の先には、やはりコボルトロードが待っていた。

「さぁーて、さっきまでの俺らとは一味違うぜ？」

俺はそう言うと、剣を抜いた。本來は二刀流なのだが、まだ慣れてなく、俺は一本しか抜かなかった。

両手持ちでまっすぐ構えた。

「ねぇHardes、その構えって、自己流？」

俺の構え方は普通の構えだ。

しかしそれはあることをやっていないとわからないことだった。

「いや。ちゃんと型だよ。昔剣道やってたからさ。」

俺の構え方は普通の構え、と言った。剣道での普通の構えは『中段の構え』と呼ばれる構え方で、自分の─言葉が悪いが─膀胱の當たりに手を中心として置き、まっすぐ相手の元に剣先を向ける構え方。ものすごく基本的な構え方だ。

「へぇー……じゃあ、あの振り方も？」

「いや、流石にそれは自己流」

構えは中段の構えでも良かったが、振り方は流石に剣道のやり方では無理だ。隙がありすぎる。

だからこそ自分で剣を作ってる。

「よし、じゃあ頑張るぞー」

「おー」

気の抜けた掛け聲だ。でも、俺は大丈夫だと信じてる。

「さてさてさーて。コボルトロードさぁん？俺んとこに來なさいな。」

「雑魚は私が一掃してみよかなーしないでおこかなー」

「いや、そこはして！？俺狙われちゃう！」

「逆にさー、Hardesが引き付けてよ。コボルトロードと一緒に。」

「それ俺完全に狙われてるよね！？死ぬよ！？」

「大丈夫大丈夫！Hardesなら死なないよ、きっと！」

「なんの自信だよ！流石に死ぬわ！」

なんの拠があるんだ。しかし………どうするか……

俺が雑魚を引き付けておいて……コボルトロードはスルー。Merlinが俺がひきつけてる間に雑魚を一掃する呪文を唱えておく。詠唱が終わり次第、俺はすぐに離れる。そして、魔法を……撃つ。

これで行くか。

「Merlin！指示を出す！」

「分かってる！今心読んだ！」

「なにそれ怖い！いつの間に！？てかどうやって！？」

「なんかそんな魔法あった。すごいねこれ作戦筒抜けだよ。」

「相手のも見れるの！？味方のなら筒抜けてもいいよね！？」

「相手の見れないや。」

「だろうね！……まぁ、それなら話が早いな。やるぞ。」

「うん！」

それと同時に俺は雑魚に向かって走り出した。

ゴブリンやサハギン、ベイクラビット、コボルト達が一斉に俺を向いた。ヘイト値が上がったようだ。

「どぉぉぉぉおりゃぁぁぁぁぁあ！」

まずは一、切り倒した。Merlinの方を見ると、呪文を詠唱していた。

『Hardes、聞こえる？』

と、いきなり頭に聲が響いた。

(なんだ……？誰だ？)

俺は質問をした。もちろん戦いながら。

『私よ、Merlinだよ！聞こえるみたいだからいいや。詠唱終わったら言うね！』

(わかった。それなら俺が飛ぶ時に放ってくれ。合図はする)

『了解！』

頭の中で會話をわしたあと俺は魔達に向き合った。

「さぁて……こっちだよー！」

ヘイト値をさらにあげるためにびながら、俺は走った。

案の定、魔は全部こちらへ來た。

「はっ！どりゃっ！っとと、危ねぇ。」

何か倒しつつ、コボルトロードの方へ近づいていた。もちろん偶然ではなく故意である。

『詠唱終了！一気に放てるよ！』

頭の中で合図が來た。

(了解………3.2.1……放て！)

俺は飛びながら指示をした。

「フレイム・エクスプロージョン！」

Merlinは呪文を唱えた。

範囲魔法の中でも、エクスプロージョンは高位魔法だ。高い発力、破壊力、殺傷力があるのが特徴的でそれは広い範囲に屆く。

ファイア・エクスプロージョンとは、そのエクスプロージョンに屬をつけたのである。確かに一掃するには向いている。

ずどーーーーん！と大きな音を立てて発が起きた。

「やったか！？………あっ、フラグ……」

俺はミスってフラグを立ててしまった。やってないフラグを。

「………折れてください……」

祈りながら雑魚のいた方向を見やると、ちゃんと一掃されていた。

「よ、よかった……回収しなかった……」

「何ぶつくさ言ってるのー？………って、Hardes、危ない！」

俺はその聲で、反するようにコボルトロードの方向を見た。否、ただ見ただけではない。見てすぐに防いだ。

コボルトロードは野太刀を振り上げ、脳天に當たるよう振りおろしていた。

「あっ………ぶねぇなぁ、こら！」

俺は無意味に怒りながらもけをちゃんととった。

「こりゃ周りを走りまくるしかねぇなぁ………」

そう言って走り出そうとした瞬間。

コボルトロードは姿を消した。

ワープしたのではない。

きが速すぎたのだ、、、、、、、、、

「んな……！あの図であの速さとか………反則的だろ！」

これだと魔法も意味が無い。狙いが定まらないからだ。

「俺が足止めするか……それとも、Merlinにをしてもらうか……」

決めるのは早かった。

「俺が切りながら魔法を打ち込んでもらって、どっちかの攻撃でとどめを刺す……」

要は二人共攻撃をするのだ。も、囮もなしで。

「これがはえぇな………Merlin！」

「分かってる！私も今思いついた！」

意見があっているなら話が早い。

「どぉうりゃ！うりゃ！うおぉぉお！」

俺は連撃を繰り返した。だがそれも、コボルトロードには効いている様子もなかった。

「テンペスト！アイスドアース！フリージアサルト！アイス！」

Merlinも魔法を繰り返していた。

しかし………効いていなかった。

「………Hardes！」

「大きな呪文だろ！分かってる！」

だが、俺は分かっていなかった。

コボルトロードの特、耐を。

「おりゃ！うりゃ！どぉぉりゃ！うぉっ、やっぱはえぇ！」

しかし見事にヘイト値が俺に向いているらしく、コボルトロードは俺にばかり向いていた。

(これで倒せるといいが………そう簡単にはいかないだろ………)

しかし大幅に削れるだろうと予想していた。

(しっかし………早くてダメージでかい割に、俺に當たる確率は低いな……會心率……いや、命中率が低いのか………これならくらいにくそうだ。死ぬ確率も下がるだろう)

俺は攻撃を避けながら、一発ずつ攻撃していた。

(連撃が売りのクロスセイバーが1発ずつとはね……だからあまりダメージがらないのか。)

しかしそれならおかしなことがあった。クロスセイバーとしての職を全うできていない、だからダメージが低い、それならまだわかる。だが……

(なんでメイジの仕事を全うしているはずの、、、、、、、、、、、、、、、、Merlinのダメージが低いんだ？)

そこが気になるところだった。

まさか…………しまった！

「いくよ！フリーズ……」

「やめろ！意味が無い！やめろぉぉお！」

「エクス……プロージョン！」

どかーーーん！と音を立て、発が起こった。ただの発ではない。Merlinの得意とする屬、氷の発だ。発にれた部分は凍っていた。

──だが、ダメージはほとんどっていなかった。

こいつは………防が高いんでもHPが高いわけでもない。

なぜなら、俺の攻撃だともっとダメージがっているのだ。職を全うしていない俺の剣撃が。職を全うしていて、かつ得意屬の魔法を放ったMerlinよりも。

それはなぜか。俺はすぐにわかった。

(こいつ………特で……魔法完全耐が付いてやがるな、、、、、、、、、、、、、、。)

つまり、魔法攻撃は90%、、、も軽減されるのだ。

魔法が軽減されただけならまだいい。

ただ……ヘイト値が、俺のダメージよりも低い攻撃を與えたはずのMerlinに向いていたのだ。

(しまった………間に合うか！？)

俺はMerlinの方向に走り出した。

が、時すでに遅し。

Merlinは、振り下ろされた野太刀の衝撃波に吹き飛ばされた。

「きゃぁぁぁあ！」

悲鳴をあげながら、Merlinは飛ばされた。

「Merlin！大丈夫か！？」

俺は走りながら無事を尋ねた。

無事であるはずもないのに。

コボルトロードは、Merlinの方向から俺の方に向き直し、野太刀を振りかぶった。

(やばい………ガードも間に合わない………くらう！)

目を瞑った瞬間、橫から衝撃波が飛んできた。ちなみにコボルトロードは、向き合った真ん前、、、である。

「………え？」

しかしさすがの威力。喰らわなかったと安堵していた頃に衝撃波に飛ばされた。

「ぐあっ！」

俺は気管支や肺を失った覚に陥った。

(これは……蔵が潰れた……？あの衝撃で？強すぎだろ……)

こんなものをほぼ直でくらったMerlinはこれより酷いだろう。

そこで俺らは力盡きた。

もはや………死を覚悟していた。

別の場所、地上では、一箇所にたくさんの人が集まっていた。そしてそれを利用して、うさぎ………『時計うさぎ』は人々に姿を現した。

「これはこれは皆様お揃いで。」

時計うさぎはそう言うと、深く頭を下げた。

「私は時計うさぎと申します。皆様に、このゲームについて、教えにまいりました。」

何を言っているのだろうか。群衆(ここでは、地上にいる人たちのことを言う)はそう思った。

「皆様は、『Crowd』の參加者でございます。もちろん、戦う側ではございません。助けてもらう側でございます。」

訳が分からなかった。なくとも、ほとんどの人はそう思っていたはずだ。

「Crowd はデスゲームでございます。プレイヤーが戦い、ボスを撃破すると地上は戻ります。しかし、全滅すると……」

時計うさぎは……笑った。

「ここにいる皆様は大気圏を超えて死にます、、、、。」

「…………はぁぁぁぁぁぁあ！？」

「今なんつった！？」

「ですから、プレイヤーが全滅いたしますと、皆様は死ぬのです。」

「プレイヤーって………誰だよ！」

「この領地ですと………學校に殘ったものとかですかね。」 

學校に殘ったもの。つまり、古川と七瀬だ、、、、、、。

「無理だ………勝てるわけがねぇ………」

「うわぁぁぁ！おしまいだ！」

みんなが口々に死を宣言した。

「皆様にはこのゲームを最後まで見守る義務があります。権利もあります。どちらを選ぶかは自由ですが、見守らなければ死んでも文句は言ってはいけません。」

「なっ……わかった、見ようじゃねぇか！」

一人の男がそう言った。どうやら覚悟を決めたようだ。

時計うさぎはそれを聞き頷き手を出した。

まるで、お盆を載せているかのように、綺麗に橫を向いていた。

すると突然……大きなモニターが現れた。

「皆様はこれを使用してご覧頂きます。もちろんこちらの聲は聞こえません。あちらの聲はこちらに屆きますが。」

つまり映像で分かれということだ。モニターがり、畫面が映し出された。

その畫面には………MerlinとHardesが倒れている姿があった。

「Merlin様とHardes様ですね………全滅、というわけではなさそうですが…」

「………どういう……？」

「あのふたりは死んでおりません。また、Hardes様は………まだ戦う意思があるようですよ。」

畫面には開いていた手をかし、握りこぶしを作っている古川………Hardesが映っていた。

(ふざけんなよ………ここで終わるわけには………いかねぇんだよ！)

Hardesは意識が薄れようとしたとき、そう思った。

そして………力を振り絞って…………立ち上がった。

「俺を………舐めんなよ………」

小さな聲でそう呟いた。

「俺は………ぜってぇ勝つ！」

俺はを震わせ、そうんだ。

それは虛勢ではなかった。

真実にする確信があったのだ。

(なれてねぇがこの際仕方がねぇ………二刀流で行くか。)

Hardesは立つのもやっとの狀態だ。とても戦える様子ではない。だが、それでも諦めなかった。

Hardesは腰に手を回すと、剣を抜く作をした。もちろん、剣はそこにはない。両方飛ばされた時に違う場所へ飛ばされた。

だが、Hardesの掌がり………

その手には、剣の柄が握られていた。

「うぉあぁぁぁあ！」

Hardesはびながら剣を一気に引き抜いた。すると、Hardesは片方の剣の先をコボルトロードに向けて、こう言った。

「悪いな、こっから先が本番だ……覚悟しろよ？」

俺はそう言うと………跳んだ。

そして………コボルトロードの後ろにたった。一瞬でそこまで行ったのだ。

ただ行っただけではない。

「ぐぎゃぁぁぁあ！」

コボルトロードは悲鳴をあげた。

Hardesは跳んだ時に、一瞬で斬撃を繰り出していたのだ。

「こっからはひと味違うぜ？」

そう言って、走り出した。

(が………軽い！…しかも、ダメージも大きくなってる！これなら………いける！)

自分でも驚いていた。

まさか、こんなに強くなれてるとは思っていなかった。

いや、一瞬で強くなって言ったというよりは………

『覚醒狀態』そう呼ぶべき現象だった。

「おりゃーーー！」

コボルトロードの近くに行き、連撃を繰り広げる。

連撃數は10秒あたりの數で數えられる。そのうえ、連続していることが條件になる。

俺の連撃數は………32である。

ずぱずぱと敵の皮が切れる音がした。

「ぐぎゃ、ぎゃぁぁあおぉぉ！」

コボルトロードは大きな悲鳴をあげた。

コボルトロードのHPは………

殘り半分を切っていた。

これなら勝てる……だが何かが足りない。そう思った時、自分のが、闇に包まれ、しかしっている覚に陥った。

(なんだ……これは？)

そしてそれに反応するように………

剣がり出した。

(これは………)

俺はその言葉を知らなかった。だが、自然に出た。

「技・辻斬り！」

そういった時に俺は瞬間移をした覚に陥った。

後ろを見てみると………コボルトロードが倒れていた。

から上がなく、を吹き出しながら、、、、、、、、、、、、、、、、、倒れていた。

「やった………のか……？」

俺はコボルトロードのHPを見た。

『0/68790』

HPは………0だ。

「倒した………やった…………倒したぁぁぁぁあ！」

様々な奇跡により、また、偶然により、コボルトロードを倒すことが出來た。それはもう、一番の嬉しいことだった。

「うおぉぉ！やったぁ！倒したぞ！古川が倒した！」

男がんだ。

「これで先のステップに進めますね、Hardes様。皆様も、首の皮一枚繋がったでしょう。」

時計うさぎは冷ややかに、かつ的に言った。

(しかし、まさか力を解放するとは………流石に黒魔家末裔……すごい才能をお持ちだ。)

そして地上ではその後………宴が始まった。

「Hardes………やったね。すごいよ………」

HardesはMerlinを起こし、共に歓喜した。

「これで先に進める。2層目………コボルトロードみたいなやつが來ないといいが………」

しかしそれを決めるのは俺らではない。

運営が決めるのだ。

何が來ようと戦わねばならないだろう。

「とりあえず、し休んで………進もうか。」

それから2時間、2人は眠りに落ちていた。

2人は起きてすぐに、奧へと出発した。

部屋の奧はやはり階段になっており、どんどんと下っていった。

「またダンジョンかなー………やだなー………」

「仕方ないよ、ここを抜け出すには、みんなを助けるにはこれしかないんだから。」

魔神を倒せ、そううさぎは言っていた。それならば倒せばみんなを助け出せるはずだと、結論を出した。

それならば、進み続けよう、そうふたりは決心した。

しばらく歩いた階段の先には、また道があった。しかもそれもまた………

「ダンジョンかぁ………」

迷う。確実に。同じ方法は使うつもりだが………。

とにかく歩こう。そう考え、ふたりは何時間も歩き続けた。

が、ある事件が起きた。

「………あれ？おかしいぞ？」

「どうしたの？」

「いや………全部の道回ったのに、全部不正解だったんだ。」

つまり、正解の道がなかったということだ。

「もう一個の道にあるんじゃないの？」

「いや、もう一個の道は………」

Hardesは道を曲がる前にある立て札を見た。

そこに書いてあった言葉は。

『出口←→浴場』

と書いてあった。

立て札が間違いだとしてもこちら側に浴場があるはずだ。

つまり。

なかったということは、そっちが浴場なのだ。確かに、右の道からは暖かい空気がきていた。

水蒸気がきていたのかもしれない。

「じゃあ、どうすればいいんだろう……」

そう。おかしいのだ。

どの道を行っても………出口は見つからないのだ。

──そこで俺はひとつ気づいた。

うさぎの言葉を思い出していた。

『迷った時は突破口を頑張って作ってください』

つまり。

先に進めたら……どのような方法を用いてもいいという事だ。

ならば、一つしかない。文字通り突破口を作る。

「Merlin、壁に向かって、小さな発魔法を使ってくれ。」

「えっ？」

「いいから。」

「わ、わかった」

Merlinは、壁に向かって呪文を唱えた。

「フレイム……バースト！」

Merlinの魔法は見事に壁をぶち抜いた。

これでよしだ。

「よし、いこう。」

「え？っちょっ、待ってよ！」

「ん？なんだ？」

「なんで壁くり抜いたの？」

「あいつ言ってたろ？突破口を作れって。ってことはを開ければいいのかなって。」

謎理論である。しかしそれで道は開けたらしく、奧はっていた。

「さて………行こうか！」

俺達は先に進んだ。

まだ見ぬ敵を見據えて。

そして、確実なる勝利を見據えて。