合流したリリーとお姫様は、そのまま、當たり障りのない會話を続けながら、建屋の中心に位置する部屋へと足を運んだ。

その道すがら、時々、お姫様から突き刺さる様な視線が無遠慮に送られて來る事もあって、俺は口を開かず、その様子を見守るに留める。

はぁ、どうしたもんかね。ま、お姫様の気持ちも分からんではないけど。

チラチラと刺さる様にニアミスする視線をけ止めながら、俺は心でそっと溜息を吐く。

俺自、嫌われるのは仕方ないと思っている。

今迄の経緯もあるし、誰にだって、相の悪い人はいるだろうしな。許容できない人がいたって仕方ない。

それに俺は、この手の理不盡な敵意には、幸か不幸か多耐もあるし、慣れている部分がある。

一瞬、どす黒いと共に、凍える様な験が脳裏に過るも、俺はそれをけ流した。

もう、過ぎた事だ。今更どうにかしたいという訳ではない。

ただ、いつも、心の隅に過る思いはある。

もっと上手くできなかったのだろうか？

どうすれば良かったのだろうか？

その問いに対する完璧な答えは、未だに見つかってはいない。

だが、答えに至る微かな道のようなは、見えた様な気がしていた。

気がしているだけかもしれないけどな。

そこは、追々、手繰って行けば良い。々、試行錯誤しながら、人生の全てを費やして見付かればラッキーだろう。

結局、その位で良いんだと思う。

ただ、俺はそれで良いにせよ、このままにしておくと、近いうちに、関係に修復不可能な亀裂がる事は確実だと俺は思っていた。

勿論、俺と彼ではない。リリーとお姫様の間に、である。

これがまた、非常に面倒な事になりそうなのだ。

だから、殘念ではあるが、最悪の場合、ある程度俺が介する必要がありそうだ。

そうならないと良いんだけどな……。

テーブルを挾んで向かいに座るお姫様を、リリーの肩越しに見つめつつ、そんな事を考えるのであった。

「留學する事になったの」

お姫様の切り出した言葉は、そんな一言だった。

その言葉に、リリーは特に反応する事も無く、その先を促した形となる。

そんな対応が當たり前の様に、お姫様も気にした様子無く、その続きを語る。

「単刀直に言うわ。リリー、私と一緒に、來てしいの。最近、街道に害獣が現れると言う噂もあるし」

「ツバサ様と一緒なら良いですよ？」

シンプルな問いに対して、これまたシンプルな答えを返す両人。

そんなリリーの答えに対し、お姫様は、元々吊り上がっていた眉を、更に引き上げる。

そして、溜息を吐くと、そのまま、首を振った。

「それは認められないわ。今回は、長くなりそうだから」

「では、殘念ですがお斷りします」

「しは、考えてくれても良いんじゃないかしら？」

分かっていたという様に、苦笑するも、お姫様の落膽は俺にも分かる程強いようだ。

まぁ、取り付く島もないと言うじだからな。

「ツバサ様と離れる事は、考えられませんから。それは、リザも良く分かっているでしょ？」

前回、姫様と呼ばれた事が堪えたのか、一瞬、彼の表が緩むも、俺の視線に気が付いたようで、また眉を歪ませる。

うーむ、しかし、分かり易い程、盛大に嫌われたものだ。このままじゃ拙いかなぁ。

そう思っていた所、お姫様は何かを決意した様に、その瞳に何かを宿らせると、口を開いた。

「こんな事は言いたくなかったけど……仕方ないわ」

一瞬、目を伏せ、間を置くも、彼はすぐに顔をあげ、冷たく、淡々とその言葉を口にした。

「リリー、その赤子を他に預け、単獨にて私の護衛の任に著きなさい。これは王・命・です」

あ、馬鹿。それは彼に対して一番やっちゃいけない事だぞ！？

そんな事言ったら、彼はきっと……。

「お斷ります」

ああ、もう、こう答えるに決まっている。

彼の優先順位は、あくまで俺だ。それは、森を出た時から一貫して変わらない。

それは、きっとこのお姫様の前でも変わっていなかったはずだ。今までのやり取りを見たら、それは分かる。

だが、お姫様の認識は、俺とはズレていたようだ。

「リリー？　王命よ？　意味か分かっているの？　斷る事なら、反逆の意思ありと見なされてもおかしくないのよ？　賢い貴なら、それくらい分かっているでしょう？」

ふう……お姫様、あんたこそ分かっていない。リリーの本質を全く分かっていないよ。

俺のそんな心の聲を、まるで反芻するかのように、リリーが口を開く。

「あなたこそ分かってないわ。私にとってツバサ様は、絶対なの。全てなの。今まで、その為に生きて來たと言っても言い過ぎではないわ。それをリザは捨てろと言うの？」

「別に、危害を加えると言っている訳ではないよ？　ただ、貴方の任務の事を考えれば、連れて行くのは危険が伴うでしょう？　これは、ある意味貴の事を思ってでもあるのよ？」

この言葉をけて、今迄、平坦だったリリーの言葉に、怒気が混ざり込む。

「それこそ、いらぬお世話です。私は、ツバサ様がいればそれで良いの。それを引き離されるなんて、死んでも嫌です」

「いい加減、我が儘はおよしなさいな、リリー。もう、貴の存在は貴一人のでは無いの。この國にとって必要ななの」

お姫様も、そんなリリーの突き放す様な言葉に、食らいつく様に言葉を荒げた。

「そんな事、私には関係ありませんよ」

しかし、リリーはその一言で全てを振り払う。儘ならない狀況を悔しがるかのように、をかみしめる姫様。

うーん、こりゃ、駄目だな。二人とも、熱くなりすぎている。

どちらも、ちょっとだけでも譲歩できれば、すんなり解決しそうなものなんだがな。

しかし、俺の思いは二人に屆かず、更に、話は悪い方へと転がって行った。

「貴……そ・れ・と、私達全てを天秤にかけると言うの？　それでもなお、それを取ると言うの？」

お姫様は、俺を指さしつつ、殺す勢いで睨みながら、そう聲を荒げた。

それに対し、リリーは一旦、瞑目し……

「そんな簡単な話じゃないのは分かっているけど、もし本當に……それしか道がないのなら……」

そう言葉を區切った後、更に深呼吸すると、続く言葉を吐き出す。

「私は、躊躇ちゅうちょなくツバサ様を取ります」

それを絶的な表を浮かべながら、け止めるお姫様。一瞬、のけぞったようにも見えた。それは、リリーの言葉が彼にとって、如何に重かったかが伺える。

だが、お姫様はそれで、諦めない。食って掛かるかのように、を吐した。

「ふ、ふざけないで！？　貴の為を思っての事なのよ！？　貴が、そんなんだから、心配で……」

「余計なお世話ですよ、姫・様・」

だが、それもリリーには既に屆かない。彼が吐き捨てる様に呟いたその冷淡な一言で、お姫様はその目に涙を浮べる。

「……っ！！！」

しかし、この二人……アホみたいに不用すぎるだろう……。もう、しょうがないな……全く。

心、呆れかえった所で、一周回って尊敬すらしそうになるよ。本當に見事なまでにお互いの意思が噛み合わない。

「そ、んなに、そんなに……わ、私よりも、それが大事な、ら」

「それじゃありません、ツバサ様です。いい加減、その呼び方はやめて下さい。不愉快です」

リリーの冷たい一言に、お姫様は、人目も憚らず涙をその目から溢れさせる。

だが、それでもリリーはそんな彼に無機質な視線を注ぐだけなのが、その様子から見て取れた。

それを、首を振りながら、涙を流しつつ、見つめるお姫様。

「そん、な、なら、も、う……もう……」

あ、これもうダメだわ。リリー、君も君でやり過ぎだから。全く……あんまり長しとらんじゃないの。

これ、完全に絶しちゃってるじゃない、このお姫様。ちょっと追い込み過ぎだよ。

俺は心で言葉にならない聲を上げ、お姫様が致命的な何かを口にしようとしたその時……

「あうはい、あぶーースト―ップ」

俺の、何とも間の抜けた聲が、この部屋に響いたのだった。

「あ、え？　……な、なに？　いま、の」

「ふふ、これがツバサ様のお力です」

完全に虛を突かれたようで、放心しながら、呟くお姫様に対し、まるで鬼の首でも取ったかのように勝ち誇っているリリー。

そのアホな発言を聞いて、イラッとしたが、まずは置いておく。

そういや、お姫様の前で喋るのは初めてだったな。

だって、いつも騒な視線をかけて來るんだもん。何となく喋るのが怖くなっちゃうしな。

そんな言い訳を頭の隅で考えつつ、彼の肩を2回叩き、この部屋唯一の窓へと俺を置くように指示した。

「はい？　どうしたのですか？　……えっと、はい、わかりました」

不思議そうに首を傾げるも、その命に従って、彼は、俺を抱っこ袋ごと、窓際へと丁寧に置き、窓を開けた。

よし、これで、魔力が補充できるので、使いたい放題である。

さてと、まずは、リリーだな。

俺は、良く分からないまま、俺に笑顔を向けながら様子を伺っているリリーに、笑顔を向ける。

何だか嬉しそうなリリーに対し、お姫様は俺のその笑顔から何かをじ取ったのか、嫌そうな表を浮かべた。

うん、お姫様、正解だ。

今の俺はいたずらっ子が浮かべる様な、純粋であるがゆえにいやらしい笑顔を浮べているであろう。

それを自覚しつつ、魔力を集めると、小さな風を起こし……リリーの獣耳へとそっと吹きかける。

「ひぁん！？」

変な聲を上げて直するリリーを目に、更に、風を起こし、緩急を付けつつ執拗に耳を攻めながら俺は、言葉を発した。

「ぶぅ～ああのね、あぶぁあううあ君らあまりにもう～～あうぅ～～不用すぎるよ」

そんな聲に、キョトンとしたままのお姫様。

そんなお姫様に対し、「ちょ、耳は、あん！？　ツバサ様、なんでぇー！？」とか、艶めかしいじになって來たリリーの聲をそのまま放置し、彼に罰を與えている理由を説明する。

「あぶ特にいいあーリリー！いあぁ～ううちょっと、うああいあいぃ～無神経すぎるぞ！！」

俺の言葉に、お姫様はその涙に濡れた目を、パチクリと可く瞬まばたきさせる。

それに対し、リリーは、「はぅ、あん、耳ふさ、いでも、やぁん！？」とか、悶えている姿が地味にエロいが、置いておく。

ちなみに、耳塞いだって防げないよ？　耳のに直接吹き込ませているんだから、塞いでも駄目です。魔法ってこういう時便利だよねー。ま、しは反省しなさい。

「あぶぅあまぁ、いぃ～あリリーがいやぁいあ至らないう～なああぁのもあるが、あうぶばぶぅ君も君だ。」

魔法を制しつつ、今度はお姫様に向って、口を開く俺。

そんな言葉に、ビクッとをすくませるも、「な、な何よ！？」と、一応、け答えをするお姫様。

その様子を見て、俺は、し強めに、言葉を伝える。

「あうあいや～～う自分の意見をうぶぅ～あぁ一方的におあやぁ～押し付けるうあやぁいやぁんじゃない。うやぁ～しはあぶぁうあぶ相手の気もうきゃ～あうおあぁ～組んであげないと」

「な、何よ！？　あんたなんかに、私の何が分かるって言うのよ！？　これでも、私は、リリーの為に……」

「あうあ～それがうぶぅ～あうあ～い何も考えてないぃあ～～～いあって言ってるの」

俺の語気の強さに圧される様に、口を閉ざすお姫様。

その目には若干の混と、それより多くの苛立ちが宿っていた。

そんな彼が、反論の為に口を開こうとしたのを見て、俺は更に言葉を被せる。

「あう～あぅあ自分の願と、うあいぃ～～きゃう相手の願を、ばぶぅ～う都合よくあぶばあ～あいすり替えてはあうぅ駄目だ」

先程より、更に強く、俺はその言葉を、無遠慮にお姫様にぶつけた。

その瞬間、彼の顔が強張ったのを確認する。どうやら、多の自覚はあったようだ。

ならば、大丈夫だろうな。

悔しそうに臍を噛む彼を橫目にしつつ、俺は未だに悶えているリリーへと向き直ると同時に、リリーの耳に風を送るのをやめた。

やっとお仕置きから解放されたリリーが、息も絶え絶えで、薄っすらと上気した頬と潤んだ眼をこちらに向ける。

熱い吐息が、自然とれ、悶えた際にれた著が、扇的な雰囲気を醸し出してしまっていた。

うん、これ、駄目な絵面だ。もう健全な青年ならアウトなじです。

こんな姿を団員の誰かに見られたら、大変な事になるのは火を見るよりも明らかである。

だが、幸いと言うか何と言うか、団員はこの近くには居ない。

どうやら、お姫様と會う時は、完全に人払いする事が、徹底されているようである。

そして、俺は赤ん坊になっているせいか、その景が扇的であると頭で理解できても、全く的な方向に反応できない。

いや、理的にではなく神的にだ。神的に反応しないので、理的には勿論無理。まぁ、赤ん坊だからどの道無理だと思うけど。

うーむ、やはりに引きずられているという事か。

そんな事を考えつつ、彼の息が整うのを待って、俺は口を開いた。

「あい～ぃリリー、あうああぃあう俺が何で君にあうあぃあ～～お仕置きしたかうぁあう分かる？」

そんな俺の問いに、彼は息を整えながら、首を弱々しく振る。

「あうぅでは、うぶぅ～あうやぁ～ぃ質問を変えよう。あぅあぃ今回、うやぅあ～うあそこのお姫様がうぶぅ～あう～あ取った行は……」

そこで一旦聲を區切り、リリーの目を見る。れた著を戻しながら、彼も俺を見た。

その目に、理解のが燈っている事を確認し、俺は続きを述べる。

「いやぁ～うぅあ昔に君達がばぶぅあ～えやぁ～う俺にした事とうぶぅ～きゃう～う同じ様な事だとあういやぁいうのは、あぶば～ばぶぅあ～う理解しているかい？」

一瞬、彼の耳がへにょりと形を崩すも、何とかすぐに復帰した。そして、彼は……俺を見據えながら、大きく頷く。

そう。今回、お姫様がリリーにした事は、昔、リリーとレイリさんが森で暴走した件と同じ様な問題を、底に抱いている。

どちらも、相手を大事に思いながらも、當人の意思を無視し、自分の意思で判斷したという所に、本原因があった。

リリーは、それを理解している。ちゃんと問題として、自で理解していた。

「あぶぅじゃあ、あぃ～何故、あばぁ～うきゃぅそこのお姫様にうぶぁ～あうお同じことをあうあぁぅ～あぃ繰り返させたの？」

「私は……彼の気持ちが何となくは理解できました。だって、昔の私と本當に同じだったから。だからこそ、私には彼に何か偉そうな事を言う資格も無いと思ってしまいました。」

自嘲するかのように、笑みを浮べ、彼は続ける。

「……でも、本當は……同時に、こうも思ってしまいました。今私がじているこの虛しさと憤りが、かつてのツバサ様のお気持ちと同じなんだって」

彼は抑え、その自分の気持ちをそっと支えるかのように、小さな聲で懺悔ざんげする。

「ツバサ様と同じ痛みを共有している……。それを私は、どこかで嬉しく思ってしまっていたんですね。たった今、それを自覚しました」

そうだろうとは思っていた。

彼は、本當に俺との繋がりだけを求めて生きている。

本來の彼は、ただ優しくて、一途なだけだった。

だが、俺があの教皇にやられてしまった事で、彼は一人になってしまった。

それは、元はと言えば、俺が不甲斐なかったばっかりに起きてしまった事。言い換えれば、彼の現狀は、俺のせいだとも言える。

「あぅねぇ、いぃ～リリー。あうぁ俺は、あうぁ～いやぁうぁ君のその気持ちをあう～やぅ～いや否定する事はうやぅあ出來ない。」

首を振り、俺は、そう彼に伝える。これは偽らざる俺の気持ち。俺も彼と言う程、変わらない訳だしな。

だが、それでも俺は自分のその未さを棚に上げ、彼へと更に言葉を投げかける。

「だうぁそして、うやぁ～いぁ正直に言えば、やぅ～あうぁ～あぶぅそんな嫌な事でさえ、ばぶぅ～いやぁ～ぅ俺とのつながりをきゃぅじて、あぅ～あうけ止めてぅ～～だぅくれる事は、うぶ～ばぶぅ～あうぁ嬉しいとすら思うよ。」

これも俺の本心。嫌な事すら、俺と言うけない存在を通して、け止めてくれたことは、個人としては嬉しい。

「あぶぁ勿論、あうぁ～やぅ一途に思ってうぶあぁ～きゃぅ～あくれているその心も、あう～あうぅ～俺は嬉しいとうやぁ～ぶぅ思っているよ」

だから、俺は、その気持ちはけ止める。肯定する。

まぁ、そりゃそうだ。リリーに思われる事は、嫌ではない。むしろ、栄ですらあるさ。

だけど、それでも……ハッキリさせなくてはいけない事もあった。

「ばうぅでもね、いぃ～リリー。ばぅ～あぅ～やぅ君がお姫様にうばぁ～うあぃしている事を、あやぁ～うもう一度、やぅ～あう～あぃ～うよく思い出してね。あばぁうその上で、うやぁうあ再度問うよ？」

俺の視線がリリーを抜く。彼はその瞳に俺を映し、そして、靜かに頷く。

「いぃ～あリリーは、あぅ～～あぶ～～あぃ俺と一緒に居たいぶぅ～あぅがために、うぶぅ～だぅ彼のみをあばぁ～あぅ一方的にうぁう～う斷ったよね？」

「はい……」

「あうぅ～うやぁその結果、あやぅ彼を……うばぁ最悪、うきゃぅ～あ世界すら敵にうぁう～あぅ～ぶぅ回しても良いと、うばぁきゃう～うそう思っていた。あう～あうぅそうだよね？」

「はい、それが私の偽らざる気持ちですし、微塵の迷いもありません」

その目の奧、彼の想いの強さが見える。

やっぱりそうなんだよな。そうなんだよ。こう言う子なんだよ。けどなぁ、リリー。

それでは、駄目なんだよ。

「あやぁ～うぅその気持ちはうぁ～あうぅ～きゃぅ素直に稱賛するし、おあぁ～あうぅきゃぅそこまで思われていやぁ～ういるなら、あぅ俺もうばぁ～うきゃぅ嬉しいとは思う」

やや重すぎるとは思うが、それは言わない。結果、彼の尾が喜びをけて大きくしなる。

その上で、飲み込んだ言葉に苦笑しつつ、俺は彼に殘酷な一言を突きつける。

「ばぶぅけど、いやぅ～あう～君がそうしてあ・うぅ・やぅ俺の為にうやぁ～うあぅ～う突っ走った先に……あうぅやぅ～～あう俺達のむ世界はあう～あうぅあるのかな？」

彼の尾が、パタリときを止めた。

「あうぁあう～ぅそこで俺といぃ～うリリーは、あゃ～あうぁ～うぅ笑いあって過ごせてうやぁうぅいるのかな？」

耳が萎れ、リリーの表が一気にりを増す。

「あうぅ～あばぁ～あうそこに俺の想いは、うぶぅ～う含まれていやぅ～あういるのかな？」

その最後の言葉で、彼は、自分が何を間違ったのかを理解したのだろう。

彼は、首を振りながら、思わず後ずさっていた。

「わ、私、ま、また……同じ、間違いを？」

そうだな。形は見えにくくなっていたが、本質は変わらない。

彼は、俺・の・為・と言う免罪符を盾に、彼のみを葉えようと、猛進していた。

そのこと自を俺は責めるつもりはない。彼なりに、苦労して、それを言い訳にでもしないと、進めない程大変だったのだろうと言う事は、想像に難くないからだ。

だが、今は俺が居る。彼が間違っていると思うなら、それを正せる。

「いぃ～リリー、あぶぅ所詮、あやぁ～あう人は人だ。うばぅ～あぅ～う同じ間違いをうやぁ～あぃや～ぅ繰り返すのは、あうぅ～あやぁ仕方ないんだよ。ばぶぅだけど、あぶぅ～やぅ～あう前よりしでもきゃぅ～うあぅ～あ良くしようと思うあぶぅ～い心だけはやぁ～うぶぅ忘れずにね」

俺だって、そんな大層な存在ではないが、とは言え、彼がこのままでは、一緒に笑い合う道は生まれないのは、間違いないのだ。

だから、俺は再度伝える。

俺が何度も間違って、漸く得た答えの一部を、彼にもう一度託す。

「あぶでは、うやぅ今回は……うやぁ～あうぅどうすればだぅ～あうぅ良かったんうやぁうだろうね？」

そう問いかけられたリリーは、涙を流しながらも、俺を見つめ、首を振る。

分からない。

どうして、また……そんな彼の心の聲がけて見える様な、そんな狼狽えようだった。

本當であれば、時間をかけてゆっくりと諭してやるのも良いだろう。

だが、彼は既に知っている。

俺から託された、その答えを知っている。

それを忘れているなら、もう一度、思い出せばいい。ただそれだけの事だ。

「うやぅ～あうぅ思い出して。うぶぅ～あうぁ君が間違いをうきゃぅ犯した、あばぅあの日。うやぁ俺とのあぁうぶぅぁやり取りを。うやぁ俺はあぅ～いやぁ何と言った？」

俺のそんな言葉をけて、彼の意識は過去へと飛んだのだろう。

意識が宙に溶け、彼の視點が、一瞬、はるか遠くへと向く。

そして、數瞬後に、一つの答えを探り當てたようだ。

目を見開き、こちらを見る。その底に、戸いと、淡いを見た。

「見て……。そう、自分の事……ツバサ様の事を、ちゃんと見てくれ、と。」

涙を両目から流しつつ、彼はそれでも、俺から視線を逸らさなかった。

「ごめんなさい、ツバサ様……私、また、ツバサ様を、言い訳にしていました。そうですよね、これは、私の意思。私の決意です」

そして、首を振る。涙が飛び散る。その後に、彼はそれでも泣きながら笑顔で口を開いた。

「それでも私、駄目な子だけど、ツバサ様と一緒に行きたい……一緒に笑いたいんです。お傍に……居たいんです。それだけなんです」

涙に濡れたまま笑顔でそう呟く彼は、とてもしく見えた。

その姿を見て、お姫様も思う所があったのだろう。一瞬、息をのみ、そして、悔しそうにを噛む。

彼にも、しは伝わったようだ。リリーのその純粋で深い思いが。

ならば、後は、もう一息だな。

「あぶぅ～あうぁ俺もそうだよ。いやぁ～あぅ一緒に笑ってあ～うぶぅ過ごしたい。ばぶぅ～あぅけどそれは、いぃ～リリー……いやぁ～あうぅあ君一人だけでは、あぶぅやぅ無理だよ？」

俺は、彼にそう優しく語り掛けた。何故か、お姫様が息を飲む様子が視界の片隅に引っ掛かるも、俺はそのまま続ける。

「だぅ～だって、あぅあ～やぅ俺の幸せは、いぃ～やあぶぅリリーの素敵なあばぁうやぁ～う笑顔が必要だから。だぅ～そして、あうぁ～うぶぅやぅ君が笑う為には、あうあぁ～う仲間たちのえやぁ～あうぅだう笑顔が必要だ。やぁ～あぶぅそうでしょ？」

その言葉に、リリーは嬉しそうに何度も頷き、涙を零こぼす。

「だぅ～あぅだからこそ、あぶぅ～うやぁ俺はまた言うよ。いぃ～リリー、いやぁ皆ともうばぅあやぁ笑い合おうよ？　うやぁ～あぶぅそこのお姫様とも、うきゃぅあぶぅ一緒に楽しくさ」

いきなり俺の口からご指名をけた事に戸うお姫様。

おや、そんなに意外だったのだろうか？　全く、彼にも俺の事を々と知ってもらう必要がありそうだ。

「あぶぅだから、あやぅ～その為に、うや～あぅちゃんとうきゃぅ～あぶぅ知ってもらおう？　いやぁぅ～あう君がどんな思いで、あぶぅきゃぅ俺といる事をうやぁ～あうむのかさ」

リリーはそんな俺の言葉に驚き、そして、自分に何が欠けていたのか、真の意味で理解したようだった。

何度も頷きながら、涙を零す。

そう。前に言ったまんまである。お互いに知ろうとする努力が足りなかった。それだけだ。

一方通行では勿論駄目だし、今回はお互いがお互いの想いを、ただぶつけ合うだけだった。

一歩引いて、相手を理解しけれる。それを相互理解と言う。

その姿勢が無ければ、想いは兇に変わる。相手を傷つける、刃となって、いずれは自分をも孤獨にするだろう。

そうだろ？　ルナ。

この世界に來て俺が犯した最大のミス。

前の世界から、ずっと繰り返し続けている、愚行。形を変え、それは俺をずっと苦しめて來た。

結局、俺も目の前の彼達と変わらないんだよな。

偉そうな事を言って置きながら、結局、同じのムジナだ。

俺もまた、ルナを知る努力を怠った。

意識共有と言う便利なと、ルナの理解力に全てを任せてしまった。

何と橫著な事か。なんという怠惰。そりゃ、ああなるわ。

結局、全てを理解する時間も無く、最悪の結果で幕を閉じたんだ。

ならば、せめて……そんなアホな過去の経験を、しでも生かさなくてどうするよ。

じゃないと、もしまた彼と會う時があったなら……俺は彼に謝る事すらできない。

「ああ、私、また驕おごっていました……。そっか、わかりました。私、言葉を盡くしていませんでしたね。」

「あやぅ～あぅそうだね。あぶぅそして、うぶぅ同時に、あきゃぅ～う知ろうよ？　あやぅ～お姫様が、うやぁ～あぶぅ～やぅどんなに君の事をいやぁ～あうぅ～心配しているかさ」

完全に虛を突かれたように、お姫様が、目を瞬しばたたかせる。

それを見て俺は、し意地悪な笑みを浮べつつ、言葉を続けた。

「あぶぅ～うぁ～傍から見ていたうきゃぅ～俺には良くいやぁ～あぅ分かったけど、いぃ～あぅリリーにはあぶぅ～やぅ～う屆いてないだろ？　うやぅ～あぅ～彼の必死なあやぁ～想いがさ」

俺のそんな言葉は完全に予想外だったようだ。お姫様は、すぐに顔を真っ赤にすると、俺を睨みながら口を開く。

「ばっ……。余計ない事を！？　べ、別に、そ、そんな事、……ある、けど……赤ん坊のあんたに言われると、凄くむかつくわね。」

おや、どうやら、思った以上に態度が化している。もうし、否定されると思ったのだが。

しは、先程のやり取りで、思う所があったか？

「リザ……だから、ツバサ様には……。はぁ……、まぁ、いいです。その辺りも含めて、きっちりとお話ししましょう。ね？」

し呆れた様な、困った様な、そんな風に、リリーはお姫様に提案する。

「し、仕方ないわね……。ちょっとだけよ？　丁度、運のいいことに、本當に偶然だけど、私も……しだけ、話したい事があるし」

真っ赤になりながら明後日の方を向きつつ、それでも、ちゃんと申し出をける。

実にこのお姫様らしいと俺は苦笑した俺は、思わず一言。

「あぶぅ～うきゃぁ～素直じゃないなぁ。うぶぅ～さっさとあやぅ～きゃぅう～デレれば良いのに」

「ちょ、うっさいわね！？　一、こいつ、本當に何なのよ！？」

「ばぶー」

ただのしがない赤ん坊です。

そんな彼の怒りを、俺は敢えて赤ん坊のフリで流す。しかし、予想通りと言うか、彼はお気に召さなかったようだ。

「あぁあーー！　もう、意味分かんない！？　しかも、なんか、凄くむかつく！？　調子狂う！？」

そんな風に地団駄を踏みつつ、それでも、俺に手を上げない位には理的だった。半分、獣化してるけど。

はっはっは、いじるとまた、良い聲で鳴くねぇ。これは、良いおもちゃに出來そうだ。

そんな俺の素敵な笑顔を見て、心底嫌そうな表を浮かべるお姫様。何て失禮な。

ま、そもそも、は悪い子じゃないんだよね。リリーと上手くやってる位だし。

「それがツバサ様ですから。けど、大丈夫。リザ、貴もその、慣れますよ」

そんな良く分からない評価をリリーが下し、俺は憾の意を表で訴えかけるも、笑顔で無視された。

こうして、先程とは違って、穏やかに話が始まった。

そんな二人の乙が、等大でお互いの気持ちを吐し合う景を、俺は眩しそうに見つめる。

それは、俺がる隙間も無い程、彼達の絆をじさせるだったのだった。