《久遠》第5話 夜に踴る
そんなこんなで彼は吸鬼にを吸われてしまった。
え、じゃあ死んでるはずだろ?って。
まあ普通はそう思う。
ところが彼は生きている。
誰もがあの場で間違いなく「あ、これ死んだ!」と思ったはずだが、生きている。
不思議なことに彼のにはある特別な才能が宿っていた。
いや、才能というより質というべきか……。
吸鬼の男。自らを名もなきバンピールと呼稱する彼からすれば何百年と生きてきて直江のような質をもつ存在とは出會ったことがないという。
彼のにめられた質。それは
………が劇的にまずいということだ。
「まずいとかそういうレベルじゃないわよ!なにこれ!天罰?テロ?もはや別の意味で飯テロよ!珍味の度を超して、ゴミよ!まだネズミののほうがマシ!」
だそうである。
何ともひどい言われようだが、ともかく直江はを全部吸われることなく生きながらえることができた。
それだけではない。數年は人間として彼に従屬するという條件付きではあるが、バンピールは彼を吸鬼にすると約束したのだ。
もちろん彼からその言葉を引き出すのに、襲ったことへの謝罪、自を吸鬼にすることのメリットをひたすらのべて、數時間に及ぶ忠誠のダンスを踴ったことは言うまでもない。
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