《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百十八話 偉大なる戦い⑲
ところは変わって、白亜な雰囲気の神殿に一人の男が立っていた。
「……世界は変わろうとしている」
白いローブを羽織り、フードを被ったにも男にも似た存在は、そう呟いた。
「変わろうとしている、ですか」
その存在の前に立っている、一人のは告げる。
レイシャリオと呼ばれるは若くして神殿協會の樞機卿にり上がった存在である。白い修道服をに纏い、口も白い布で覆っていた。
レイシャリオはその存在を崇敬していた。というより、神殿協會の上層部に立っている人間は全員その存在を崇敬していることになる。
なぜそうなるかといえば――答えは単純明快。
それは、彼が『預言』の能力を持ち合わせているからだ。
そもそも、オール・アイは人間であるかどうかも怪しい。何せもう何萬年も生きていて、その記憶を完璧な狀態で記憶しているというのだ。まさに神の奇跡だろう。科學的に見れば、そんなことは有り得ないからである。
だが、これが誰にも疑われることなく神殿協會の『預言者』としていられるのには、理由がある。
オール・アイはこの後三千年の歴史を予見している。しかもそれが全て的中しているのだ。
神殿協會はもとは世界を救った神ドグの言葉によって活をしていくものであったが、それを名目に今やオール・アイを中心としたカルト宗教へと徐々に変化を遂げているのだった。
勿論、それを不快に思う人間もいる。従來の教えを守る、所謂『古參派』だ。しかし、古參派は最終的にはオール・アイ率いる新參派によって討伐されてしまった。
結果として、神殿協會の大多數が新參派、その殘りは古參派だが、それを公表出來ずに新參派を名乗っている人間のみが殘った。そして――レイシャリオは後者だった。
「オール・アイ様。結局のところ、これから我々は何をすればよろしいのでしょうか?」
「オリジナルフォーズ、そいつを目覚めさせる」
端的に、オール・アイは告げた。
オリジナルフォーズ。
それは神殿協會が『聖地』を調査している際に発見した未知の生命だった。
神殿協會の調査により明らかとなったのは、その生命はもともと既知の生命だったということ。そしてその生命は遠い昔に強い放能を浴びてDNAから大きく作り替えられてしまった――簡単に言えば、環境にうまく同調していったということだった。
そしてオリジナルフォーズはその生命の中から実験を重ねて生み出された生命であった。放能を浴びたことにより変化したDNAは、強いを生み出した。敢えて言えば、一人で行を考えるほどの頭脳を持ち合わせていないことが問題といえば問題だったが、聞き分けのある頭脳は持ち合わせており、そして、それは神殿協會にとっては都合の良いことだった。
神殿協會はオリジナルフォーズを聖地から発掘されたものとして、神の使いとして信仰することとした。結果的にその神の使いは、正確に言えば人間の罪を洗い流すための『贖罪』を果たすためのパーツであるという考えが神殿協會に広まることとなった。
そしてその考えが広まる未來は――オール・アイの想像通りであった。
「レイシャリオ。あなたに教えてあげなければならない未來があります」
「何でございましょうか」
唐突に言われた『預言』について、レイシャリオは何を言われるのか――と心の中で湧き上がっていた。
しかしながら、なるべくそれを見せずに、冷靜を保っているように見せなければならない。なぜならオール・アイは古參派の人間だ。それをづかれてしまっては今後の仕事に影響しかねない。それを彼は理解していたからだ。
だからこそ、レイシャリオはオール・アイと話すときは慎重に話さねばならないと――そう思っていた。
「これから先の未來の話です。なに、別に気にすることではありませんよ。きっと、いや、確実にあなたの生きている間にその未來は実現されることはないでしょう。すべて、その出來事を見たいのであれば不老不死になるしか方法はありませんから」
「……ならばなぜその事実を私に?」
「あなたにはそれを知る義務がある」
オール・アイはレイシャリオに告げる。
ずっとレイシャリオに対して背中を向ける形で話していたオール・アイだったが、ここでようやく踵を返し、彼と向き合う形になった。
「あなたにはそれを知り、それを理解し、そのうえでこれからの行を実施しなければならない」
「……それも、預言の一種でしょうか?」
「その通り」
オール・アイは告げる。
対してレイシャリオは何も反応しなかった。いや、正確には心の中では反応していたのかもしれないが、それをオール・アイに見せるわけにはいかなかった。それは彼の矜持にもかかわる容だった。
オール・アイは持っていた杖を天に高く掲げ、空を見上げる。とはいえ、この神殿は空が開かれていないから、オール・アイが見ているのはただの天井に過ぎないのだが。
「この世界は何度も変革を迎えることとなる。そして、現に何度か変革を迎えた。……今、その変革の時が再び訪れようとしている。そして、その役割をレイシャリオ、あなたに擔ってほしい。それは私の預言の一つにもある。そうしなければ、これからの未來はきちんと進まないだろう」
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