《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百五十五話 偉大なる戦い・決戦編⑳
「秋穂……」
僕は、ようやくそこで気づかされた。
僕が思っている以上に、僕はたくさんの人から信頼されているのだということ。そして、たくさんの人に恩をけていること。
ならば、それは返さないといけない。やり遂げなくてはいけない。やらなければいけない。
「そうだよ、お父さん」
後押しするように言ったのは一花だった。
「お父さんがどういうことをしないといけないのかは分からないけれど、でも、このままだとたくさんの人が死んじゃうんでしょ? それだけは食い止めないといけない。それはお父さんだって分かっていると思うの」
「それは僕だって……」
分かっている。知っている。理解している。
だからこそ、僕は。
例え押し付けられたようなことであったとしても、一杯やり遂げなくてはならないと思っているのだから。
「じゃあ、次に何をするかは……もう分かっていることなんじゃない?」
秋穂の言葉は、次の僕の行を指し示すには充分だった。
そして、僕はその言葉にゆっくりと頷いた。
◇◇◇
「秋穂はどこに逃げるんだ?」
僕は出かける準備をしつつ、同じくどこかに出かける準備をする秋穂に訊ねる。
秋穂は手を止めること無く、
「そんなことを言っている暇があったら、あなたの準備をして。あなたのやるべきことをして。私のことはどうでもいいから」
「どうでもいいから、って……。そんなこと、出來るわけ無いだろ」
「でも、そうしないと私もあなたもこの世界の人たちも助けることは出來ないわよ」
その通りだった。
そして、僕は秋穂の言葉に対して何も言い返すことは出來なかった。
異世界でも男はのに敷かれるものなのかもしれない――そんなことを言うと、やけに批判する人が出てくるので、あまり強く言わないほうがいいのかもしれないけれど。
「……いずれにせよ、僕は行かないといけない。けれど、それ以上に僕は君が大切だと思っている。だから、君が逃げないと、僕は安心して戦えない」
「そんな甘いことを言っているんじゃないよ。……でも、それくらい大切に思ってくれてるって聞くと、何か嬉しいな」
「こら、そこ。いちゃいちゃしている暇があったら、お互いの準備を進めなさい。……それと、風間修一。ちょっといいかしら」
ストライガーが聲を掛けて、僕を呼び出す。
秋穂は何があったのかと僕を見つめていたが、大丈夫だよとだけ言ってストライガーについていった。
しだけ秋穂から距離を取った場所で、ストライガーは立ち止まる。
僕はそのまま立ち止まって、ストライガーと向かい合う形になる。
「……あなた、このままどうするつもり?」
「どうするつもり、って……どういうことだ」
「だから、世界を救いたいか否か、という話」
「それは……」
當然だ、とはっきり言えないのが失敗だった。
「當然、そこは救いたいと言っていただきたかったところなのだけれど……。そうも言えなかった、というのは何か後ろめたいことがあるのかしら?」
「後ろめたいこと? あるわけないだろ、そんなこと」
「だったらなぜ即答出來なかった?」
「それは、」
言い返せないから、後ろめたいことがあると確定されるのか?
それは間違いだ。そんなの間違っている。
「……まあ、あなたがどう考えているかは分からないけれど、私たちにとってはあなたはこの世界の最後の希と言っても過言では無い。いや、寧ろ確定的事実と言ってもいい。でも、あなたはそれを自覚していない。ならば、どうすればいい?」
「どうすれば、いいって」
僕に何を求めているんだ。
僕に何を期待しているんだ。
僕はただの人間だ。ただ、剣に、神に、選ばれただけの――ただの人間だ。超能力もないし、ポテンシャルも無い。一般的な人間であって、普遍的な人間だ。
そんな僕に、何を求めているのか?
そんな僕に、いったい何を期待しているのか?
僕は分からない。分かりたくないわけじゃない。けれど分かるはずがない。
だって僕には――才能が無い。
「……はあ、とにかく、話がまとまりませんから、さっさと話を進めましょう。いずれにせよ、あなたは剣に選ばれた。勇者ですよ。たとえあなたにその自覚が無いとしても、あなたには勇者として世界の人々へ道を切り開いて貰わなければなりません。そういう運命なのです」
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