《エルフさんが通ります》真価
放たれた銀矢は風を切りながら進む。
ここまでは今までの弓矢と変わらない。それがこちらに向かい迫りくるミノタウロスにもわかったのでしょう。
右腕の剣を振り上げ迎撃しようとするのが私の目にもわかります。
「それが狙いですが」
私は一人笑いながら呟きます。
『SYAAAAA!』
ミノタウロスが振り下ろした大剣が銀矢へ迫ります。しかし、當たる寸前で銀矢がを放ちます。
『BUMO⁉︎』
『眩しい!』
ミノタウロスが驚愕の聲を、くーちゃんは眩しさに目を手で覆っています。
銀矢はを放ちながら徐々に形狀を変化、いや、元に戻していき銀矢に変わる前の塗れの大剣へと戻り、閃で目がくらんでいるミノタウロスの右肩に速度を落とすことなく突き刺さり貫通、紫のがミノタウロスの悲鳴と共に大地を汚しました。
『戻った⁉︎』
「これが全てを弓矢にオールボゥの二つ目の能力です」
全てを弓矢にオールボゥの二つ目の能力、銀矢へと変えたを元に戻す。これだけです。
ですが、この能力は使い方次第で凄まじく兇悪なへと変わります。
武や巨大なを銀矢へと変え當たる直前で元のへと戻す。しかも手で投げたりするよりも弓で放つことで速度がつき、元の大きさに戻ったは敵に當たると大ダメージをうけるというものです。
まぁ、基本は武を弓に変え、放ち、突き刺さる瞬間に元に戻すのですがね。
これにくーちゃんの魔法を足すとどうなるかわかりませんね。
ミノタウロスは無事な左手で右肩を抑え、こちらに警戒の視線を向け、をこちら側に向けたままジリジリと後退しています。
「逃がしませんよ」
私の聲が聞こえたのかミノタウロスは踵を返し、私に背を向けて逃げ出しました。本能に忠実ですねぇ〜
魔法のカバンマジックバックから私は道中に拾った武の數々を取り出し、片っ端から銀矢へと変化さし矢筒に放り込んでいきます。
「くーちゃん、魔法おねがいね」
「了解」
くーちゃんの了承と共に矢筒へとれている銀矢へ風魔法が施されていきます。
「やりますよ〜」
『わくわく』
十の武を変換し、くーちゃんの魔法が施されたことを確認すると銀矢を摑みます。
ミノタウロスはどうやら木々の濃い方に逃げているみたいですが意味はないですね。くーちゃんの魔法をを持って味わったというのに。
銀矢をまずは三本。
途中に木や枝がありますがまっすぐミノタウロスに向かい放ちます。
くーちゃんの魔法を施された銀矢はすぐに武の形に戻り、回転しながらミノタウロスを追いかけます。
やはりというか想像通りというか、途中にある障害は切り裂かれ、貫通し、何事もなかったかのように破壊音を撒き散らしながら直進していきます。魔法の力は偉大ですね。
『BUWA⁉︎』
逃げるミノタウロスの背中に一本の大剣が突き刺さり、貫通。更には込められた風の魔法が発したのか背中を切り裂きました。二つ目の槍が足を貫き、地面にい付けたことでミノタウロスが無様に転がりました。三つ目の斧はミノタウロスが転けたことで目標から外れ、回転しながら木々を破壊していきやがて見えなくなりました。
「終わりですかね」
『はやーい』
私が再び、矢筒の銀矢へと手をばそうとすると、ミノタウロスに刺さる大剣と槍に黒い靄がかかりました。
そして押し込まれていくようにゆっくりとミノタウロスのへと沈み始めました。
「アレスも応用を覚えたようですね」
おそらく突き刺さった武にだけ重力魔法グラビレイをかけて刺しこんでいるのでいるのでしょう。
まぁ、ティスタニアに戻ったら無理やり魔法を覚えさしましょう。廃人になるかもしれませんがその時はその時です。
ミノタウロスは悲鳴を上げ串刺しにされながらも必死に逃げようとしています。往生際がわるいですね。
「誰が逃がすものですか!」
逃げようとしていたミノタウロスの前に現れたのは塗れの、『ブラッディマリー』でした。服がマリーので真っ赤っかですね。なぜか目が走ってますが。
『BWAAAAAA?』
最後の力を振り絞ったかのような咆哮を上げい付けていた槍を無理やり引き抜き、を撒き散らしながらもミノタウロスが頭の角を突き出しマリーに向かい突撃します。
それに対しマリーはただ剣ブラディアナを上段に構え迎え撃つようですね。
「この牛風が、死んでもらいますわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
剣ブラディアナが恐ろしいほどの速さで刃を巨大化さしていってますね。なんかも赤というか黒に近いんですけど。がわるいですね。
「チェストォォォォォォ!」
マリーが大聲でびながらそれを振り下ろした。
さっきと同じならミノタウロスを斬ることはできないはずですが。
スパァァ!
さしたる抵抗もなさげにマリーの剣ブラディアナがミノタウロスを頭からへと切り裂き、二つの片へ姿を変えます。
あっさりですね。
片と化したミノタウロスが轟音を上げながら倒れ大地に紫の地溜まりを作り上げます。
「ああ、ちょっとを使いすぎたかもしれませ……」
剣ブラディアナを振り下ろしたマリーがフラフラとした様子でその場に座り込みました。
「あんな攻撃できるなら初めから使ってしいですね」
それならば私の切り札も切らなくてすんだのですが。今更言っても仕方ありません。
矢筒にれた銀矢を元の武に戻し、再び魔法のカバンマジックバックへと適當に放り込みます。
さて、あとはあの漆黒のミノタウロスをどうするかですね。角とか大剣とか高く売れそうです。魔の素材はによってはかなり高額で買い取ってくれるらしいですし。
私は木から飛び降りるとミノタウロスのほうへ向かい歩きます。
『なんかあるよ』
「なんです?」
くーちゃんの言葉でミノタウロスを警戒します。
しかし、ミノタウロスには変化がありません。ただ、ミノタウロスの死の上にただ、小さな黒いものが見えました。
『リリカ、あれ危ない! 早くマリー助けて離れて!』
「は、はい!」
初めて聞くくーちゃんの真剣な聲に私はすぐに返事をしすぐさま座り込んでいるマリーの元へ駆けます。マリーま近づく私に気づいたのか呑気に手を振ってきます。
「見ましたか? リリカさん。私の実力を」
「見たから逃げるよ!」
すれ違いざまにマリーの服の首元を摑み駆けます。「ぐえ」とか聲が聞こえましたが気にしていられません。マリーを摑んだ時に見た時には黒いが大きくなっていたからです。すでに私にもわかります。あれは……
「まずいです!」
マリーを引き摺るようにしながら私は走ります。そんな私になせか満面の笑みを浮かべたアレスが近づいてきます。
「リリカさん! ボク新しい魔法使えましたよ」
「今それどころじゃ……」
ないと言葉を告げずに私は黙りました。
今こいつなんて言いました?
新しい魔法?
「……どんな魔法?」
「重力魔法を全にかけるんじゃなくて一點にだけ掛けつづける魔法です! もうすぐ結果がでますよ!」
にこにこと笑い、私と追走しながら後ろを指差します。
「あの、リリカさん、もうしわたくしを丁寧に運んでいただけるとありがたあいたぁ⁉︎」
マリーの悲鳴を聞きながら私は恐る恐る振り返ります。
そして、
「ひっ⁉︎」
悲鳴をらしました。
振り返ると黒いはすでに黒い球となっており周囲のを引き寄せていました。木は抜け、片っ端から黒い球へと吸い込まれています。何かを吸い込むたびに黒い球はしづつ大きくなっているようでした。
「……アレス、あれは?」
「ボクの新魔法です。名前はそうですね。黒球ブラックボールとかどうです?」
アレスの言葉を聞きながら私は魔法のカバンマジックバックから矢とロープを取り出し、ロープの片方を自分のへ巻きつけ、もう片方を矢にくくりつけました。
「くーちゃん! 魔法全開で!」
『あいさー!』
くーちゃんも私にしがみつくと今までで一番風魔法を付與された矢は凄まじく度な魔力の塊と化しました。
私はすぐにその矢を放ち、弓を魔法のカバンマジックバックにれるとアレスの顔面を摑みます。
「あとで覚えてなさい!」
「いだいいだいでふ!」
放たれた矢が凄まじい速度で前面の障害を破壊していき、やがてロープの余裕がなくなり私も矢に引っ張られるようにがふわりと浮かび加速します。一気にスピードが出たためがギシギシと軋みますががしかたありません。
パァンという何かが弾けた音が聞こえたため振り返ると、黒い球がなくなっていました。しかし、球のあった場所に向かい様々なが引き寄せられ、消えて行っています。
あとし遅ければ私達もああなり、消えていたかもしれないと思うとゾッとします。
その日、ムトゥの森は半分が消し飛んだと聞いたのはし後の事でした。
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書籍版4巻は、2022年7月8日発売です! イラストはかぼちゃ先生に擔當していただいております。 活動報告でキャラクターデザインを公開していますので、ぜひ、見てみてください! コミック版は「ヤングエースUP」さまで連載中です! 作畫は姫乃タカ先生が擔當してくださっています。 2021.03.01:書籍化に合わせてタイトルを変更しました。 舊タイトル「弱者と呼ばれて帝國を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました -魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大國に進化させます-」 帝國に住む少年トール・リーガスは、公爵である父の手によって魔王領へと追放される。 理由は、彼が使えるのが「錬金術」だけで、戦闘用のスキルを一切持っていないからだった。 彼の住む帝國は軍事大國で、戦闘スキルを持たない者は差別されていた。 だから帝國は彼を、魔王領への人質・いけにえにすることにしたのだ。 しかし魔王領に入った瞬間、トールの「錬金術」スキルは超覚醒する。 「光・闇・地・水・火・風」……あらゆる屬性を操ることができる、究極の「創造錬金術(オーバー・アルケミー)」というスキルになったのだ。 「創造錬金術」は寫真や説明を読んだだけで、そのアイテムをコピーすることができるのだ。 そうしてエルフ少女や魔王の信頼を得て、魔王領のおかかえ錬金術師となったトールだったが── 「あれ? なんだこの本……異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』?」 ──異世界の本を手に入れてしまったことで、文明的アイテムも作れるようになる。 さらにそれが思いもよらない超絶性能を発揮して……? これは追放された少年が、帝國と勇者を超えて、魔王領を文明大國に変えていく物語。 ・カクヨムにも投稿しています。
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