《BLOOD HERO'S》episode5 #44「敗者の代償」

 ---決著は思いの外早くついた。

 「がっ…」

 反吐を吐き家から10メートル程離れた場所に突っ伏していた。

 「ハア…ア…ア…」

 激痛のせいか思考がうまくまとまらなかった。イヤ、目の前で直接見せられても理解出來なかったものを思考をまとめても理解出來ない。

 「最初は驚かせられましたがアレは単なる火事場の馬鹿力と言ったやつですかね?」

 勝負に勝ったのは多原。傷一つというか最初にお互いの拳がぶつかった時の小さな痣さえ出來ていなかった。

 (あの時、何か異変が起きた!?)

 微かに蘇る記憶。鬼吾郎と多原の拳はぶつかり合った。その時だった。多原の毆った拳から赤いのようなものが多原のその拳をカバーするかのように現れたのだ。

 「ッ!?」

 奇妙な景に呆然としてしまう鬼吾郎。

 「ふんっ!!」

 呆然としている鬼吾郎をよそに多原はもう片方の拳を振りかぶっていた。その拳には先程のらしきものが固化し籠手のようなものに変化していた。

 武裝した多原の一撃は鬼吾郎の腹部をえぐるようにった。先端にある無數のトゲが鬼吾郎の腹に突き刺さる。

 そして多原は鬼吾郎ごと拳を振り抜いた。鬼吾郎は何も出來ないまま吹き飛ばされたのだった。

 ---「アッ…グッ…」

 激痛と息苦しさでまともに言葉が出てこない鬼吾郎。

 「ハア、足りなさはありますがこれで決著ということで」

 (ま、待ってくれ!俺はまだ…)

 鬼吾郎は必死に立ち上がろうとするが全に力がらずくことが出來なかった。聲を出そうにも力が出ないせいで聲が出ない。

 「無論先程言ったことを覚えていますよね?」

 「アッ…アッ…」

 (やめてくれ!お願いだからそれだけは…)

 鬼吾郎は懇願の思いを口に出そうとするが出るのはき聲だけだった。

 「これは君への罰ですよ。君が弱いからこうなってしまうんですよ。鍛錬を積むこともなく強くなろうという気概もない。それでどうやって守る事が出來るんですか?」

 多原は自論を語りながら壊れた壁をまたぎ外に出て來た。それに続くように外に出る鬼と鬼余彥。

 「人は強い憎しみを持たない限り進化出來ません。君が私を憎いと思うなら進化してみてください。誰にも負けない強い力を手にれてみてください」

 そう言うと多原は壁に向かって軽く小突いた。

 「これで私の役目は終わりです。引き上げましょう」

 多原が小突くと半壊している為、耐久が無く家全が軽く揺れだした。そしてその揺れにより家の天井が崩れ落ちてきた。

 「アッ…アッ…」

 鬼吾郎はただ涙を流して崩れ落ちていく様を見ている事しか出來なかった。

 無論そこには鬼太郎達が倒れていたままだった。

 そして多原達は家が崩壊していくとほぼ同時に倒れている鬼吾郎をよそ目に橫を通り過ぎていった。

 ---鬼吾郎は1人崩壊し終えた家を暫く見続けていたのだった。

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