「ごちそうさまでした！」

 出発してから10分程で柑菜の手作り弁當を完食した炎。炎の顔には満足気な顔が映っていた。

 両手を合わせ合掌を済ませた炎は空になったタッパーを風呂敷に包み、そのまま鞄の中にれた。

 「ふう」

 炎はお腹をりながら一息つくと自分が座っているシートを斜め後ろに傾け出した。

 (著くまでまだまだ時間がありそうだな。し仮眠でもとっておくか)

 炎は自分の背中をゆっくりと傾けたシートにくっつけた。そしてゆっくりと目蓋を閉じていった。しでも力を溫存させる為、仮眠をとることにしたのだった。

 小刻みに揺れる車が思いの外居心地良く炎はものの數分で深い眠りへとついた。

 「--、炎！」

 (誰だ？………やっぱり思い出せない)

 ここ最近見なくなっていた夢を久しぶりに見ている炎。何度思い返そうとしても思い出せない。姿も薄っすらとした人影だけしか見えない。ひょっとすると記憶を失う以前に會っているのかもしれない。

 「炎、炎！」

 炎の名前を繰り返し呼び続ける彼に返事を返そうとしてみるが聲が出せない。

 夢の中とはいえ彼が何者なのかだけでも知りたかった。きっと記憶を取り戻す鍵になるはずだと炎は直的にそう思った。

 しかし水面に波紋が浮かぶように彼の姿が波打つように消えていく。

 (頼む！待ってくれ！！)

 炎は一杯手をばしてみるが彼の姿以外何も見えない。まるで深淵の闇に包み込まれているかのようだった。そのせいで自分の手がびているのかも分からない。

 「ッ！？」

 すると彼の姿が真っ暗闇の中に消えた瞬間だった。一瞬にして景が変わりだしたのだ。

 さっきまでの自のさえ見えない程の暗闇と打って変わって燃え盛るような紅の空が炎の目に飛び込んできた。

 上空は星空が輝き出しているのにも関わらず空はとても明るかった。その理由は明らかだった。

 地上を見ると燃え盛る炎が引っ張られているかのように上へ上へと上がっていた。その周りには黒煙があちらこちらに上がっていた。

 (この景、どこかで見たことあるぞ！)

 炎はその景を見てそうじた。夢だというのにに突き刺さる熱気や煙の匂いが妙にリアルにじていたからだ。まるで過去にあったかのようなリアルさだった。

 (！？あそこに誰かいるぞ！？)

 炎の視線は燃え盛る炎を見ていた。すると炎の中から誰かが出てくるのが見えた。

 (誰なんだあれは？)

 炎はその人影をジッと見続けていた。だが遠すぎるせいか黒い影だけしか見えなかった。しかし黒い影はしずつ炎の方に近づいてきていた。そして一瞬の出來事だった。

 『全ては貴様が引き起こしたこと。だが謝するぞ炎』

 (！？)

 気づいた時にはもう遅かった。遠くに見えていた影は姿を消したかと思うと後ろの方から男の聲がした。聲が聞こえたのとほぼ同時に炎のは黒い細剣のようなもので貫かれていた。それまでにかかった時間は瞬き1回分程の速さだった。

 『もう貴様は用済みだ！ゆっくりと常しえの闇に眠るがいい』

 炎はぶことも抵抗することもなく倒れたのだった。