「しゃあいくぞ！！」

 「！？」

 掛け聲と同時に鬼平は後ろから何かを手に取った。鬼平が手に取ったものは5メートルぐらいはあるであろう筒狀になった木の棒だった。

 「どうした！？ださねーのか？アンタの能力をよー」

 鬼平は木の棒を肩にかけながら炎の様子を伺うが炎は呆然と立ち盡くしていた。

 そんな炎の脳は様々な考えを巡らせていた。

 鬼平が持っている武は大きな木の棒。筒狀にはなっているが釘や刃のようなものは付いてはいなかった。

 更に思い返してみると今回の事件の被害者のほとんどに打撃痕があった。

 もちろん素手で毆られた痕や蹴られた痕も多數みられたらしいが重傷者や死亡者には必ず打撃痕があった。

 志村から教えられたことを思い返した炎は一つだけ疑問に思うことがあった。

 (打撃痕の理由は分かったが果たしてアレだけで人を殺せるものなのか？)

 殺傷力0の木の棒を一振りしただけで人を殺せるものだろうか？炎はそのことに違和をじていた。

 「おらっ！！」

 「！？」

 炎が考え込んでいた時だった。鬼平からの大振りな一撃が炎を襲ってきた。

 ギリギリのところで回避する炎だったがただそれだけではなかった。

 「なっ！？」

 鬼平の一撃は地面を叩きつけた。その瞬間激しく地面が割れる音と割れた際に飛び散るコンクリートの破片の一部が炎に向かって飛んできた。

 (なんて馬鹿力だ！豪鬼さん程じゃないけどリーチもあるから迂闊に近づけねーな！)

 鬼平の恐るべき怪力を目の當たりにした炎は1人納得した。木の棒は大2、30キロはあるだろうしそのうえそれを片腕で軽々と振り回す程の鬼平の腕力。

 普通の人間がそんなものを一発でも喰らってしまえばひとたまりもない。重傷者や死亡者はその攻撃をけてしまいああなってしまったのだと。

 「へっ。反神経は良さそうだけど今のは頭にってなかったみてーだな！」

 鬼平は余裕そうな表で喋り始めた。

 「おいおい、コレでもまだ使わないつもりかい？」

 更に挑発をする鬼平だが炎は能力を出そうとはしなかった。

 「何で使わねー！？まだ使うには事足りねーってか！？おお！？」

 さっきまでとは違い聲と表に苛立ちをじる鬼平。だがそれでも炎は能力を使おうとせず拳を握りしめ片腳を前に出して戦う勢を整えるだけだった。

 炎が頑かたくなに能力を使わないのにはハッキリとした理由があった。