《BLOOD HERO'S》episode5 #33「多原の思

 「おっと」

 鬼余彥の渾の一撃はひらりと回避された。だが鬼余彥の勢いは止まらずラッシュをしかけた。

 「何か誤解を招くような言い方をしてしまいましたか。ならし弁解の余地がしいのですが」

 多原は鬼余彥の怒濤のラッシュもあっさりと避けながら弁解の余地を求めた。當然、鬼余彥には聞こえてはいなかった。

 (當たらねー!何モンだこの人間!?)

 ラッシュをもともせず落ち著いた口調で喋る多原。鬼余彥にとってここまで相手に舐められるような屈辱的態度を取られたのは初めての経験だった。

 「シネ!シネ!!シネー!!!」

 その上今まで侮っていた人間に舐められている事が何よりも許せなかった。罵倒しながら攻撃を止めない鬼余彥は自らをい立たせていた。その原力は自分自のプライドにあった。『人間如きに劣っている訳が無い!』と心の中に言い聞かせ続けた。

 『人間なんぞ鬼より劣っている種族とは関わる価値も無い!イイか鬼余彥!人間なんぞと馴れ初めなぞするな!』

 鬼余彥は小さい頃から鬼に口すっぱく聞かされていた言葉だ。その時から鬼余彥は『人間は鬼より劣っている種族』だと頭の中に深く刻まれていた。

 「オラア!オラア!!オラア!!!」

 気づくと鬼余彥の攻撃スピードは最初のラッシュの時よりかなり遅くなっていた。拳には力がらずフラフラと山なりのスローボール並の速度で毆りかかっていく。無論多原には屆いてはいなかった。

 「ハア…ハア…ハア…」

 とうとう力盡きた鬼余彥は息切れを起こし膝に手をついていた。全から汗が吹き出て更に力が奪われていた。

 「…鬼余彥」

 鬼はただただその様子を見ることしか出來なかった。割ってっても邪魔になるだけだと思ったからだ。

 「ようやくお話出來そうですね」

 すると多原はやれやれと言わんばかりの表で話を再開した。そんな彼は一つも汗をかいてはいなかった。

 「先程『付いて來て貰う』と言ってしまいましたが本當は『協力して貰う為に來てしい』と言いたかっただけなんです!」

 多原の発言に鬼は違和じていた。まるでさっきの発言は鬼余彥を煽る為の演出だと言わんばかりの言い直しようだった。

 「協力ってわざわざ俺達にかー?第一俺達が協力してくれるとでも思ってたのか?」

 違和を覚えながらも鬼は多原に疑問を投げかけた。何故鬼である彼等に協力を求めるのか?それに協力してくれると本気で思っていたのだろうか?しかし鬼の軽卒な発言は彼等の考えを変える一手になってしまうのである。

 「ええ。あなた達なら協力してくれますよ。…今にきっとね」

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