《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百四十八話 偉大なる戦い・決戦編⑬
「……つまり、箱庭をっているのはその、」
「元代神、ね」
ムーンリットの言葉に僕は頷いた。
とどのつまり、ムーンリットと一緒に箱庭には別の存在が居る。そしてその存在が箱庭を乗っ取ろうとしている――と。
「最後については憶測に過ぎないけれど、まあ、確実でしょうね」
「心を読むのを、辭めてもらって良いですか?」
「いいじゃない。別に。減るでもないし」
「……いや、そういう問題じゃ無いですよね?」
「話を戻しましょうか。いずれにせよ、あなたはこれから世界を救う。では、どうすれば良いか? 簡単なことですよ。私がちょっと世界を弄ってやればいい。ただ、それだけの話。人はそれを『奇跡』と呼びますがね」
奇跡。
人の力を超越したもの、と言ってもいいだろう。それをし遂げることは先ず人間の領域では不可能だが、それが神や自然になされたものであれば可能はゼロでは無い。しかし、果報は寢て待てという話では無いが――それを待っているくらいなら確実に出來る方法を探したほうがいいだろう。
いずれにせよ、奇跡というものはそう簡単に起きるでは無い。仮にそんなものがあったとしたら、それは奇跡ではなく、別の何かになるだろう。
しかし目の前に居るその存在――神は奇跡を起こすと言っている。奇跡を簡単に起こすことができるのも、神ならでは、ということなのかもしれない。
ムーンリットの話は続く。
「……おーい? 大丈夫かい? 話はまだ終わっていないのだけれど。急にフリーズしたり、或いは自分のモノローグに浸らないでくれないか? 話が終わってから勝手に一人でやってくれるなら構わないけれど、その段階でされると話がいちいち切れることになるから面倒だから」
「いや、大丈夫だ。問題ない。……ところで、奇跡はどうやって起こす?」
「簡単なことですよ。私が命じればあっという間にできあがります。簡単な話です」
「……いや、だから、どうするんですか?」
「あなたの娘に神の力を宿します」
簡単なことだった。
あまりにも簡単なことではあったけれど、それによってどうなるというのだろうか。
「神の力……と言っても、唐突に何を言い出すかと思われるかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、その力は『祈り』の力ですよ」
「祈りの力……?」
「英雄と呼ばれる存在には、いくつかの條件があります。一つは、英雄と語られる人間。もう一つは、その能力。能力がたぐいまれなるものであればあるほど、英雄と呼ばれる価値は上がるでしょう。あなただってそうですよ。いつかは英雄と呼ばれる時代がやってくるかもしれませんね。それこそ、今のあなたの行は、英雄譚そのものですよ」
英雄譚。
英雄。
いずれにせよ、英雄は英雄たる所以が必要――ということなのだろう。
「英雄には特殊な力が無くてはなりません。あなたの持つ、シルフェの剣もそうです。それは、オリジナルフォーズに対する數ない手段。そしてそれを持っているあなたもまた英雄の一人となり得る」
「シルフェの剣……」
僕はじっとシルフェの剣を見つめる。
確か、妖からこれをけ取ったときも言っていた。これは伝説の剣である、と。しかし、まさか自分がその剣が出來る場面を目の當たりにするとは思いもしなかった。
これもガラムドの想定の範囲なのだろうか? だとすれば、何というか、気紛れの極致だと言っても良い行だな。
「祈りの力、その話に戻しましょうか」
ムーンリットは語り出す。
「祈りの力とは簡単です。ただ祈っていれば良いだけの話。……言い方は悪いですね。簡単に言ってしまったので、端折ってしまいましたから。端折らずに説明したほうがいいですよね?」
「そりゃ、當然ですよ。教えてください」
「ううん、説明するのはあまり得意では無いのですが……」
得意じゃない、って。
それはそれで困るんだけどな。出來ればきちんと分かるように説明してもらえると今後の行に制約がかからなくて済む。
「……祈りをすることで、奇跡のスイッチとする。祈りをすれば、それは確実に神に屆き、奇跡が起きると思い込ませる……とでも言えば良いでしょうか。人心掌握するためには、それが一番簡単な手順ですからね。先ずは自分の力を示し、頭を垂れさせる。そうすれば主従関係が立しますから」
「詐欺師と同じやり方じゃないか」
思わず呆れてそんなことを言ってしまった。
だが、それも予想通りと思っていたのか――ムーンリットの表は変わらない。
「詐欺師、ですか。そう言われてもおかしくはないでしょうね。けれど、それは間違っている行ではありませんよ。仮にその奇跡がかりそめのものであったとしても……、人はそれを信じて疑わない。あなたもそうでしょう?」
ムーンリットは不敵な笑みを零す。
しかし、ムーンリットの発言は真実なのだろうか? それ以前の問題を、僕は考えていた。
ムーンリットの発言をそのままけ取るならば、ガラムドはこれによって力を手にれるということになるのだろうか。ガラムド――今は一花という名前だが、きっと彼が紛れもなくガラムドへと昇華するのだろうか。
だとすれば、それは彼に酷なことではないのか。突然何も知らない子供に、神の力を分け與えること。他の人間とは違う能力を手にれること。そして他の人間とは違う地位につくこと――。その苦労は計り知れない。
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