《バミューダ・トリガー》四十一幕 裝
選抜大會を終え、今回の不審者調査に選出された一雙 頼矢いっそう らいや・加賀 秋仁かが しゅうじ・稲丸 影近いなどうまる かげちかの三人は、商店街周辺の市街地へと赴おもむいていた。
春も終わりに近づき、日が沈む時間帯がぐっと後になってきた今日この頃。
だが、町に吹く風はまだ涼しく、晝の暑さを払拭するように怪校生たちのをでては過ぎていく。
「チッ、今さらだが、マジで俺も選ばれたのかよ」
商店街へとまっすぐ進む道中、秋仁が肩を落として呟いた。
「良いじゃないか、秋仁くん。ボクは、なかなか流の機會のない二人と組めて、心悪い気はしていないよ?」
げんなりとする秋仁とは対照的に、影近は唯一の子でありながらもこの狀況をむしろ楽しんでいる様子である。
「俺よりやる気あった、神河や黒絹に任せたら良かったと思うんだがな」
「こうなったんだから仕方ねぇだろ。むしろ、大役任されたんだから喜べ」
「一雙、お前実はヒーロー気質あるだろ」
なおも愚癡を続けた秋仁に、今度は半歩前を行く頼矢が口を出した。
何気なく繰り広げられている話だが、しかし、どこかお互いに信頼を寄せていることが伝わって來る。
ない人數で特殊な狀況下にいるのだから、自然に互いに信頼が芽生えても當然と言えば當然なのかも知れないが。
「お?もうそろそろ著くね」
そう言って足を止める影近の視線の先、夕暮れ時でも晝間と変わらずほぼ全店開店中の商店街が、今日も霊峰町民を集わせていた。
「はぁ、來たのは良いが、當の不審者をどう探す?あからさまに変なヤツが歩いてるようには見えないが・・・」
「鷲頭わしずと骸木むくろぎからの報以外はからっきしだ。しばらく張り込んでみるのが妥當だろ。人そのものを見ずとも違和をじるほどのヤツらしいし、それらしいヤツが居たら気づけるはずだ」
「ボクも、ひとまずはそれで良いと思うよ」
頼矢の提案が採用され、不審者調査の一行は商店街を正面から見通せる位置に陣取り、不審者が現れるまで監視をすることにした。
―――――――――――――――――――――――――
「なあ・・・俺は、本當に今日も商店街に行かなくちゃならねぇのか?」
霊峰町の東區。
真新しい鉄筋コンクリートの建の中、切れ目が印象的な一人の青年が心底憂鬱そうに呟いた。
彼の周りには同級生の男が、男子一人、子二人の計三人で佇んでいる。
「まー、なんだ、仕方ないだろ。諦めるんだな」
「言い出しっぺは痛い目を見るって、相場を知らにゃいの?」
「私たちも條件は同じだった。誠意を見せて」
三者三様の言葉だが、その幹にある大筋は統一されていた。
質問に対する、肯定だ。
「マジか・・・そろそろ警察に捕まりそうで気が気じゃないぜ。それに、西區にはあいつらも・・・」
「ぷっふー!確かに、あっちのみんにゃに見つかったら白い目で見られそうだよねぇー!」
未だに懲りずに、ぎこちなくスカートを履きながらぼやいた青年に、貓目のが追い打ちをかける。
「まー、そもそもお使いごときに躍起になったお前に非がある」
「も涙もねぇな!」
「も涙も、流すところじゃないと思う」
「はぁあ・・・」
最後は冷靜に締め括られ、若草のブラウスとのパーカー、淡いピンクのスカートをにつけた青年が、活拠點である建の扉を重々しく開く。
「あっ!蓮くん!忘れだよーん」
「げっ」
拠點を後にする直前、手渡されたモノ・・を、蓮と呼ばれた青年・・・元怪校生・高校生三年部の龍王 蓮鎖りゅうおう れんさは顔を青くして渋々け取る。
茶のロングヘアーのかつらを著けて完全に裝をした青年が、夕方の町にくり出した。
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