《エルフさんが通ります》引きこもりを引き摺りだす方法(実演)
市場であるを買い、私は森へは行かずに『もうけ亭』に戻ってきた。
そんな私を怪訝そうな顔でマスター(もう三時間くらい経つのにまだグラスを拭いていた)が見てきた
「なんだ? 今日はえらく早いな?」
「うん、ところでマスター」
「なんだ?」
「ここの宿って部屋壊したらどれくらい修理代を払うの?」
「……壊す予定があるのか?」
「場合によっては」
私の不穏な発言にマスターはグラスを拭くのを止め思案しているようだ。
「まぁ、壊す箇所にもよるが銀貨五枚あれば十分だろう」
「ならこれで」
私はすぐに銀貨をマスターの前に置く。その數、十枚。
「數日分の宿泊費、それと修繕費です」
躊躇いなく置いた私に驚きの表を浮かべるマスターだ
が、口を開く前に私が口を開きすぐさま踵を返し階段を上がる。
そしてアレスの部屋の前に立つと扉を叩く。
「アレスいるでしょ? 早く出て來なさい! 冒険者ならさっさと出てこい!」
バンバンと音を立てながら叩くが扉の向こう側ではく気配が全くじられない。いや、いている気配はじるのだが扉に近づいてくる様子は全く見られないのだ。
仕方ない。
私はため息をつくと魔法のカバンマジックバックから矢を一本取り出します。それを見たクーちゃんが楽しげにしながら私の周囲を飛び回ります。
『つの?』
「ちはしないよ。ただ、クーちゃん。軽く魔法かけてくれる? この扉をぶち壊すくらいのやつ」
『いいよー』
楽しげな聲を出しながらクーちゃんは私の持つ矢に風屬を付與してくれます。
これで準備は整いましたね。
「アレス! 私は結構待ったと思うわ。約三日。東方の言葉にこんな言葉があるわ『男子三日會わざれば刮目して見よ』つまり三日會わなかったら別人のように長してないとだめなのよ!」
『そうなの?』
「……適當です」
そんな言葉があるのは本當だが意味まで合ってるかは知らない。
それっぽいことを言っとけば本當ぽく聞こえるでしょう。
「今から五秒あげます。五秒以に開けないと……」
『あ、開けないと?』
くーちゃんハラハラした様子が伝わって來ますね。それにどうやら部屋でもいているようですし、効果はあったようですね。
「開けない場合は大人も泣きぶと言われているエルフ式魔法戦闘訓練(地獄式)を無理やりやらします」
『じ、地獄しき!』
私がそう告げた瞬間、部屋の中でガタンと何かを倒す音が響き、続き引き上げ窓を開けるような音が鳴ります。
「ほう、カウントを數える前に逃げるとはいい度です」
私は素早く矢を扉に突き刺します。すると込められていた魔法が即座に解放。小さな暴風が発生し、木の扉を々に砕け散らします。
散らばった木片を踏みしめながら部屋にると予想通り窓が開け放たれており、アレスの姿はありません。ご丁寧に荷も全部持って行ったようですね。
私は窓に足をかけると上を摑みくるりとを捻り屋の上に登ります。
そして人通りの多い道を凝視し、目的の人を発見します。
あんなに目立つ魔みたいな格好をしている人はそうそういませんし。
「エルフの弓使いから逃げた事を後悔さしてやります」
『お手らかに?』
魔法のカバンマジックバックから矢筒を取り出し手早く腰のベルトに差し込み、背中の弓を構えます。
矢筒から矢を取り出し弓に番え、弦を引きます。
「まずは挨拶です」
ぺろりとを舐め、矢を放つ。
くーちゃんの魔法の補助をけていない弓矢はそれでもかなりの速度を持ってアレスの被るとんがり帽子を容易く抜いた。
『命中』
くーちゃんが伝えてくれるがすでに私はニ目の矢を番え弦を引き絞っていた。ただし、一目の普通の矢とは違い、蒼く塗られた特別製の矢だ。
シュっ
再び放たれた矢は蒼い線を描きながら再度逃げようとするアレスに迫る。
その様子を見た私はにやりと笑う。
「ニ目の矢は一目の矢とは違いますよ」
蒼い矢はアレスの腕のローブにかすった瞬間、矢中心とし、アレスのが回転。ぐるりとまわったアレスはそのまま頭から地面に叩きつけられたピクリともかなくなった。
「よし、功」
初めて使う矢だったから功するかどうか判らなかったがうまくいったようです。
『さっきの何? 何?』
くーちゃんが興味を持ったのか私の弓をのぞき込む用に飛び回っている。
「さっき使ったのは魔法の矢スパイラルだよ」
『魔法の矢? 霊魔法と違うの?』
「違うよ。くーちゃんが魔法使うと矢に風を纏わせて回転さすことで威力を上げるけどあの矢は當たった點を中心に回転させるんだよ」
くーちゃんの質問に答えながら私は屋から飛び降りる。そのままでも多分大丈夫だろうけどくーちゃんが気を利かせてくれたおかげで風魔法で、ゆっくりとかつ優雅に地上に著地する。
つまりは殺すことを前提にしていない弓矢なのだ。まぁ、頭やに當たれば捻れて死ぬんだけどね。基本は生け捕り用に使う弓矢だし。
『さっき市場であれ買ってたの?』
「違うよ。あれは里で作ったやつだよ。買ったのはこれ」
そう告げ、くーちゃんに見えるように私は魔法のカバンマジックバックから丈夫そうな荒縄を覗かせる。
「さぁ、エルフ式魔法戦闘訓練(地獄式)を始めようかな」
再び私は顔に笑みを浮かべ、気絶したアレスに向かい荒縄を持って近づいて行くのだった。
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