《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百四十三話 偉大なる戦い・決戦編⑧
「……今は時間もありません。分かりました。あなたの意思を尊重して、一緒に參りましょう。ただし、あなたはこれから何を見ることになるか。そしてそれによって後悔するかもしれませんよ?」
「レイシャリオ様のボディーガードとして居る以上、後悔はしないっすよ!」
後悔しない。
それは単純な言葉ではあるが、そう簡単に言える言葉でも無い。
難しい認識であるかもしれないが――しかしながら、彼の認識はそれで間違っていない。後悔しないと言い切るには、それなりの覚悟が必要だ。そして、ティリアはそれを保持していた。たとえ、彼がそれを認識していなかったとしても。
「あなたはほんとうに元気ですね。笑顔を見せている、と言ってもいいでしょう。ほんとうに、それが私にとって――」
支えだった。
支柱だった。
願いだった。
今まで押しつぶされそうな程の重圧プレッシャーをじつつ仕事をこなしてきた彼にとって、數ない心の支え。
それがティリアだった。
「では、先に進みましょうか」
再び、レイシャリオは前を向いてゆっくりと階段を降りていく。
長い中斷に思えたが、案外それは一瞬だった。彼たちの話し合いが長くじただけであって、第三者から観測すれば僅か數分の出來事に過ぎない。
「この先には、何があるんすか?」
ティリアが問いかける。
しかし、レイシャリオは直ぐにその質問に答えることは無く、數瞬の間を置いて、
「この先にあるのは、もうあなたにもとっくに分かっている事実ではありませんか?」
「……え?」
ティリアは目を丸くする。
確かに彼の中にも、この先にあるものが何であるか――何となく想像はしていた。けれど、レイシャリオのその発言はまるでその心の中を見通していたような、そんな覚すらじられた。
とはいったものの、ティリアの中には未だ一抹の不安が過ぎっていた。
正確には、ずっとその不安が頭の中を滯留している――と言ってもいいのだろうか。
「まあ、いいでしょう。あなたは、あまりこの神殿協會の部事には詳しくありませんからね。あなたは常に神へ祈りを捧げ、シスターとしてその役目を擔ってきました。けれど、あなたは知らない。神殿協會の裏の顔を。我々がこれほどの規模の組織になり得た理由を」
やがて、レイシャリオは立ち止まる。
そこにあったのは小さな木の扉だった。
鍵も付けられていないその扉を開けると、風が吹き込んできた。
否、正確には違う。風が吸い込まれている。
そこは仄暗い空間だった。壁に燭臺が取り付けられているから何とか狀況が把握できるといったものの、それでも視界は限定される。壁は今まで石煉瓦で作られていたとは異なり、巖がそのままにされていた。整備はされていないらしい。
しかし燭臺に火がついているということは――ここに誰か來ることがあるということだ。さすがのティリアもそこまで分からないわけでは無かった。
「……ここは、いったい?」
「姿を見せてあげたほうがいいでしょうね。そのほうがきっと、あなたの理解も早いことでしょうから」
そう言ってレイシャリオはどこからか取り出した手燭に火を付ける。
そして、空に手燭を掲げた。
「これは……!」
そこに浮かび上がったのは、巨大な人間の顔だった。
否、正確に言えばそれは間違っている。人間の顔だけではなく、馬、牛、羊といった様々なの顔や足など、様々なパーツがごちゃ混ぜになっている。
そしてそれは、一つの大きな異形を作り上げていた。
恐怖というよりも、畏怖に近い。
ティリアがそれを初めて見て抱いたは、それだった。
「これは……いったい」
何とか心を落ち著かせて、ティリアはレイシャリオに訊ねる。
レイシャリオは踵を返し、ゆっくりと頷く。その笑みは、手燭の火に照らされて、どこか不気味に映し出されていた。
「これは、オリジナルフォーズ。オール・アイが言っていたでしょう? 復活し、かせ、と。彼が言っていたその預言は、正確に言えば間違っていた。既にオリジナルフォーズは復活していた。しかし、そのエネルギーが足りないのか、或いはエネルギーは足りていてもプロセスが足りていないのか分かりませんが……、未だこのバケモノは眠りに就いたままです。いつ目を覚ますのか、分かったものではありませんが」
淡々と。
まるで授業中、學生に説明をする先生のように。
ただ冷靜に、レイシャリオはその異形について説明をした。
「オリジナルフォーズによる恩恵はかなり我々にも與えられていました。そもそも、ドグ様がここを聖地としたのも、オリジナルフォーズを見つけたからでしょう。ここには不思議なエネルギーが満ちている。そしてそれは、我々にも使う権利を與えられている。それをドグ様は神の力と認識した。それが……一般市民に語られることのない、神殿協會の始まり」
歩き始めるレイシャリオを見て、ティリアも慌てて歩き始める。
オリジナルフォーズは確かに眠っているようだった。しかしながら、生き特有の息をする作も見られないし、あまりに靜か過ぎる。ほんとうに生きているのかどうか疑ってしまう程だった。
ティリアは歩きながらもオリジナルフォーズの挙を見つめていたが、
「ティリア。そう監視しつつ歩いていても、オリジナルフォーズはき出すことはありませんよ。安心なさい。それよりも、ほら……。ここにあるものを見るといいわ」
レイシャリオに宥められ、ティリアは再び前を向いた。
そこに広がっていたのは――無數の機械だった。くのかどうか定かではない程、ボロボロになっていたそれは、計類からキーボード、椅子や鍵付棚まで整備されていた。
まるでそこに一つの研究施設があったような、そんな場所が広がっていた。
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