《えー……新一年生のみなさん、學おめでたですぅー。私はこの水無月高等學校３年生、生徒會長の九十九つくも稲荷いなりと申します。ここに來るまでの桜並木はとても綺麗でしたでしょう？　歴史あるこの學校……あ、副會長さん。カンペ見えねーです。もうちょっと上に……ああっ、ページがちげーです……ああ、新生のみなさん、申し訳ねーです。えーっと》

迷いの件から數日後。僕はようやく高校生になった。

なんだか締まらない金髪生徒會長の挨拶を聞きながらの學式。はじめは、鮮やかな金の髪をした人生徒會長の登場にざわついてたんだけど。

このグダグダトークにみんな張がほぐれたのか、小さな笑い聲まで聞こえてきた。

話によると、あの生徒會長の金髪は地らしい。変わった人もいたもんだなあ。これが高校か！！

なんて……思ってる余裕は今の僕にない。

の子なのになんで男子の制服著てるの？　なんて聞かれたら……そりゃ言うよね。てかぶよね。“男の子ですけどぉ！？”って。

學式が始まる前に、下手に目立ってしまった僕は顔を真っ赤にして俯いたままになってた。

「てめ、いつまで恥ずかしがってんだ。顔上げて聞いとけバカ。寢てんと思われっぞ」

「ご、ごめん一真かずま……。いやもう恥ずかしくて恥ずかしくて……」

「っは、三年も経っといて本當変わらねぇのな？　ったく、こりゃ高校も気ぃ抜けねェぜ」

僕の隣に座っている、ボッサボサの黒髪に三白眼、すでに制服を著崩している素行不良っぽい男子生徒、羽間はま一真かずまは、小學校中學校と一緒だった僕の友達だ。

名前の順で座らされてるから偶然二つ飛びという近くに座ってたんだ。

久々だなあと挨拶をわしたら無理やり一真が僕の隣に座ってきたんだ。元いた男子生徒を押しのけて。

いやまあ、知り合いがいたっていうこれが、唯一の救いだったわけなんだけどね。

《はいそこー、おしゃべりしねーで聞くですー》

金髪生徒會長の青い瞳が僕たちの座っている場所に向けられた……。あんまり大きな聲で話してないのに……耳いいなあ。

「チィ……。ほらみろ」

「いや、これ喋ってたからだよね。僕が顔伏せてたの関係ないよね」

生徒會長の注意をけて僕と一真はおとなしく、そこからあと４０分はある學式を耐えることになった。

……——。

「酒じゃ。酒が要る」

朝、學校へ行く千草を見送ってからここずっと、溫泉に浸かっていた銀はなにやら思い出したかのようにその言葉を口にした。

「そろそろ稲荷霊山の大行列が行われる時期のはずじゃが……」

頭の獣耳をピンと立てながら湯船の縁に片腕をかけ、湯船に浮かべた酒盆からおちょこを取り、グイッと日本酒を呷あおる。口の端から溢れた艶やかな酒の雫が、湯に浮かぶ満なの谷間にり落ち、濡らした。

すでに酒ならあるように見えるのだが……。

「殘りなかった霊醸酒は、酒瓶ごと千草が割ってしもうたからのー」

どうやら、この神様が求めているのは普通の酒ではないらしい。