「あははっ、尾に寢癖ついてるよ」

「んん……あの蛇が抱き枕にしとったからの……」

もふもふの尾を僕の膝に預けてくれて並みを整えてあげていたら、綺麗な銀のが逆立っているところがあった。

昨日は夜刀の部屋が用意できなくて、銀と同じ部屋で寢てもらったんだけど……その時に銀の尾を抱いて寢てたんだって。

「まったく、奴も相當無禮者じゃ。祭りの朝でなければ山に捨てておったところじゃぞ……」

「銀もお祭り好きなんだね」

「昔は盛大に祀られておったからの。祭りに直接參加したことはないが、遠巻きに眺めて楽しそうじゃとは思っておった。娯楽のない儂にとっては目の毒じゃったの」

行われる形態によって様々なんだけど祭って神仏、祖先に謝や祈り、霊のために行われる儀式なんだよね。

銀は祀られる側だったから參加なんてできないだろうし……。

銀からすればただドンチャン騒いでる人を眺めているだけの行事でしかなかったのかな。

「供の酒がたらふく飲めるだけの行事じゃった」

「なんだかんだ結構楽しんでるじゃん！」

「うまい酒ではなかったがの」

「贅沢言ってる！　もーそういうとこあるからなあ銀は！」

尾をわしゃわしゃと羽立ててあげると銀は耳をぴーんと立てて嫌がった。

「んぼっふ！　いたっ、いたた、痛いよ銀！」

仕返しに尾で何度も顔をぶたれたけど尾で叩かれてもモッフモフだから痛くないけどね。

むしろ尾のほんわりとした匂いを嗅げていいけどね。

一応痛がっておかないと銀の気が晴れないから！

「まったく、ぬしは時折やんちゃが過ぎるの」

「ごめんねー」

「よいよい、ぬしのそういうところもわしは気にっておる」

落ち著いた銀は煙管を元から取り出して指先に銀の火を燈し、その火を先端の火皿に落とす。

そうして吸い口に口を當てると煙を吸って……。

「ふぅー……」

「銀、お祭り一緒に回ろっか」

「うん？　なんじゃ、わしはとっくにそのつもりじゃったぞ。そのための浴も用意しておるしの」

銀の浴は母さんが用意したんだって。やっぱりお祭りには浴だよね。

「……銀、気になってたんだけど今日ちょっと顔赤いね。調子悪いの？」

「がよう巡っておるだけじゃ気にするでない」

「やっぱり発期とか関係あるの？」

「……」

銀はし恥ずかしげに目だけかして僕をちらりと見ると、すぐに向き直ってしまった。

「きひひ、今は真っ盛りのはずでありんす。正直よくおとなしくしているものじゃと心させられるのじゃ」

「夜刀、おはよー」

「う、うむ……おはよーなのじゃな」