落ち込む僕の頭をポンポンと優しく叩く伊代姉は詩織さんを見ながら……。

「男が舞ってもいいなんて結構いい加減よね、伝統なんて……」

「今の神様はに寛容なのよぉ？　伊代ちゃんったら遅れてるぅ」

「うにゃ……まあ変わらないことをむ神様もいるっちゃいるだろうけどにゃー。伝統ってのも時代とともに変わったりするものにゃん。多分」

「さすがみゃーちゃん、わかってるぅ」

しばかり呆れ気味の伊代姉とハイタッチをわす詩織さんと哉さん。

なんだかんだ言ってこの三人はうまくバランスが取れているみたいだ。

「……」

「千草？　どこ見てるの？」

「え、あ、ううん。なんでもない」

ふと伊代姉や詩織さんの足元に視線を移してじっと見てた。それに気づいた伊代姉が怪訝な顔でそう尋ねてくる。

そりゃそうだろう。突然電源を切ったかのようにかなくなって視線を集中させていれば。

《ハワハワ、ワワワワ》

《ハワワ、ハワワワハワワワ》

（なんかすっごい集まってきとる……！！）

僕の額に汗がにじむ。

なんだろう、タンポポの綿のような小さくて丸いが伊代姉と詩織さんと哉さんの足元にわっさりと寄ってきてる。

すごいはわはわ言っててなんだか忙しない。

伊代姉たちには見えてないし害はなさそうだから放っておいても大丈夫なんだろうけど……。

「うにゃん……」

「どぉしたのぉ？　みゃーちゃん」

「んーん、なんでもないにゃん。そろそろここの巫にゃんがくるはずにゃん」

お祭りだからだろうか。

この綿たちだけじゃなく、ふと周りを見渡したら結構いろんなのがいる。

向こうの木にはお猿さんの形をした影がいくつかはっきりと見えるし……ほおずきをくわえた金魚のような淡い赤いが空中を漂ってるのも見える。

小さな人型のが走り回ってるのも見えるけど……あれ迷いじゃないよね……？

「みゃっ！」

《ハワー》

《ハワワッワワワワ》

……と、大きな竹箒のひと掃きによって謎のはわはわ綿たちがわっさあと散っていった。

その竹箒攻撃をしたのは……。

「失禮しました。お集まりいただきありがとうございます。柊さん、三弦さん、加賀さん。最後の稽古をしますのでこちらへ」

鬼燈翠。この月並神社の巫にして僕の同級生だった。

「それじゃあ千草、ちょっとの間他のところ手伝ってあげて」

「うん。わかった！　多分カズマももう來てるだろうから力仕事手伝ってくる！」

「ん、いい子」

こしょりと僕の顎の下をでてから、伊代姉は鬼燈さんについて行ってしまった。

詩織さんも振り返って僕に小さく手を振ってくれて、僕も手を振って見送った。

穣舞踴の最終稽古、いわば本番にむけた調整だろうな。

「さあて……僕は舞臺の設営に混ざろっかな」

散ったはわはわ綿が頭について、それをつまんで取ってから僕は穣舞踴が行われる舞臺の設営班のところへ向かった。