《エルフさんが通ります》エルフに夢を見すぎなんですよ

「まあ、お金は諦めてあげましょう」

「……なんでそんなに上から目線なんだい」

「まぁ、私のほうが強いですし」

そんな當たり前のことを言われても仕方ありませんしね。

それよりもです。

「先程の話を深く聞いても?」

「どの話だよ」

不愉快そうな顔をしながらロゼットは人間がエールと呼ぶお酒をあおります。この人一応教會の人じゃなかったんでしょうか?

「エルフの話ですよ。先程あなたは『エルフってのはろくな奴らがいないんだね』っておっしゃいました。そのため最近どこかでエルフを見かけられたのかと思いましてね」

「まぁね。私たちは一応教會の所屬だけど冒険者もやってるからね。あちこち行くころがあるのさ」

「ほほう、それで?」

荒れくれ者だと思いましたが冒険者も兼業していましたか。

先を促すとロゼットはにやりと笑います。

「ここから先は報料を・・待て、銃口をこっちに向けるな!」

「善意って大事ですよね~」

ロゼットが快く話してくれて私は助かります。

ロゼットに向けていたフリングを降ろし私は彼に笑いかけます。

「くそ、何が善意だ。・・・冒険者にとって報は大事だ。だから々調べてるのさ。そしたら最近、王國のほうでエルフがよく目撃されてるって話さ」

「略奪期では無いはずなんですけどね」

「略奪期?」

私の言葉にロゼットが首を傾げます。これは珍しい反応ですね。普段は私のほうが首を傾げることが多いんですけど。

「ええ、エルフは定期的に人里を襲っていますから」

「ど、どういうことかしら?」

「簡単に言えば外の世界の報収集と資の収集ですね。森に住んでいる種族ではありますが知的好奇心もありますので」

確か私が十歳くらいのころにはどこかの街ひとつをつぶしていた記憶がありますし。確かあのときの理由は暇つぶしと聞いた気がしますね。

「大一年に一回くらいですから大丈夫ですよ?」

「じゃ、その王國にいるエルフは偵察に來たってこと?」

「さぁ?」

ふむ、王國にエルフですか。誰かによりますが出會ったらろくなことにはならないでしょうね。

マリーにも注意を促さないとダメですね。

ふふふふ、ろくなことにはならないでしょうが退屈はしなさそうです。

「エルフは清楚なイメージだったんだけどね~」

「それは大多數の人間のイメージでしかありませんよ」

一般的なエルフのイメージは金髪碧眼、、巨、清楚、穏やかといったところでしょうか。

実際は人間と大差はなさそうですが。押し付けはよくありませんね。

「そのエルフの特徴とかはわかりますか?」

特徴がわかればだれかも特定できるかもしれませんからね。

「いや、それはわからないな。金髪碧眼、そして長い耳。コレしか報がってきてないからこそエルフとしか報が出回ってないのよ。あんたみたいに銀髪蒼眼ならわかりやすかったんだろうけど」

「私のは特別なんです」

エルフは基本ロゼットが言うように金髪碧眼で生まれてくるらしいのですが私だけはどうもちがったようです。父さんも母さんも金髪碧眼なんですけどねぇ~

それほど気にはしてないですが。

「コレだけ話したんだ十分でしょ?」

「ええ、十分です」

私はニッコリとロゼットに笑いかけます。対して彼は不機嫌そうですが。

「だったらフリングを返してほしいんですけど?」

「それとコレとは話が別ですね」

私がそう答えるとロゼットはガックリと肩を落とします。

だってこれフリング使い勝手がいいんだもの。

「では報料としてコレはどうでしょう」

私は魔法のカバンマジックバックから先程まで売りに出していた筋力増強剤を取り出しロゼットの前に置きます。

「これは?」

「エルフの里特の筋力増強剤です。飲めば未知なる力がわいてきますよ」

ついでに違う世界が見えると言う副作用がありますがそこは黙っておきます。

噓は言ってませんからね。全部を言ってないだけで。

「……これ売れるの?」

「それなりに。以前の街では銀貨五枚で売れましたよ」

「なんですって!」

椅子を弾き飛ばすようにロゼットは立ち上がり筋増強剤の袋を奪い取るように自分の手元に置きます。

そしてすごい目つきで睨んできます。

「……返さないわよ?」

「いや、あげますよ」

そんな獣みたいな目で睨まなくてもちゃんとあげるというのに。人間はお金がかかると眼のが変わると言うのは本當のようです。確か金の亡者とか言うんでしたかね?

私は銀貨をカウンターに置き席を立ちます。

「なんだ帰るんですの?」

「ええ、目的とは違うものでしたが貴重な報が手にったので今夜はもう休むとします」

あんまり遅くなるとマリーが怒りそうですからね。あの人は意外と細かいですし。

ロゼットにヒラヒラと手を振りながら酒場の出口に向かいます。

そのまま外に出ると酒場の喧騒が小さくなり余り耳にらなくなります。

足はそのまま宿のほうに向けながら頭は別のことを考えます。

「略奪期でもないのにくエルフたちですか……」

なにか楽しそうなことが起こりそうですね。

知らぬうちに鼻歌を歌うほど上機嫌な私はロゼットに渡した薬が人間の里で言う違法薬であるということを完全に忘れていたのでした。

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