《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百五十六話 偉大なる戦い・決戦編㉑
「運命?」
「そう。あなたは運命なんて信じませんか? ……なんて言葉は野暮ですね。いずれにせよ、あなたはこの先運命という言葉をきっと嫌という程聞くことになるのでしょうから。いくら人間だからといっても、わたしも『使徒』という人智を越えた存在の端くれでしたからね。それぐらい、理解できますよ」
使徒。
確かその存在は、ジャパニアでは神に等しい存在だったはずだ。なぜそれを知っているかと言えば、それは風間修一の知識から得たまでに過ぎないのだが。
「そうね。まあ、人間は運命をあまり信じないのかもしれませんね。かつては、運命や奇跡を信じた人間も多くいましたが、それも今や酔狂。結局は、この世界を人間だけで作り上げたと思い上がっているだけに過ぎないのですよ」
「そんなことを言ったら、あなたも人間ですよね?」
「ええ。私も人間、あなたも人間。けれどお互いにその存在からは一歩離れた存在である、そう認識しているはずよ。あなたも、わたしも」
「一緒にされちゃ困るな。あなたは確かに神の立場に近いのかもしれないが、いくら剣に選ばれたところで、僕はただの人間だ。……やっぱり、あなたと同格に考えられるのも、何かの間違いだと思うけれど」
言ったところで話の流れは変わらないだろう。でも、言ったか言わないか……そこに意義があると思う。
たとえ間違った解釈であったにせよ、発言することで自分の意思をはっきりと相手に伝えることが出來る。それは間違いではない。一つの明確な手段だった。
「まあ、あなたが何を言おうとしたって、世界は何も変わりませんよ。それこそ、世界の意思が働いているのですから」
「また、世界の意思か」
僕は思わず口に出してしまっていた。
ムーンリットという存在から幾度と無く耳にした『世界の意思』。
その言葉を、まさかストライガーからも聞くとは思っていなかった。なんだ、この言葉、流行っているのか? そんなシニカルめいた発言すらしたくなるほどのデジャビュだった。
「……何か聞いたことがあるようね。だったら話も早いんじゃない? いくらあなたが抗おうと、世界の意思には抗えない。あなたは、それを知っているはず」
世界の意思。
まさかその言葉をまた聞くことになるとは思っていなかった。
しかしながら、その言葉はムーンリットから聞いたものとは若干ながらニュアンスが違っているようにもじられた。
「でも、それは間違っている」
「間違っている? いいえ、それはあなたの思想よ。あなたの思考が間違っている、というだけの話。或いは、逃げているだけ……とも言えるかもしれないわね」
淡々と、ストライガーは言った。
けれど僕は間違っていないと思った。
間違っていないと思ったから、ストライガーに抗った。
「ま、別にいいか。あなたがどういう考えだとしても、たとえ神を信じていないにしても、あなたはこのまま世界を救うために盡力しないといけない。それはあなたにだって、理解できていることの話なのだから」
「ねえねえ、いったい何の話をしているの?」
ストライガーと僕の話に割りってきたのは、一花だった。
一花は僕の表を伺いながら、首を傾げる。
「一花。だめだろ。ここは大人の話をしているんだ。今は、僕とストライガーさんで、ね。だから一花は出かける準備をしないと――」
「出かける準備出來たよ。ついて行くから、私」
「……は?」
一花の発言は僕とストライガーにとって、想定外の発言だった。
いったい一花は何を言っているのか――そんな思考を処理すら出來なかった。
「ねえ、あなた。いったい何を言っているの? どこかに遊びに行くわけでは無いのよ?」
「知っているわよ、戦爭でしょう?」
ストライガーの言葉に臆すること無く、一花ははっきりと言い放った。
一花が戦爭のことを前々から知っていることは、ストライガーにも教えていない。というか、前々から知っているというよりも僕が教えた、というほうが表現的に正しいのだろうけれど。
「戦爭のことを知っていて……、それでもあなたは一緒に行こうというの?」
こくり。
一花は頷いた。
「なら、どうして?」
「どうして……って。何か、私にも出來ることがあると思ったから」
「それは、誰かに命じられて?」
ストライガーはここで何となく『何か』を理解したのだろう。
徐々に、子供の戯言とは思わずにその真因を探る質問に変えてきた。
「うん。何か言葉を聞いて……。為すべきことを行え、って」
「為すべきこと……。やはり、あなた。『聲』を聞いたのね」
聲。
その一言を聞いて、一花はゆっくりと頷く。
そしてそれを見て、ストライガーは深い溜息を吐いて、僕のほうを向いた。
反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇女様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼女を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】
【書籍化&コミカライズ決定!】 引き続きよろしくお願い致します! 発売時期、出版社様、レーベル、イラストレーター様に関しては情報解禁されるまで暫くお待ちください。 「アルディア=グレーツ、反逆罪を認める……ということで良いのだな?」 選択肢なんてものは最初からなかった……。 王國に盡くしてきた騎士の一人、アルディア=グレーツは敵國と通じていたという罪をかけられ、処刑されてしまう。 彼が最後に頭に思い浮かべたのは敵國の優しき皇女の姿であった。 『──私は貴方のことが欲しい』 かつて投げかけられた、あの言葉。 それは敵同士という相容れぬ関係性が邪魔をして、成就することのなかった彼女の願いだった。 ヴァルカン帝國の皇女、 ヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフ。 生まれ変わったら、また皇女様に會いたい。 そして、もしまた出會えることが出來たら……今度はきっと──あの人の味方であり続けたい。王國のために盡くした一人の騎士はそう力強く願いながら、斷頭臺の上で空を見上げた。 死の間際に唱えた淡く、非現実的な願い。 葉うはずもない願いを唱えた彼は、苦しみながらその生涯に幕を下ろす。 ……はずだった。 しかし、その強い願いはアルディアの消えかけた未來を再び照らす──。 彼の波亂に満ちた人生が再び動き出した。 【2022.4.22-24】 ハイファンタジー日間ランキング1位を獲得致しました。 (日間総合も4日にランクイン!) 総合50000pt達成。 ブックマーク10000達成。 本當にありがとうございます! このまま頑張って參りますので、今後ともよろしくお願い致します。 【ハイファンタジー】 日間1位 週間2位 月間4位 四半期10位 年間64位 【総合】 日間4位 週間6位 月間15位 四半期38位 【4,500,000pv達成!】 【500,000ua達成!】 ※短時間で読みやすいように1話ごとは短め(1000字〜2000字程度)で作っております。ご了承願います。
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