《No title》24.朱殷の眼~カイ目線~
レイスがにっていくのを笑顔で見送り、俺は一人で外に取り殘される形となってしまった。
頭上では相変わらず暑苦しい太が照りつけている。
しでも暑さを凌ぐため、日に移してから巖に寄りかかり、暇潰しに周囲の観察を始めた。
どこまでも続くような景の中には、來る時には気付かなかったものが満ち溢れていた。
木の枝で羽を休める鳥達。
僅かに違う葉の。
葉の先端に止まる小さな蟲。
こんなに生きがいたのかこの森。
(そういえば久々に命令されたなぁ...)
葉先の蟲から視線を逸らし、辺りを警戒し始める。
主であるレイスの’’命令’’という言葉は、俺に絶対的な効力を持つ。
どんなに不可能な事でも、その二文字さえあれば可能になるのだ。
しかしその分リスクもあり、筋痛だけで済む時もあれば昏睡狀態が続く時もある。
そして、レイスが俺に命令する時は例外なく何かがあった。
変に勘がいいしなレイスは。
前回は名のある練傭兵の相手だった気がする。
(さぁ今回は何があるかな...)
そんな時、視界の隅に黒い影が映った。
いつでもけるような勢をとる。
「おやまぁ」
次の瞬間、目の前に現れた標的達を驚くことに俺は知っていた。
なんとも言えないがフツフツと湧き上がる。
なんだろうこの。
憎悪?恐怖?憤怒?哀愁?
違う違うそんなものじゃない。
そんな生溫いものでは表しきれない。
「はぁ......」
自分をリセットするためにしたため息は、思った以上に重かった。
あ、鳥達や蟲が傷付いたら可哀想だな。
こういうのキャラじゃないからあんまり好きじゃないけど......やるか。
真顔だった顔を冷たい笑顔に変え、できる限りの殺気を放つ。
レイス程ではないが、これぐらいの距離なら俺の殺気でも逃げてくれた。
同時に相手の警戒も強めてしまったが、これはまぁ仕方ないだろう。
し大きな深呼吸をした後、冷靜に...というより冷酷に今からやるべき事を整理する。
「こんにちは、人攫いの皆さん。生憎ですがウチの主は現在取り込み中ですので、相手は俺が務めますね」
俺がそう言うと、彼らはそれぞれ武を構えた。
「せいぜい楽しませてくれよ?」
小さく呟き俺も攻撃態勢にる。
一度の瞬きの後、俺の蒼だった眼はドス黒いのような朱殷へとを変えていた。
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