《BLOOD HERO'S》episode5 #51「帰還」

 ---「すいません。わざわざ見送りまで」

 あまり活気のない駅の改札口で炎と柑菜、そして神楽の3人が話しをしていた。

 「いいんですよ。どうせ暇ですし」

 神楽は笑いながら冗談っぽく言うがホテルには今宿泊している者も予定客もいない。本當に時間を持て余しているのだ。

 それに炎もホテルには一泊しかしていない。殘りの日にちは全て病院での療養生活だったからだ。

 「はい。これよかったら電車で食べてください」

 神楽はスッと炎に風呂敷を差し出してきた。風呂敷を手に取ってみると思いの外重くじた。

 「ごめんなさいね。あんまり時間なくて大したもの作れなかったんだけど」

 「いえいえ、ありがとうございます」

 神楽は申し訳なさそうな顔をしているが炎にはここまでして貰った神楽に謝しかなかった。

 「とりあえず玉子焼きとかハンバーグとかピーマンの詰めとかあと酢のとかポテトサラダとかあとおにぎりだと塩とか味噌とか10種類ぐらいしか作れなかったのよねー」

 「………」「………」

 (この人、一この弁當作んのに何時間かけたんだ?)

 炎と柑菜はただただ唖然とした。炎はふと風呂敷をよくってみると重箱が5段ぐらい重なっている事に気がついた。最早この量は2人で食いきれるものではないとじていた。

 「やっぱり若い子はこのくらいの量じゃ足りないかしら?」

 「い、いえ。大丈夫です!ちょうどいいぐらいです!」

 「味しくいただきますね!」

 沈黙していたせいで神楽が心配そうに2人を見る。思わず慌てて炎と柑菜は神楽を説得した。そんな2人の背中は冷や汗をかいていた。

 「あっ、そろそろ電車來る頃ね。早く行かなきゃ!」

 「そ、そうだな」

 このままでは神楽が売店で食料を調達してきそうだと思い柑菜は話しを逸らした。ちょうど電車も到著した所だった。それに乗じてホームに向かおうとする炎と柑菜。

 「ふふ、またいらしてください。お二人でいらしてくれれば特別なお部屋ご用意しますよ」

 「ち、違いますよ!そういうのじゃないですから!!」

 「??」

 ホームに向かおうとする2人に聲をかける神楽。冗談混じりの発言を柑菜は間にけ顔を赤くしながら誤解を解こうとするが炎には何の話しているのか分からなかった。

 ---「ハア…」

 「?柑菜、どうかしたのか?」

 「な、何でもないわよ!」

 柑菜は車で小さくため息をついた。電車に乗っても柑菜の顔は赤くなっておりむしろ炎と隣に座っているせいで余計赤くなっている。しかし炎は一向に気づかなかった。

 「それにしてもようやく終わったな」

 「後仕事は全部、私に回ってきたけどね!」

 電車はまだ発車しない中、炎から話を持ちかけてきた。しかし炎の発言に皮混じりに返す柑菜。

 ---電車のドアが閉まるとゆっくりとき始めた。炎はふとホームの方に目を移した。

 「………」

 その時、1人の男がこちらを見ているような気がした。電車に乗っているから視線を集める事はあるだろうが男は明らかに炎を見ていた。

 気になった炎はその男に目がいった。そして2人の視線が合った。

 その瞬間、時が止まったかのように電車が止まった。いや、電車だけではない。そばにいる柑菜も他の乗客も何もかもが止まっていた。

 止まった時間の中で見つめ合う2人。まるで好きだったの子を久しぶりに見たような。いや、親しい友人と別れるような。どれも今の炎の心境には當てはまらなかった。

 真っ白な髪、そして死んだ魚のような目をしているのが特徴的だった。それ以外はごく普通中中背の一般男であった。

 一誰なのか?炎は振り絞るように思い返してみた。

 「-んみ、炎?」

 「ッ!?」

 その時柑菜から聲をかけられふと我に帰った。その瞬間、周りの時間がき出した。電車もきだし駅はあっという間に見えなくなった。

 「どうしたのよ?ボケ~っとして?」

 「…なんでもない…」

 我に帰ると睡していたかのように意識がぼんやりとしていた。ぼんやりとしながらも柑菜の呼びかけに空返事で返す炎

 ---そんな炎を余所目に電車は六英へと向かって行くのだった。

 ---「…アイツが黒崎炎か」

 駅のホームで突っ立つ白凪。電車がいた時、炎と視線が合った。その時初めて黒崎炎という男を認識した。多原から話は聞いていたもののどういう姿かは教えられていなかったからだ。

 「多原さんの話では俺と対峙するかも知れんと言われたが果たして俺と対等に渡り合える相手だろうか?」

 駅のホームで獨り言を呟く白凪。白凪は対峙するかも知れない炎をこの目で見たくなりここに來ていた。しかし電車が見えなくなった後もしばらくはそこからくことはなかった。

 ---「…さて、行くか」

 そしてしばらく立ち盡くしていた白凪は捨て臺詞のような発言を殘し駅を後ろを振り返り立ち去って行くのだった。

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