「鬼！？」

 鬼太郎は真っ先に鬼の方に視線が移った。鬼は先程から鬼余彥を押さえつけている為、きが取れずにいた。それは今も変わらずの狀態だった。

 「お前達は先に行け！後で合流する！」

 すると鬼が鬼太郎達に向かい指示を出した。鬼太郎は鬼の狂気たる目を真顔で見つめた。鬼の目を見ていると何となく彼の意思が伝わってくるような気がした。

 今鬼余彥を離してしまうと更に狀況が悪くなってしまう。だから『自分が押さえつけている間にここから逃げろ！』と訴えかけているのだった。

 「分かった。後で必ず合流しよう！」

 「おう」

 鬼太郎は鬼の気持ちを汲み取ると鬼と約束を取り付けた。鬼は微笑して了承した。鬼の表を見終えると視線を目の前にいる敵に移した。

 「だけどどうします！？周りは敵だらけですよ！？」

 「それなら問題は無い。考えはある」

 そんな中賛同派の1人が不安な顔をして鬼太郎に問いかけてきた。しかし鬼太郎は慌てる様子を見せなかった。彼にはちゃんと考えが既に浮かんでいたからだ。だが鬼太郎がくよりも先に反対派にいた元賛同派の男達が立ち上がった。

 「それなら俺達に任せておけ！もう自分に噓を付くのはこりごりだ！もう覚悟は決めてる！一緒に戦うぞ！！」

 「ああ。頼む！」

 元賛同派の男達の提案にアッサリと了承する鬼太郎。何故なら彼も同じ事を考えていたからだ。

 一度裏切られたとはいえ彼等の屈強なによる力技を使えば突破口を開くには充分だ。

 「今から強行突破に出る！彼等に続くぞー！」

 鬼太郎は賛同派の人達を鼓舞させるように大聲で指示を出した。皆はそれを聞き周りにある棒きれを持ち出した。

 「っしゃーー！いくぞーーー！！」

 そして元賛同派の男達を先頭に南の方に下りるように敵に突進していった。

 「うおおーーー！！」

 「奴等を止めろーー！！」

 敵の數は賛同派(元も含めて)倍以上いるが周囲に張り巡らせるように配置されている為、一ヶ所だけには2、3人程しか配置されておらず周囲の敵も囲むように追いかけるがそれよりも先に南の敵と戦し始めた。

 「どけーー！！」

 1人1人の戦闘力はほぼ互角だがそこを數の暴力で押し切る賛同派。アッサリと敵を吹っ飛ばし山を下って行った。

 「クソー！絶対に逃がすなー！」

 反対派の連中は眼になるように追いかけてきた。そんな中鬼太郎はふと後ろを振り返るが鬼の姿は視界に捉えることが出來ず不安を抱きながらも皆と一緒に山を下って行った。