シルヴィアにとってそいつはどんな化けよりも恐ろしい存在だった。

事実、彼がいなければ百鬼夜行は功していた。

復讐のためにディルフォード一家は吸鬼隨一の異能使いを彼の元に送りこんだ。

人間に擬態することができるという能力の持ち主で、一般市民を傷つけることができないハンターの弱點を逆手にとって次々と腕利きの滅鬼師達を葬ってきた吸鬼だった。

しかしそんな能力者でも殺された。

そのは疑わしい者を人間含めて全員切り殺したのだ。

「思い出すだけでぞくぞくするわ。あいつは私達なんかよりもよっぽど化けだった」

しかしそんな彼を好敵手としてシルヴィアはしていた。

だからそのが彼の知らないところで死んだと聞かされた時涙を流したほどだった。

あの伝説のハンターはあっさりと何者かの手によって殺されたのだ。

私があいつを殺そうと思っていたのに……獲を橫取りしたのはどこのどいつだ！と。

そんなシルヴィアはある一つの指を大切に持っていた。

しくもなければ、不思議な力があるわけでもない。なのに彼は薄汚れた一つの指を大切に保管していた。なぜならそれはシルヴィアが唯一その伝説のハンターから指ごと奪ってやった戦利品だったからだ。

その手傷を負わせるだけでシルヴィアがいったい何人の手駒を失ったことか。

だからその指は彼にとって大切な寶だった。

ジュエルコレクターとも呼ばれた彼が古今東西から集めた金銀財寶と一緒にコレクションに並べるほど。

しかしその指が數ヶ月前に盜まれたのだ。しかも同族の手によって。

そしてその同族はこの日本に逃れた。

目的はわかりきっている……私をおびきだそうとしているのだろう。

同族の中でもディルフォード家に反発する派閥はある。

そこに與する者がディルフォードの力の及ばないこの極東の地で私を殺そうという魂膽だろう。

……面白い。

シルヴィアは伝説のハンター亡きあと刺激に飢えていた。

だがどんなハンターも味気ない。今従えている鳴華にしてもそうだ。

剣には目を見張るものがあった。

さすがあの伝説のハンターと同じ麻上のを引く人間だと思ったほどに。

だがシルヴィアの放つ手駒がられているだけの人間と知るや否や彼は揺し、あっさりと隙を見せてシルヴィアにを吸われた。

私が求めているのはこれではない。

もっと私を心から震わせてくれるような恐怖を！悪鬼のような狩り人を！

そんな出會いを求めて彼はこの極東の地に降り立ったのだ。