しばらくすると、あの巨大なヘビも白い人たちも消えていて……拘束されてた子鞠も自由になっていた。

その場に殘ったのは、畳の上にぺたんと座った僕と子鞠、黒髪狐の男の子をつまみ上げてる狐面の九尾様と、煙管をだして口にくわえた銀だけ。

外は隨分と騒がしい。どうやら、山道に化けて頂上にたどり著けないようにしていた巨大ヘビがいなくなったおかげで、神様の行列が続々とここへ向かってきているようだった。

「子鞠、ようやったの。隨分良い遠吠えじゃった」

「あにさまたいへんだったから、こまりがんばった……」

「くふふ、そうかそうか、千草によう懐いたのう」

そして、僕も子鞠に謝の意を表そうとお禮を言うと……。

「うん……！」

頭の小さなお耳をぴこぴことかして、尾を嬉しそうに大きく激しく振るものだから、とてつもなくらしい反応に……かわいいなあ。

やっぱり狼と言っても子供なんだよね。汰鞠や銀はどことなく怒らせたらヤバいじというか、こう……目の奧に眠るギラギラとした獣というかが見て取れるけど、子鞠は全くそんなことないもんなあ。

「ふん、しかし千草が狙いでこんな騒ぎを起こしたとはのう。どこぞで監視でもされておったか」

「ごめんね銀……」

「うん？　ぬしが気に病むことではないぞ？　くふふ、落ち込んだぬしもういの！」

ぐりぐりと頭をでられながら、艶っぽい聲でそう言う銀。気分がし落ち込んでしまったかと思いきや、うまく拾い上げてくれた。

「なんじゃ金こんもうの……その反応は」

「銀狼様の、そこな人の子に対する反応が気持ち悪いと」

「なんじゃと山神ぃぃ！！」

「僕じゃないですぅぅぅっ、きゅーびさまがぁぁ、ふぃたいれふぅぅあわわわわ」

ドン引きしている……っぽい狐面の人につまみあげられている、い山神様の頬を両手で思いっきり引っ張ってる銀。

うわあ、びるびる、もちもちだあ。

いや、それよりなにより、狐面の人の引き合が面白いな。なんだろ、銀ってそんなに他の人を可がったりすることはなかったのかな？

「わしとて気にったものをでることくらいするわ！　まったく……それよりほれ！　酒じゃ、酒！　山神、酒をもらいに來たのじゃ！」

「あわわわわわ」

「……？　何を慌てておる。怒っとるわけではないのじゃぞ？　酒を分けてくれと言っておるのじゃ。このいけすかん狐にも許可は取って……」

「あ、あのあの……その……神酒が……」

その走り出しの言葉を聞いて、銀と……そして狐面の人も同時に揺しだしたみたい。

空気がし張り詰めたもの。

「無い……とは言わんじゃろうな？」

「い、いえ……あることにはあるんですぅぅ……。で、でもでも、低階位、中階位の皆様にお配りする神酒はあるんです……。ですがそのぉ……、高階位の皆様にお配りする分が……蛇姫様に持って行かれてしまってぇぇ……！」

「んじゃとォ！？」

銀激おこだよ……。神様の中でもとても偉い、偉い、微妙に偉い的な階級があって、それぞれにふさわしいグレードの神酒があるんだって。

銀は一番上のグレードの神酒をもらえるはずなんだけど、ただでさえないそのお酒は蛇姫様がかっぱらって行っちゃったみたいで……。

「ぐぬうううう……！！」

「うわぁあんっ、どうしましょうきゅーびさまぁあ」

鬼の形相を浮かべてとてつもない負のオーラを放つ銀に怖がって、山神様泣いちゃった……。

助けを求められた狐面の人はどうするんだろうか？