陥る事を防ぐために防に徹する。
「・・・派生!!!我流がりゅう一本背負い・「烏蛇カラスヘビ」っ!!!」
ドゴォッ!!
瞬間、警察署の駐車場に散らばった瓦礫が、叩きつけられたエイプリルから生まれる風圧の余力で飛散した。
「ゴ、ガッ?!」
一撃。
全ての強化能力を防に振る事で完したエイプリルの裝甲。だが、大きくしなった翔斗の初撃・・により自慢の防の能はあっさりと抉りえぐり取られた。
エイプリルのに、衝撃が屆く。
ズザァァァッ!
「ァ、??」
続いて二撃。
大きく弧を描いた一撃目の著地點から、相手を無理矢理橫に引きずる追撃。
それはすでに、「一本背負い」という文字でまとめられる領域を超過していた。
己の、絶対的自信をもった防をあっさりと破られたエイプリルは、放心狀態のままに瓦礫を薙ぎ散らす。
「ブッ飛べぇぇぇえ!!」
そして、三撃。
翔斗はその豪腕をもって、かろうじて意識だけは保っているエイプリルを、垂直に空へと投げ飛ばす。
エイプリルを襲った浮遊。
しかし、その覚にエイプリルが気づいた頃にはすでに、自由落下が開始していた。
「ア・・・」
ズゴォオン!!
落下の衝撃で全ての防を貫かれたエイプリルは、なすすべなく叩きつけられ、仰け反るように跳ねた。
烏蛇カラスヘビの名を持つ三連撃。
黒く輝くネックレスのを纏った翔斗の軌道は、大膽に獰猛に、獲に飛びかかる黒蛇の如く!!
―――――――――――――――――――――――――
許容量を大幅に越えたダメージにより沈黙したエイプリル。
それと同時に異形の腕から解放された人は、恐らくはその能力故にどうにか一命をとりとめていたエイプリルから、三の髪留めを沒収した。
「人くん・・・」
己の無力さに歯を食い縛る人に向けて、いつの間にか合流していた諒太が、同じく戦闘に參加することが出來なかった同を込めて呟いた。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
8 111転生王子は何をする?
女性に全く縁がなく、とある趣味をこじらせた主人公。そんな彼は転生し、いったい何を成すのだろうか? ただ今連載中の、『外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜』も併せて、よろしくお願いします。
8 128異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
”魅了”、それは相手に魔力を流し込み、強制的に虜にする力。 酷いいじめを受けていた女子高校生の千草は、地獄のような世界に別れを告げるため、衝動的に自殺した。しかし瀕死の吸血鬼と出會い、命を分け合うことで生き延びる。人外となった千草は、吸血鬼の力を使って出會った少女たちを魅了し、虜にし、血を吸うことで同じ半吸血鬼に変えていく。 何も持たず、全てを奪われてきた少女は、吸血鬼として異世界に生まれ変わり、ただ欲望のままに王國の全てを手に入れていくのだった。 異世界を舞臺にした、吸血少女によるエロティックゴアファンタジー。 ※出て來る男キャラはほぼ全員が凄慘に死にます、女キャラはほぼ全員が墮ちます
8 125Re:legend
いつも通りの生活をしていた主人公涼宮竜何故かしらんが変なやつらに異世界に召喚されたあげくわけのわからないことに付き合わされる… 何故召喚されたのが僕だったんだろう… 感想等お待ちしてます。書いてくださると嬉しいです。
8 57S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、女神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜
ノベルバのランキング最高10位! 『ラック』というS級幸運の能力値を持った青年ネロは突如、自分のことしか考えていない最強のS級パーティ『漆黒の翼』からの戦力外通報を告げられ、叩き出されてしまう。 そんなネロは偶然にも腹を空かした赤髪の女神(幼女)と出會う。彼女を助けたことによりお禮に能力値を底上げされる。『女神の加護』と『幸運値最強』のネロは授けられた贈り物、女神とともに最強を目指す旅へとーー!! 勇者の妹より先に「魔王」の首を狙うハイファンタジー。 ※第2章辺りから急展開です。
8 177量産型ヤンデレが量産されました
朝起きたら妹の様子が超変だった。 不審に思いつつ學校に行ったらクラスメイトの様子が少し変だった。 そのクラスメイトから告白されて頼み事された。 俺は逃げた。 現在1-13話を改稿しようとしてます 文章のノリは14話以降が標準になるのでブクマ登録するかの判斷は14話以降を參考にしていただけるとありがたいです。 現在1-3話を改稿しました
8 176