すっかり日も落ち、辺りも真っ暗となったため、俺は「暗くなってきましたから、明かりつけますね。」と言いながら、即席の魔法で明かりを燈す。

中空に浮かび、制止した球は、皆の顔を煌々と照らし出した。

俺があっさりと出した球を、何故かその場の全員が驚いた表で見つめている。ん？この位なら問題ないと思ったんだが…これでもなんかまずったのか？

皆口々に、「なんだあのり方は！？まるで太じゃねえか！」とか、「全然熱くないぞ！どうなってるんだ！」と、ザワザワとしていた。そんな周りが戸っている様子を見て、俺も戸っていたところにリリーが聲をかけて來る。

「あの、ツバサ様。あの魔法は燃えてもいないのに、なんで明るいんですか？」

俺は、その問いかけに目が點になる。

はい？つまり、もしかして、っていう概念が無い？もしくは、それだけを出する魔法が無いとか？

ちょっと焦った俺は、リリーに矢継ぎ早に質問をする。その結果、俺はこの獣人たちの知識レベルが致命的に低い事を痛した。

なるほど…だからこそ、魔法の研究も進んでいない訳か。もしも、異世界が基本、こんなじなら、これは相當厄介だぞ。

ちなみに、と言う概念は、皆持っていたが、それが燃えているからしか取り出せないという解釈だった。と言うは燃えているからこそ存在するという固定観念がある為、そのものを生み出すという発想に至らないのだ。正に、思考の直化を如実に表した例であると言える。

とりあえず、簡単な説明を行って、皆を煙に巻いた俺だったが、正直、この狀況は恐いなと思っていた。

知識とは、判斷の指標となるものなのだ。知らない事で判斷を誤る事も多々ある。

もし今のを、神の力とか言い放っても、知らないなら判斷できないだろう。そういうかと思ってしまう。

そこから、話を巧みに使えば、神の使いとなった俺がこの村の権力だって奪い取る事が出來てしまうかもしれないのだ。いや、やらないけどさ。

魔法の水準や、生活レベルを上げる為にも、やはり教育は必須だなぁと、改めて痛する。

もし、この村に長く滯在する事になるなら、ちょっと々やってみようと、心に決める俺だった。

とりあえず、今回は、俺の株が何故かまた上がっただけで済んだ。

男衆の皆や、何故かリリーからも、尊敬の目で見られたが、もうどうにでもして…と言うじである。

結局、ダラダラと長話になるのも何なので、俺は、やけくそ気味に、全員に時限式の球を作って配ると、解散をした。

後日、ベイルさんから言われたのだが、獣人族は夜目が聞くらしく、実は球は必要なかったと知って、頭を抱えたのは緒である。

家へと戻り、囲爐裏の前に座った俺は、リリーからお茶を注いでもらった。今度はカムルとかいうお茶ではなく、紅茶に近いもので何かを発酵させたお茶だった。し渋みがあるの、とても飲みやすく、その味を楽しんだ。

リリーは、俺が村の男衆から認められたのが嬉しかったのか、始終ご機嫌だった。

「流石は、ツバサ様です！」と、何故か得意げに、そして楽しそうに話している。耳も尾も快調にいていた。

そんな風に、リリーと談笑していると、レイリさんが居間へと戻ってきた。

その表には、やりきったという満足が張り付いている。

そして、満面の笑みで、俺に話しかけてくる。

「ツバサ様、お待たせしました。ルナ様の召しが出來ましたよ。著付けも完璧です。」

余程の自信作なのだろうか。それはもう嬉しそうだ。

「お手數をお掛けして、申し訳ないです。」と俺が頭を下げると、レイリさんは、

「いえいえ！むしろ、ルナ様のようにお綺麗な方の召しを作る機會が頂けて、私も嬉しゅうございます。」

と、何やら興気味に話す。うーん、そこまで言われると、ルナがどんなじに仕上がったのか気になるね。

あれ？ところでルナはどうしたんだ？と不思議に思い、何気なく探知をかける。

どうやらルナは扉を１枚隔てた直ぐ橫の部屋にいるらしかった。ん？どうしたんだろうか？

ん？もしかして、恥ずかしがってるのか？と、當たりを付けつつも、俺はレイリさんに聲をかけた。

「ところでその主役のルナはどうしたんですか？」

と、聞きつつも、俺はルナの潛んでいるであろう扉にチラリと視線を巡らせて、レイリさんを見る。

その一瞬でレイリさんは、俺の意図を酌んでくれたのだろう。ニコリと微笑むと、

「そうですねぇ…。どうしたのでしょうか？」と訝しげに聲を出す。もっともその表は楽しげだが。

そんな俺とレイリさんの様子に全く気が付いていないリリーも、不安そうに「ルナさんどうしたんでしょうね？」と首を傾げる。

俺は更に、畳み掛けるように

「うーん、折角ルナの晴れ姿を楽しみにしてたのになぁ…。早く來てくれないかなぁ…。」

若干大きな聲で、そう嘆く。

その様子に、レイリさんは笑いを止められない様に、「フフフ…」と、失笑をらす。リリーも「ルナさーん？大丈夫―？」と一緒に聲をかける。

そんな俺の聲を聞いたからだろうか。扉越しのルナに、息を呑んだような気配があった。強化している覚で辛うじて分かる位の小さな反応ではあったが。

そして、一瞬の躊躇ためらいの後、ルナはその扉をゆっくりと開け放った。

扉の向こうには、恥ずかしそうにたたずむ、何とも可らしい、ルナの姿があった。

元々真っ白いエプロンドレスだったのだが、所々に赤い布をあてがい、スカート部と、手首の部分には、レースのような刺繍のった裝飾が施されていた。スカートも、単なる単ではなく、何枚も重ねる事でフリルのようなヒラヒラを表現してあった。

更に、中でし形を補正しているのか周りに広がった形となっているため、らしさを引き出す事に功している。

の部分は、エプロンに隠されているものの、慎ましくもをじさせる丸みがあり、逆に腰はし細めにしまっているため、その対比で更にらしい丸みをじさせることに功していた。

髪も、赤と白の刺繍のったリボンで結わいており、頭の左右から尾を生やしたツインテールとなっていた。

その艶やかで白銀にる髪は丁寧にき通されて、今まで以上の存在を放っている。

足には、黒のロングソックスとも呼べるものを履いており、スカートの中に消えているのでその先は分からないが、足の形をより綺麗に見せているのだ。

そんな風に変とも言えるほど、綺麗に可く著飾ったルナは、頬を真っ赤に染めながらも、ちょっと上目づかいで俺の方をモジモジしながら見つめていた。手を後ろに回し、恥ずかしがるルナはこれまた新鮮で、新しい服裝と相まって、しばし俺は言葉を失い見惚れてしまっていた。

久々に、ルナの核弾級の可さに、どうにかなってしまいそうだった。

やはり、著飾ったって、化けるよね。どうしてこんなにもらしくなってしまうんだろうか？これこそ、魔法ではないのかと思ってしまう程だ。

そんな俺の様子を、ルナは心配そうに見た後、「ツバサ、変かな？」とし不安な顔で聞いて來た。

そこにいたって、俺は再起を果たすと、慌てたようにルナに聲をかける。

「い、いや、免。ちょっとあまりに綺麗だったから、見惚れちゃったよ。やっぱりルナは著飾るともっと可くなるね！本當に良く似合っているよ。リリーも似合っているけど、ルナが著ると、また違う魅力をじさせるね。」

そんな俺の言葉に、レイリさんも「お綺麗ですよ。ルナ様。」と、聲をかけ、リリーも、「凄く可いですよ！」とべた褒めだった。

俺達のそんな言葉を聞いて、安心したのか、ルナは「んふふー」と、屈託のない笑顔を浮かべるのだった。

ルナは、トテトテと俺の橫に歩いて來ると、ストンと、座り込む。そして、俺の顔を見上げながら、「えへへー」とちょっとしまらないが、非常にらしい笑顔を振りまいて來た。

俺はそのルナの笑顔に、一瞬顔を赤くするも、黙って頭をでてやった。

そんな様子を見ていたリリーが、何かしそうな目で俺を見ていたことも、レイリさんがそんな俺達の様子を微笑ましく見ていたこともわかってはいた。しかし、俺は目の前のルナをでまわす事しかできなかったのだった。

そうして、暖かい時間が過ぎて行き、夜も更けて來たので、俺達は就寢する事になるのだが…ここでまた一悶著が起こる。

ルナが俺と一緒に寢るとごね始めたのだった。

「やー！！ツバサと一緒に寢るの！抱き合って寢るの！！」

と、俺の人生をんな意味で終わりにしかねない発言を繰り返す。ルナさんや、俺をそんなに犯罪者にしたいのかね？

それを聞いたレイリさんは、「あらあら…」と、し困ったようなちょっと楽しそうな表を浮かべ、リリーに至っては、

「そ、そそそそそ、そんな！だ、だ、だだだ男の方と、い、い、一緒に…ぷしゅー」

と、壊れた再生機のようになった挙句、勝手に真っ赤になって轟沈した。

相変わらず期待を裏切らない子で俺は非常に嬉しいが、今はなんとかルナを引っ張って行ってしかった…。

俺は、約束事の件や、リリー達と寢る事も大事なんだよ？とそれとなく導するも、ルナは頑として首を縦に振らないのだった。

仕方がないので、俺は妥協案を提示した。

とりあえず、１日づつ代で一緒に寢る人を変える事。

初日は、しょうがないから俺で良いとして、次の日からは、リリーやレイリさんと一緒に寢る事。

ちゃんと約束を守れたらまた、俺と寢ても良い事にした。

ルナは最初、それでも難をしめしていたが、俺が本當に困っているのが分かって來ると、しぶしぶ頷いてくれた。

そして、レイリさんやリリーにも、別にやましい事は何もしていない事を言い訳したうえで、徐々に俺離れをさせたいので、協力してほしい旨を伝えた。とりあえずリリーは頭から煙を出して轟沈しているので、レイリさんと話したことになるが、了承頂けた。

ああ…レイリさんが大人で本當に良かった。唯一俺の心を分かって、頼らせてくれる方だ。俺は猛烈に救われている！！

そんなレイリさんに俺は、謝しつつ、今は茶を飲みながら寢床の用意が終わるのを待っている。

俺がやると言ったのだが、今日は自分にやらせてくれと、レイリさんが譲らなかったのだ。

ふう、なんだか激の一日だったが…ようやく今日と言う日も終わる…。

まさか服を得るためにここまで々起こるとは…。

そんな傷にも似た気持ちを抱きつつ、俺は靜かにお茶すする。

そうしていると、扉をしだけ開いて顔を出したレイリさんが、

「ツバサ様、床の準備が整いました。」

と、聲をかけてくれた。俺は、「ありがとうございます。」と、禮を述べると、部屋へと向かう。

靜かに扉を開け、がらない様に扉を閉めた俺の目に飛び込んできたのは、

３組敷かれた布団の１組の中でワクワクした顔でこちらの様子を伺うルナと、

ルナの左隣に此処へどうぞ！とこれ見よがしにスペースを開けられた俺の布団と思われるものと、

更に左隣に、完全に目を回して寢ているリリーを抱きつつ、布団の上で足を崩しこちらを艶っぽい目で見つめるレイリさんの姿だった。

「ちょっとぉぉおおぉおおおお！？レイリさあぁぁああああん！！？？何やってんすかぁぁぁぁぁああ！！！」

俺の絶が今日も響き渡る。俺の一日はまだ終わりそうになかったのだった。