逃げようとする蛇姫をひっ捕え、恐ろしく冷たい笑みを浮かべた九尾狐に表を強張らせ、どこか助けを求めるような目を銀に向けたが……。

「いい機會じゃ。ようく灸を據えてもらうとよい」

けの一つもかけてもらえず、むしろ仕置を肯定するような言葉をかけられ……。

「わ……わっちゃあ痛いのは嫌でありんす」

「大丈夫ですよ、すぐに嫌じゃなくなりますので」

「わっちゃあなにをされるのかやっ！！」

……——。

そろそろのぼせてしまいそうだったから、僕は汰鞠と子鞠と一緒に湯からあがって著替えて大きな切り株の椅子に座って銀たちを待つことに。

汰鞠は僕の隣に座って、子鞠は僕の膝の上。

子鞠のしクセのある髪の水気を、タオルを使って取って乾かしてあげてるとこ。

「んー……」

「はい、できたよ子鞠。ちょっと乾くとふわふわになったねー！

「ふわわ……」

子鞠の髪はほんとにふわふわでってると気持ち良いなぁ。

わしゃわしゃしてあげると子鞠の尾が嬉しそうに揺れて、隣の子鞠がその尾をそっと手で押さえた。

「子鞠、兄様のお顔に當たっていますよ」

「あっ……ごめんなさい、あにさま」

「いいよいいよっ。全然痛くないから！」

尾が顔に當たってるからといってなんの問題もないし、むしろ不破くすぐったくて心地いい。とっさの時の銀の尾での一撃は別だけど。あれは痛い。

「やあやあ千草君。ご無事で何よりです。最後までお助けできなくてもうしわけねーですよ」

「いえ、大丈夫でした。銀も來てくれましたし……」

もはやいつもしていた狐面で顔を隠すこともしなくなった九十九生徒會長。

いかにもお風呂上がりだという艶やかな金髪と、大きな狐耳、そして仕立てのいい朱の著。

そして何より、後ろに見える九本の大きな尾！

九尾狐が九尾である所以であり、その力の強さを示す部分はすっかり乾いてありありともふらせオーラを放ってる。

僕がこういうのもなんだけど、九十九さんは銀と黒の銀とは対照的にとんでもなく派手な神様なんだよね。

「わしがついておる限りうぬの助けなぞいらぬわ」

「ほお、よく言いやがりましたね！　私が千草君を保護しなければここの遊たちの餌食になっていたところだというのに！」

「喧嘩するのはいいけど……その前になんで蛇姫様そんな涙目で震えてるのか教えて」

銀の著を摑んで離れようとしない蛇姫様は何があったのか涙を目一杯に溜めて震えてる。

「こやつの仕置をけての。反省中じゃ」

「もう二度とこんなことをしないよう躾けておきましたので、これからは安心ですよ、千草君」

「な……何されたの蛇姫様……」

「わっちの口ではとても言えぬ……」

「なんでそこで赤くなるの。ねえなにされたの、千草気になっちゃう」