に塗れた祭はまるで赤い化粧でおめかししているように見えた。

直江は半月前のことを思い出す。

夜の街で人間相手に赤刀を振るう彼を偶然見てしまった。

人を殺め、そしてゆらゆらと幽鬼のように現場を去るその姿を。

直江はそんな彼に聲をかけた。

自分が殺されるかもしれないという思いがなかったわけではない。

だがそんなことよりも祭のことが心配だった。

彼に意識はなく、聲をかけてから初めて目が覚めたというような狀態。

「……直江……？」

彼の聲を聞いたとき、直江は思った。

……僕が守ってやらないと……。

どうして彼が人を殺したんだ？なんていう疑問は消えた。そんなこと直江には関係なかった。なぜ彼が無意識の狀態で人を殺すのか理由はわからない。

もちろん人殺しはいけないことだ。けれど彼が人を殺すなら僕がその罪を隠してやる。

例え何人死のうと構わない。

全て隠蔽してやる。

幸いにも祭は直江が聲をかけた直後に再び意識を失った。

彼をひとまず安全な場所で寢かせる。

問題なのは兇だ。下手に捨てて見つかった場合、警察だけでなく本局に目をつけられてしまうのが恐ろしかった。

正直正しい処分の方法がわからなかった。

だから特捜隊のロッカーにれておくことでこれを特捜隊の問題として他のメンバーと共有したかったのだ。

もちろん真実を知る者は直江のみ。

四ノ宮が赤刀を未使用のままロッカーにいれてあることは把握していた。

自分たちが疑われないように、四ノ宮の刀をとってこれを祭のものとしてメンバー達に証言しようと考えた。

普通の狀態ならこんな淺はかな方法でいつまでも騙し通せるとは思はなかっただろう。

でも必死だった直江にそこまで頭は回らない。

二度目の殺人の時も直江が必死に隠した。

でもこれはもう無理だ。隠しきれない。

夜の街がで彩られる。

祭の手によって１０人以上もの人間が死んだ。

の海の中で一人、彼は刀を持って立ち盡くす。

「祭ちゃん……」

直江が彼に近づく。四ノ宮がそれを制止しようとしたが彼は止まらなかった。

祭の頬には青い筋が浮かび上がり、直江に向けた目も青一に染まっている。

嫌なじがした。

「下がれ！直江くん！」

祭の振るった刃を四ノ宮の我寫髑髏が止めた。

彼の靴から刃が飛び出し、殺傷能力のある蹴りが放たれる。

それは四ノ宮のへとまっすぐ向かい、次の瞬間衝撃をけた彼は地面に倒れた。

我寫髑髏から召還された小さい骸骨がを犠牲に彼の盾となっていたおかげで心臓が貫かれることはなかったがそれでも蹴りによるダメージは大きい。四ノ宮は地面でを抑えてく。

そんな彼にとどめをさそうと祭は刃を振り上げる。

だが一人の男が彼に組みついて地面に引き倒した。

吾郎がに刺し傷があるにも関わらず起き上がって彼を止めたのだ。

だが傷の痛みで力が緩んだのだろう、祭はするりと彼の拘束から抜け出て立ち上がる。

「祭ちゃん！」

直江が名前を呼ぶと彼がピタリときを止める。

そんな彼を直江は抱きしめた。

「もうやめよう……もう……だめだよ……」

だがそんな言葉で彼の殺意はおさまらない。

祭が直江を押しとばす。

その刃を再びで染めるために。

だが彼は直後、バタリと地面に倒れる。

その背中には斬撃をけた痕が殘っていた。

「……祭ちゃん？」

すぐに直江がかけよる。

彼の息はか細く、今にも死んでしまいそうだった。

「お前を慕っていたのだな」

祭を切ったハンターが直江に近づく。

離れたところに純の吸鬼が倒れている。その首はない。

「お前に意識が集中していた。でなければ切れなかっただろうな」

鳴華だ。シルヴィアによって洗脳されていたはずの彼が、なぜかシルヴィアを殺害して意識を取り戻していた。