《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百四十二話 偉大なる戦い・決戦編⑦
「でも、あなたは」
それでも、ティリアは話を続ける。
たとえ冷たく突き放されたとしても、目の前に居るその人間は――かつて彼の命を救った恩人だったからだ。
それでも彼は彼を慕っていた。
それはティリアが、レイシャリオに対する謝の意を示している行為――そのものであるといえるだろう。
それでも。
「私を救ってくれた……恩人に、私は……恩を返すことすら出來ないんすか?」
ティリアの言ったその言葉に、レイシャリオは何も言い返すことは出來ない。
それは彼の中に、未だわだかまりがあるからかもしれない。
「……これから先、何が起こるか分かりません。それでもあなたは私と一緒に向かおうとするのですか?」
「當然じゃないっすか。それは私がレイシャリオ様に仕える時に、とっくに誓っていたことっすよ!」
即答だった。
裏を返せば、それほどにティリアがレイシャリオを信頼している証と言ってもいいだろう。
「……あなたはそう言ってくれると、私はとてもうれしいですね。正直な話、私はずっと張していたのですよ。あなたの話はいつも私の張を解してくれる。それを、あなたが知っているか知っていないかはまた別の話ではありますが」
レイシャリオは孤獨だった。
それは彼が、いわゆるレイシャリオ一派としての勢力を形していたとしても、それは孤獨の裏返しに過ぎなかった。
彼は悲しむ姿を見せない。
それは彼が樞機卿という地位に立っているから。
樞機卿は、常に強くあらねばならない。
樞機卿は、常に強者たる存在であらねばならない。
樞機卿は、常に隙を見せてはならない。
その観念に駆られて、ずっとレイシャリオは生き続けてきた。
若くして樞機卿の地位に上り詰めた彼は、エリートの中のエリートとして神殿協會でも一目置かれていた存在だった。
そもそも樞機卿自が神殿協會の最高権力者として存在しており、彼は二十八歳の若さにして樞機卿になった前代未聞の過去がある。
そのため、彼を恨む人間もなくなく、襲撃をける機會も多い。
彼が私用の護衛としてティリアを樞機卿付に任命したのは、半年前のことだった。
ティリアは盜賊だった。神を信じぬ存在として神殿協會から目を付けられている存在の一つに盜賊があるが、もともとティリアはその盜賊の副長を務めていた。
ティリア曰く、レイシャリオの姿が格好良く、その場で神殿協會にりたいと頼み込んだのだという。
対してレイシャリオも強い護衛を探していた。別に彼の一派が全員信用出來ないわけではないが、信用出來て、強い存在は何人でも居たほうがいい。しかしあまりに多すぎると転覆する可能があるとほかの樞機卿に疑われる懸念もあるが、それも考慮にれた上での判斷だった。
ティリアは魔法を使えない。しかし、盜賊の頃から槍に秀でていた彼は、錫杖を使うシスターとは違い、槍の形をした特殊な錫杖の使用を認められている。
それは風の霊の加護をけており、普通よりもジャンプの跳躍が浮かび上がると言われている。現にそれは彼の戦闘において大いに役立っている。
「……ティリア」
レイシャリオは、彼の気持ちに気付いていなかったのかもしれない。
レイシャリオはこれ以上犠牲を出したくなかった。
ティリアはレイシャリオを守り通したかった。見捨てられたくなかった。
お互いがお互いに、その気持ちに気付いていなかった。
「ティリア、分かりました。あなたの言い分もごもっともです。ですが、私はあなたを危険な目に遭わせたく無かった。確かにあなたは私の護衛……ボディーガードです。でも、あなたはこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかないのです。それをどうか、理解してほしい。けれてほしい」
沈黙の時間が流れる。
それは僅か數秒の出來事ではあったものの、彼たち當事者間にとってみれば永遠にも似た時間が流れたに違いない。
「……やっぱり、分かりません」
口を開いたのは、ティリアからだった。
燭臺の火がゆらりと揺れる。
「分からなくても構いません」
レイシャリオは冷たくティリアの言葉に答えた。
ティリアはレイシャリオのことを嫌っているわけではない。寧ろ逆だった。しかしながら、そうであるからこそ、レイシャリオの言っていることが分からない。
見つめ合う二人の関係は、一言で表すことなど到底考えられない。
だからこそ、ティリアもレイシャリオも、簡単に別離を告げることが出來ないのだった。
「構わない、って。そんなに冷たく言わなくてもいいじゃないすか」
「あなたのためを思っているのです。どうか、分かってください」
ティリアとレイシャリオの會話は平行線を辿るだけだ。このままではどちらかが折れない限り話は終わることがない。
レイシャリオはここでティリアと分かれて、危険な目に遭うのは自分だけで構わないと考えている。
対して、ティリアは自分はレイシャリオのボディーガードなのだから最後まで共にありたい、そう考えていた。
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