---「何でいつもアンタはこうなっちゃうんだか！」

 「…すいません…」

 八天翔唯一の病院の病室の一室で靜かに怒りを燃やす柑菜。そしてその病室のベットの上で正座する炎。

 ---気絶した2人は數時間後に発見されそのまま急搬送された。かなり重傷を負っていたものの人並外れた回復力で一命は取り留めた。そして炎は特別に個室に移送された。

 それから更に數時間後、炎の病室に柑菜が訪問して來た。そして現在の形に至っている。

 「まだ3日よ！みっ・か！！アンタの殘業を私が代わりにやらなくっちゃいけないのよ！」

 「…はい…」

 柑菜から一方的に説教をくらう炎。本來は1週間滯在して暫く様子を見るまでが遠征の目的なのだがここに來てまだ3日しか経っていなかった。そこで炎の代理に柑菜が派遣されたのである。

 「全く。…心配かけさせないでよね」

 「え？今なんて？」

 「な、何でもない！」

 さっきまで怒りを燃やしていた柑菜だったが急変したかのように頰を赤らめにし小聲になった。小聲で聞き取れなかった炎が聞き返すと柑菜は頰を更に赤らめそっぽを向いた。

 「とりあえず後の事は私がやっとくからアンタは終わるまでに完治させておきなさい！いい！？」

 「はい…」

 そっぽを向いていた柑菜は炎を指差し難題を課してきた。醫者からは完治するまで1週間はかかると言われていたからだ。しかし炎は柑菜の機嫌を損ねないように渋々首を縦に振った。

 「じゃあ私、近辺の調査してくるからくれぐれもに響くような事しないように」

 「あ、ちょっと待ってくれ柑菜！」

 「んん？」

 柑菜が病室を出ようとした時、炎が呼び止めてきた。呼び止められると病室の扉の前で炎の方に振り向く柑菜。

 「あいつ、鬼吾郎はどうなったんだ？」

 炎はどうしても聞きたかった事を柑菜に聞いてみた。炎の時とは違い彼は人を殺めている。ただでさえ能力者は危険視されている存在。彼の過去を知っている炎はどうしてもその事を知りたったのだ。

 「鬼吾郎？ああ、アンタにやられたヤツ？そいつならもう監察署の連中に引き渡されてるわよ。本來なら死刑もあり得るけど、どういう訳か監察署にそのまま保護するらしいわ。まあ暫くはアンタと同じく療養生活でしょうけど」

 「…そっか…」

 柑菜の言葉を聞いて安堵の表を浮かべる炎。監察署送りとはいえ命あるだけでも良かったと安心しているのだった。

 鬼吾郎のした事は決して許される事ではないが彼が処刑されるのも何か違う気がした。1番許し難い人がまだいるのだと思うと。

 「あと多原さんはどこにいるか知ってるか？」

 1番許し難い人、それは間違いなく多原である。彼の家族を殺し彼の人生を狂わせてしまったあの男を。

 「多原？その人って依頼人の人？さあ？なくとも私は會ってないわよ」

 「そっか」

 柑菜の言葉を聞いて今度は難しい表に変わった。おそらく多原とは會う事は無いかもしれない。會うとすればその時は対峙する時かもしれない。

 「もういい？報告とかもしないといけないから仕事戻りたいんだけど」

 「あ、ああ。ありがとう柑菜」

 「…フン」

 々教えてくれた柑菜に炎が謝の言葉を述べた。しかし柑菜は不機嫌そうな表をしたまま病室を出て行った。

 柑菜が出て行った病室は再び靜寂な空間になっているのだった。