と、僕は長々と言ってはみたものの。子鞠にとっては難しい話だったみたいだ。ようかんを両手でつまんで、端からしずつ食べつつ首を小さく傾げてしまっていた。

そりゃそうだよね。子鞠はまだまだいし、僕はわかるようになってきていても子鞠にとってはわからないことなわけなんだし。

「あまま……」

「甘くておいしいよね。羊羹ようかんって言うんだよ」

「よーかん」

「そう。ようかん」

「あにさま、こまりよーかんすき……」

「子鞠の口にも合うんだね。ようかん。狼って食のイメージがあるからなあ。人の姿だと、食べの好みも変わるとか？　うーん、不思議だ」

僕の膝の上でちょこんと座っている子鞠……の、尾がもふりもふりと揺れている。とってももふもふ抱きしめたい、大きくて立派な尾。ろうとして、ふと止めた。尾は軽々しくれるものじゃないって銀が言ってたんだよなあ。

でも、っちゃいけない理由を教えてもらってないから、イマイチその重要が理解できていないというか……。子鞠のならっちゃってもいいんじゃないかと、そんな思いが一度は止まった僕の手を進めた。

 もうしで尾にれる……と、いうところで揺れている子鞠の尾が一瞬だけ挙が変わった。気付かれたのかな……でも本當に一瞬だったし、これくらいの挙の変化なんて頻繁に起こるし。

よしよし、今のうちにこっそりもふろう。と、僕は子鞠の尾を包むような形で手を持って行って……。

「これ、尾に気安くれてはならんといったじゃろ」

「うわ、銀！　いつの間に……」

もふろうとしていた手を、後ろから銀に絡め取られた。振り向いて見た銀の頰は、お酒を飲んでいたからほんのりと赤い。僕の腕を摑んでいる手にも熱がこもってる。

「まったく……見境がないとはこのことじゃ。そんなにれたいものかの？」

「もふもふしたいんだけど……」

「に正直じゃの。子鞠、ぬしも千草がれようとしていることに気づいておったろう」

「あにさまいいひと。あにさまなら、もふもふいい……」

子鞠は相変わらずようかんを食べながら、その尾を僕のに預けるようにしてしなだれさせてきた。

「まぁ、仕方ないのう。子鞠はまだい。そういった意味を理解させようとするのも酷じゃな」

「うわ、すごいらかい！　あったかい！　もふもふ！」

「ぬしも遠慮がないのう！」

僕は初めて、もはや抱き枕じゃないかと思うほどの尾にってみた。ものすごくらかい。尾のに指が沈み込んで、とても暖かいんだ。並みに沿ってゆっくりとでてあげると……。

「んぅ……」

子鞠はなんだか艶っぽい聲を出して、お耳と尾をふるふると細かく揺らした。どうにも、くすぐったいみたいなんだ。

あんまり刺激を與えないようにゆっくりでてあげるのがいいのかな。

「あにさまくすぐった……」

「あ、ごめんね、子鞠」

ひとしきり尾を堪能した後、隣に座ってきた銀とお茶を飲むことに。子鞠はなぜか山神様に呼ばれてお酒配りの場所へ行ってしまったんだけど……。

「相変わらずここからの眺めは無駄に良いのう。昔と一つも変わっておらん」

「そんなに昔から、この大行列行事があるの？」

「うむ。神酒を呑むにはここで並ばなければならんからの。これほど清く力のある酒はそうそう手にるものではないのじゃぞ」