《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百二十二話 偉大なる戦い㉓

「……オリジナルフォーズは浄化のを放つ、と言われているわ」

唐突に。

レイシャリオは何かを思い出したかのように、ティリアに告げた。

その言葉の意味をいまいち理解できなかった彼はレイシャリオに対して反芻する。

「浄化の……っすか?」

浄化の

それはオール・アイが言っていたオリジナルフォーズの機能だった。

オリジナルフォーズが使うことの出來る一機能『浄化の』は、それにより多數の人間を葬ることが出來る。オリジナルフォーズは高溫の熱源をに保持しており、そこから生み出された熱エネルギーを線として吐き出す。それが浄化のだった。

「浄化のを使われてしまえば、きっと多くの人間が死ぬことでしょう。しかしながら、それも神の意志だとするならば……、私はそれでも問題ないだろうと思っていました。なぜなら、審判の時がやってきたと認識出來るのでしょうから。多數の信者はそう思うことでしょう」

「審判の時……。でも、あれは教典に描かれている伝説上の出來事に過ぎないんじゃ……」

「でも、現実に審判の時は起きようとしている」

レイシャリオはティリアの言葉に上書きするように、しだけ聲を大きくして言った。

レイシャリオの表い。それほど、彼にとって『浄化の』を重要なものであると位置づけているのだろう。

浄化のが発することにより、人々の考えは真っ二つに割れることだろう。一つは浄化のによって人々は天國へと導かれ幸福な道が切り開かれるであろう、そう発言する人もいるかもしれない。それは神殿協會の経典に書かれている容だから、それを発言する人間は大衆の中の大半を占めることだろう。

しかしながら、浄化のを理不盡と思う人間もなくないだろう。それが信徒であろうがなかろうが、突然神からの裁きをけて全員が全員それに従うほど隷従な存在でも無かった。

だからなくとも何割かの人間は浄化のに隷従することなく、反旗を翻すことだろう――それがレイシャリオの危懼していることだった。

「レイシャリオ様?」

「……うん? どうかしたかな、ティリア」

「いま、レイシャリオ様、とても恐ろしい顔をしていました。何か、とんでもないことを考えているのではないかと思いました……」

「そんなことはありませんよ」

レイシャリオは噓を吐いていた。

の中にあった思い――それは到底ティリアにも話すことのできない容だったことだろう。そしてそれは、誰にも話すことはしない。何かあったときは、彼が墓場まで持ち込もうと考えていた。

なぜならば、その話をすればきっと誰もがその意見に反対するからだ――レイシャリオはそう考えていた。

「まあ、別に何でもない話ですよ。しいて言うならばこれからオール・アイの話をいかに丸め込んでいくか。はっきり言ってそこが重要な話となってきますからね。あなたにもバリバリ働いてもらわなければなりません。準備はできていますか?」

「はい! ティリア・ハートビート、この命をレイシャリオ様に助けていただいてから、この命をすべてレイシャリオ様のために使うのだと決めております!」

そうしてレイシャリオとティリアは廊下を歩き始める。

レイシャリオとフェリックス。お互いの思いを抱えながら、神殿協會は前へ進み続ける。

その先に何が見えているのか――それはお互いにしか解らない話だった。

◇◇◇

僕は町はずれの茶屋に案されていた。修行が終わっていつも通り帰ろうと思ったのだけれど年――水神がどうしても見せておきたいものがあると言ったからには仕方ない。とにかく従っておいたほうが得策だ。ここで強引に斷っておいて確執を生むのも今後面倒なことになりかねないし。

水神の先導で茶屋にると、茶屋のカウンターに居たが目を丸くして驚いたような様子で聲をかけてきた。

「あらまあ、あなたが人間を連れてくるなんてどういう風の吹き回しなのかしら?」

託はいい。いいから、地下へのり口を開けてくれ」

「地下の?」

こくり、と水神は頷く。

それを見たは水神と僕の表互に眺めながら、やがて諦めたのか溜息を吐いてカウンターの橫にあるスイッチを押した。

同時に本棚の一つが後ろへずれていく。

そして迷いなく水神はその本棚がずれていったところへと向かっていく。

「何をしている。いいから、急いでこちらへ來い」

水神の指示に従って、僕はそのまま一緒の立ち位置につく。

そして上からシャッターが閉まり、ゆっくりとその床自が下へと降りていく。

「……あの、水神……さん?」

「どうした」

「いったい、今からどちらへ向かうのでしょう?」

僕は一番気になっていた疑問を水神へぶつけてみた。実際のところ、もっと質問したいことはあったけれど、それよりも最初に納得させておきたいことは納得させておいたほうがいいだろうと思って、まずはその質問にしてみた。あとは、あまり口數がなそうだし、質問責めにして機嫌を損なわれてしまっても困ると思ったからだ。

それを聞いた水神は呆れたような表をして、僕の顔を見上げた。

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