「山神様、あれはなんですか？」

あの水晶のようなしいが気になった僕は、じっと様子を見守る山神様に質問したんだ。

「えへへー、あれはねぇ。酒解神様からいただいた、酒造の玉なんですよー。ただのお水に溶かすだけでも、お酒になってしまう大変貴重な石なんだよ！　すごいでしょ！」

「僕お酒飲めないから凄さがわかんないや……」

「ええ、人の子はお酒が飲めないのですか！」

「年齢的にね……」

どうやら、あの石を酒の泉に溶かすと神酒が出來上がるみたい。その石を溶かす量を多くすれば多くするほどより強い力を持つ、味しい神酒が出來上がるんだって。

大きく切り取られた青いを帯びた石は、ゆっくりと泉に降りて行って……砕けて泉の中へ沈んでいった。

「それはもったいないよう、あんな味しいものを飲めないなんて……」

「うぅ……そこまで言われるとなんだか飲んでみたくなるじゃないですかっ」

「くふふ、帰ったらわしと酌みわすか、千草。大歓迎じゃぞ？」

山神様との會話を聞いていた銀が、間に割ってってきて悪戯な笑みを浮かべながらそんなことを耳元で囁いてきた。だから僕はまだお酒が飲める年齢じゃないんだってと念を押すと、人した時がたのしみじゃのと愉快そうに笑ってくれていた。

そんな言葉を聞いて思う。本當に銀は、ずっと僕のそばにいてくれるつもりなんだ。なくとも、ぼくが人するまでは。

「む、出來上がったみたいじゃな？　かかっ、良よい香りじゃ」

青いを放っている泉から、ぶわっと湧き立つなんとも言えない濃厚な香り。まるでアイスダストのような青い粒子が舞って泉の周辺に漂ってる。これが神酒の醸造される場面なのか……。

なんだか不思議な高揚をじて、気分が良くなってきたぞ。

「人の子、このお酒を泉から汲み、運んでしいです！」

「運ぶの？　えっと……その酒樽で？」

底の深い風呂桶のような形をした酒樽を指差して、山神様はお願いしますと僕にお辭儀をした。

どうも、神気を使って浮かせて運んだり、銀や狐面の人のような強い神気をもつ神様が持ってしまうと、その神気が溶け込んで変質するみたいなんだ。

だから本來は、力の弱い神使に任せたりしていたみたいなんだけど……。

「な……何往復」

ここまで來るのに結構長い階段を降りてきたんだよ……。それを、あんな酒樽を抱えて……。

「僕と一緒に運んでも……えっと、上位神さまが今回６０柱ほど參られてるから、３０往復は……」

「さ……さんじゅ……」

「あにさま、こまもてつだぅ……」

「い、いいよ子鞠！　そんな小さな、で……」

子鞠はすでに、酒樽を三つ裝備してた。まず抱えてひとつ、そして頭に乗せてひとつ、しっぽで巻くようにして持ち上げてひとつの三つ……。

僕も持ってみたけど、これ普通に１０キロはあるんだけど……子鞠、その涼しい顔はどこからきてるの。